日本のベンチャーとアメリカのベンチャーを比べると、資金調達の環境に大きな違いがあります。

最近、アメリカのベンチャー企業、SlideRockYou が資金調達をしました。
Slideは5億ドルの評価で5000万ドルを、RockYouは未発表だが恐らく少し少ないバリュエーションで3500万ドルを調達した。

Marketwire:RockYou Scores $35 Million in Series C Funding Round Led by DCM

SlideとRockYouはFacebookを中心に、様々なSNSサイト、Opensocial Widget上で動くアプリケーション制作の大手です。Slideは2005年8月、RockYouは2007年7月に設立された若い会社で、両社ともFacebookのプラットフォーム解放を機に一気に大きくなりました。

今後、SNSが陳腐化していく中で、サイト横断のWidget提供会社の価値はますます高まってくると思われるので、彼らが注目されるのは納得がいきます。

ただ、収益モデルがまだ全く確立されておらず、収入も殆ど無い彼らに500億円近くのバリュエーションが付くのが驚きです。

多少の推測も含みつつ彼らの調達を追ってみます。(1ドル100円計算)
Slide
05年?月 05年7月 06年11月 08年1月
  1億円   8億円   20億円  50億円

RockYou
07年1月 07年3月 08年6月
1.5億円  15億円  35億円

ハッキリ言って凄すぎます!
羨ましすぎます!!

日本の収益を上げていないベンチャーだと、億単位の調達はもちろん3億円を超えるバリュエーションを付けることも限りなく難しいのが現状です。

RockYouのファウンダーの一人は日本人で、僕の知人なのですが、彼がアメリカのVCから最初資金を調達したときに言われた言葉が非常に印象に残っています。VCから資金調達後にまず言われたのが、「この1.5億円を半年間で使い切れ」と。VCから資金調達をする以前は、自分たちの貯金を切り崩して細々とやっていたので、調達完了後も何に使って良いか分からなかった。最初の1ヶ月は殆ど使うことなくいると、VCの人に何を言っているんだと怒られた。使い方が分からないというと、とにかく人を雇え、雇って、アプリをどんどんとリリースしろと。雇い方が分からないと言うと、人材派遣を紹介してくれた。その後、15億円調達した時も、同じく「使い切れ」と。ただ15億円は巨額すぎて、人を雇ったくらいでは無くならないので、また、使えずにいると、また怒られて、今度はとにかく既存のアプリ会社を買収しまくれと言われた。どうやって買収するかが分からないと言うと、M&Aの専門家を紹介してくれたそうです。アメリカのVCの人の考えはとにかくチャンスの窓は何時までも開いているものでは無いので、一瞬の機を逃さずに一気に成長させることこそが、逆にリスクを少なくする最良の方法だと考えているようです。

アメリカの有名なベンチャーキャピタリスト、ポールグラハムは、「まず何かスゴイものを作ることに集中しろ、金を儲ける方法を心配するな」と言い切っています。

アメリカのあるベンチャーキャピタリストの一言:Next Big Thing



確かに、お金があったからといってスゴイものを作れる訳ではありません。ただ、やれることは飛躍的に広がります。日本国内で小さく勝負するだけだと、チマチマ日銭を稼ぎながら余ったお金でサービスを運営していくことは可能かもしれません。しかし、本当に世界に通用するベンチャーを作っていくことを考えると、今の日本のファイナンス市場は極めて不利です。これが、日本から世界に通用するベンチャーがでない大きな原因の一つであると思います。ベンチャーにとってスピードは本当に重要です。お金はある意味時間を買えます。

日本でもポールグラハムの様な気概のある、ベンチャーキャピタリストがいれば、この閉塞感に溢れた、日本のベンチャー業界も大きく変わっていくのではないかと思ってしまったりします。