真一&くるみ~
トントン拍子に事は進む・・・って言うのは、喜ばしき事なはずなのに、気がつけば
トントン拍子に事は進まされ、後戻りも訂正も出来ない状況になっている。
それは、もう完璧な程・・・うまく嵌められ、フリをするだけのはずが・・・今では
『フリ?ってなんの事』って感じの近藤先生・・・それはもう巧妙な罠。
お互いの両親に挨拶を済ませ、完全に止められなくなってしまった結婚までの
カウントダウン。
でも、私・・・本当はいくらでも抵抗する機会は与えられていたはずなのに・・・
それをしなかった。
その理由は・・・
近藤先生には、まだ言えないでいるけど・・・嘘が、真実になってしまったから。
実は私、あの後から・・・生理が来ない。
そりゃあ、自分でも信じられなくて、妊娠検査薬も買ってきたけど、怖くて不安で
まだ使えないでいる。
でも今までの私、遅れたことなど一度も無かったし、毎日どうしてこんなに眠いの
って程の睡魔と気だるさ・・・コレってやっぱり妊娠初期の兆候みたい。
嘘が嘘でなくなったのだから、近藤先生に正直に話せば済むのかもしれない・・・
けど、言えないのは・・・
愛の無い二人の間に生まれてくる子供って幸せになれるの?って疑問。
正直言うと、愛が無いのは近藤先生のほうであって、私の中には少しずつだけど
好きだって感情が現れて、今では恋ってモノに進化してるんだけど・・・
でも私だけでは恋愛は成立しないから・・・とは言っても、中絶なんてできないし・・・
差し迫る結納の日までに、解決しなきゃいけないって解ってるのに。
『くるみちゃん、今日ももしかしてご機嫌ななめっすか?』
からかうように笑う近藤先生に、
「採点中なので、邪魔しないで下さい。」
悪態つくしかできない私は、このところの曇り続きの天候に似て、
どんよりと心晴れることが無い。
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