接近作戦3 | 恋愛小説 くもりのちはれ

彼女が部活の終了間際に向ける視線の先が、バスケ部を通り越し、道場を柔道部に奪われ


体育館の片隅で地味に練習をしている剣道部だという事に、気がついた。


そして、そんな彼女に合図を送るように手を挙げる弱小剣道部の主将。


どこかで見たことがある顔・・・確かに文句の付けようが無いほどの美男子。


地味な部にしては取り巻きの女子が多いのも頷ける。


で、もしかして奴は・・・彼女の彼氏?


陽は、誰も落とせないと言ってたけど既に彼氏が居たって事か?


『ユイカワっ、朗報だぜ!ビックニュース!』


部室を出ると先に帰ったはずの陽が、興奮気味に俺に抱きついてくる。


「お前、うぜぇ・・・」


何のために部活なんてかったるい事して、柄にも無く真面目に毎日練習して・・・あぁ・・・きつい


失恋ってモノを経験したことの無い俺には、喧嘩で負けることよりもダメージが大きすぎる。


知らなかった・・・


この俺が女に夢中になるなんて・・・この痛みは、自分の気持ちを怖いほど実感させる。


〝俺って本気で彼女に恋してんだ〟


『まっ、聞けって。彼女がお前にアドレス教えても良いってさ!なぁ・・・聞いてんの?


彼女のダチがやっと話しつけてくれたんだぜっ!手を回すのに俺、どんだけ苦労したかわかる?』


はっ、今更メールなんてしたところで無駄だって・・・


「剣道部、主将・・・城田。」


思いもしなかった俺の返事に『は?』となった陽は、突然大きな声で笑い出す。


『ハハハッ・・・おもしれぇ・・・ユイカワ、ある意味すげぇ観察力で驚愕だね。ハハハ・・・』


「やっぱ、お前うぜぇ・・・」


笑い続ける陽を置いて歩き出す。


〝明日、退部すっかな・・・前の俺に戻れば良いだけだ・・・でも、きつい〟


そんなことを考えながら歩く俺を追いかけてきた陽。


「ユイカワ、雪菜ちゃんのフルネーム知らなかったんだ。


彼女は、城田雪菜。


ユイカワ、何か勘違いしてねぇ?剣道部、主将の城田先輩は彼女のお兄様だぜ。」


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