天使の悪戯25(歩の回想2) | 恋愛小説 くもりのちはれ

『こんにちは、スミマセン・・・車がおかしいので・・・見てくださいな。』


自動ドアの前、扉は開いたまま・・・キョロキョロと店の中を覗く、ばあさん。


レジ前の椅子に座り雑誌を読んでた俺は、予想外の初めての客に


コレってありかよ?こんな年寄りが車って、大丈夫なのか?


それとも、ボケてんのか?これは幸先ヨロシクねぇんじゃ無いの?


どうしたら良いんだよ・・・


「どうも・・・」次の言葉が出てこねぇ・・・


『あぁ・・・もしかして外国のお方なのかい?』


俺の金の髪を見つめて、困ったように身振り手振りで話し出す。


『日本語、わかりますか?オーケーですか?カー押す、何て言えばいいんだか・・・』


ばあさんは、なぜか声まで大きくなった。


「大丈夫・・・俺、日本語ペラペラっすよ。」と、俺が笑って言うと


『あー日本で育ったのか・・・やっぱり外国の人の髪は綺麗な色だねぇ』


面倒だ・・・否定はしない・・・まぁ良いか、どうせボケてんだし・・・


『車のクルマがおかしいんだよ。孫に買って貰った車だから、直せないかね?』


あっ?車のクルマ?ばあさんが、振り向き見る目線の先には・・・


乳母車?・・・手押し車っていうのか?


『アレがなきゃ、歩くの大変でねぇ・・・あれは日本にしかないのかい?』


ばあさんは、完全に俺を外国人と勘違いしてる・・・


「ばあちゃん、車ってアレ?」


見てみると小さな後ろの車輪が、少し潰れてガタガタになっている。


「来週、来れる?新しいのと替えてやるよ」俺がそう言うと


『よかった・・・直せるのかい?奈緒がお小遣い貯めて買ってくれたから


この世に二つと無い大事な車なんだよ、お願いします。』


そう言って、深く頭を下げた。



次の週・・・約束どおり、新しい車輪に交換すると


『すごいねぇ、簡単に直しちゃって・・・魔法みたいだ・・・神様みたいだねぇ』


ばあさんは目と目じりのしわで半円を作り嬉しそうに笑った。


自分だけの力で金を貰ったのも、感謝されたりしたのも、全てが初めてだった。


冷めてるといわれる俺の中を、暖められた様な・・・悪くはないが、変な気分。


とにかく、初めて薄暗い影から陽だまりにでた様な感覚。


些細な事だと解ってても、俺を認めてくれる人がいると思うと・・・ただ嬉しかった。



この日から、ばあさん・・・ナミばあちゃんは毎週のように、店に来るようになった。


そして、いつも聞かされるのは、ナミばあちゃんの孫の奈緒の話。



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