彼女が部活の終了間際に向ける視線の先が、バスケ部を通り越し、道場を柔道部に奪われ
体育館の片隅で地味に練習をしている剣道部だという事に、気がついた。
そして、そんな彼女に合図を送るように手を挙げる弱小剣道部の主将。
どこかで見たことがある顔・・・確かに文句の付けようが無いほどの美男子。
地味な部にしては取り巻きの女子が多いのも頷ける。
で、もしかして奴は・・・彼女の彼氏?
陽は、誰も落とせないと言ってたけど既に彼氏が居たって事か?
『ユイカワっ、朗報だぜ!ビックニュース!』
部室を出ると先に帰ったはずの陽が、興奮気味に俺に抱きついてくる。
「お前、うぜぇ・・・」
何のために部活なんてかったるい事して、柄にも無く真面目に毎日練習して・・・あぁ・・・きつい
失恋ってモノを経験したことの無い俺には、喧嘩で負けることよりもダメージが大きすぎる。
知らなかった・・・
この俺が女に夢中になるなんて・・・この痛みは、自分の気持ちを怖いほど実感させる。
〝俺って本気で彼女に恋してんだ〟
『まっ、聞けって。彼女がお前にアドレス教えても良いってさ!なぁ・・・聞いてんの?
彼女のダチがやっと話しつけてくれたんだぜっ!手を回すのに俺、どんだけ苦労したかわかる?』
はっ、今更メールなんてしたところで無駄だって・・・
「剣道部、主将・・・城田。」
思いもしなかった俺の返事に『は?』となった陽は、突然大きな声で笑い出す。
『ハハハッ・・・おもしれぇ・・・ユイカワ、ある意味すげぇ観察力で驚愕だね。ハハハ・・・』
「やっぱ、お前うぜぇ・・・」
笑い続ける陽を置いて歩き出す。
〝明日、退部すっかな・・・前の俺に戻れば良いだけだ・・・でも、きつい〟
そんなことを考えながら歩く俺を追いかけてきた陽。
「ユイカワ、雪菜ちゃんのフルネーム知らなかったんだ。
彼女は、城田雪菜。
ユイカワ、何か勘違いしてねぇ?剣道部、主将の城田先輩は彼女のお兄様だぜ。」
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