ある青年の誤解4 | 恋愛小説 くもりのちはれ

小田原店長がフロアに出てきて、麻井さんを暖炉横の奥の席へと案内する。


んっ?もしかして知り合い?・・・笑顔で会話する二人。


離れていて声は聞こえないが、かなり会話が弾んでいる。


キッチンに入り、チラチラと横目で二人を見ながら、オーダーのアイスショコラを


作っていると、亮子が別のオーダーを持ってカウンターの向かいに来る。


『トドちゃん、あの綺麗なお客さんばかり見てる・・・もしかして、タイプ?』


口を尖らせ、むくれた表情・・・そして『トドちゃんも、やっぱ顔なんだぁ・・・』


溜息を深く付き『男ってさ・・・やっぱ一番に、顔を見るんだよねぇ』と、呟く。


御曹司に対する自分の態度を差し置いて、そのセリフは無いだろ。


「だから、トドって呼ぶのはやめろよ!それに、彼女は大学の知ってる子なんだよ。


一人でこの店に来るなんて珍しいな・・・と思ってさ」彼女を見ながら話していると


店長が俺達の方を向き、そして・・・手招きする。


『お呼びだよっ!チャンスじゃん・・・ほらっ・・・がんばれっ!トド』


亮子が、面白くなさそうな声を出す。


『俺かよ?』


どちらでも良いなら、カウンターの外側にいる亮子なんじゃねぇのか。


そう思いながらも・・・確かに亮子の言うとおり、麻井さんと話す絶好のチャンスだ。


澄ました顔で奥の席に向かうと・・・


『ごめん、レジ横のお菓子の棚に、先日イタリアから輸入したフルーツ飴が


あるんだけど・・・分かるかな?袋一つ、持ってきてくれないかな』


そう言って店長が、レジのほうを指差す。


『小田原さんっ、良いですよ・・・この前頂いたの、まだ残ってますから・・・』


麻井さんが遠慮がちに店長に話す声が聞こえたが、俺はレジ横に行き


さっき俺が貰った飴と同じ絵柄のパッケージの飴を、一袋持って席に戻る。


『コレですよね。』


麻井さんの前に差し出すと、麻井さんが俺を見て


『あっ・・・アレ?・・・研究室の?・・・さっきは、スミマセンでした』と頭を下げる。


『えっ、知り合いですか?あぁ・・・そうですね、同じ東和大ですものねぇ。』


年下の麻井さんに対して、敬語で話す店長。どんな関係なのだろう?


『今日、大学で彼に、少し迷惑をお掛けしたんです。』


麻井さんは俺の差し出した飴の袋を、申し訳なさそうに受け取る。


『小田原さんに、この飴ホント凄く美味しかったって、報告しただけなんですけど・・・


俺に説明をする恥ずかしそうな表情は、俺じゃなくても男なら誰でも落ちる。


『なんだか、催促したみたいです・・・スミマセン・・・味わって食べますね。』


店長に向かって見せる笑顔・・・完璧だ。まじヤバイ。


そして、その笑顔に・・・クラッとなったのは、男の俺だけじゃなかったようで・・・


『リコさん、あーもう・・・抱きしめて良いです?』


そんな突然の店長のセリフに、意味が分からずキョトンとなる・・・麻井さん。


『ハァー・・・また、小田原さんまで。オーナーと同じような事、言わないでください。』


俺の背後から聞こえる声。振り向くと御曹司が、ネクタイを緩めながら近付いてくる。


『コウ君・・・』


突然、俺の名を呼ぶ麻井さん。俺は、驚き・・・再度、麻井さんの方に振り返る。


『えっ・・・何で『リコ、ゴメン。3番街の店が気になってて、待たせたよな?』


あれっ・・・えっ・・・・俺?・・・の事じゃないのか?


『あっ、失礼しました。』俺は、パニクって慌ててキッチンへと戻った。



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