<GHQの憲法草案に込められた三つの国家構想>(2) |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

前回は、
人類が歩んできた苦い体験”と”奮闘努力”も
反映されている、
人類の遺産
としての「20世紀憲法」の側面をもった
日本の戦後憲法』について、
いっしょに辿ってみました。


今回は、
その『戦後憲法』の背景に、
GHQどういう料簡
(りょうけん)があったのか
について、すこし学んでみたいと思います。


さっそく本題に入りますが、
1945年10月初旬※1)、
GHQが、日本側政府への憲法改正示唆します。

憲法改正作業には、
佐々木惣一と美濃部達吉という、
戦前のリベラルな憲法学者たちが、
担当者に選ばれて、
改正作業に取りかかるのですが、
美濃部達吉も佐々木惣一も
そのほかの要人も高官も、ほとんどが

”軍部の暴走で軍事行動を起こし、
大きな戦争にまで拡大してしまったけど、
それは、悪く解釈しての暴走であり、
軍部独裁の慣行さえ無くせば済むことで
『明治憲法』までは変える必要はない

と考えていたようで、
その事から、”どうやって天皇制を残すか
だけを考えていたようです。

”『明治憲法』を変える必要はない”という見解が、
支配的であった<日本側>対して、
一方の<GHQ>のほうは、
軍国主義化再発ふせぐべく
国の構造を形づくる憲法そのもの
変えるつもりでいたようです。


渡辺治『憲法9条と25条・その力と可能性』では
1946年憲法』制定当時のGHQの狙い

その経緯について、
くわしい解説が為されています。


GHQは、
日本帝国主義
再びアジアに侵略する軍国主義として
復活する
こと阻むため
に、
・・・四本柱(「厳格な軍備の制限
象徴天皇制への転換国民の主権化
民主化言論・結社・集会の自由の完全保障」)、
農地改革貧困の根絶」)の改革
推進してきましたが、
新しい憲法には、
これを踏まえた三つの国家構想
盛り込もうとしました。

一つは、
軍備を厳しく制限することを徹底して、
日本を非武装国家とする構想です。

二つ目は、
軍部が天皇を担いで
戦争を戦争を引き起こすことがないよう、
天皇を統治から遠ざけ
国民の意思に基づく統治体制を持ち、
市民の自由な言論が保障される
自由民主主義国家の構想です。

そして三つ目は、
他国への侵略に国民を動員する原因となった
貧困是正するために、
社会保障教育、福祉を拡充する
福祉国家構想です。
 
GHQは、
これから作る憲法草案において、
こうした三つの国家構想
実現することを目指したのです。

 そのおおもとは、1946年2月3日、
マッカーサーが、
憲法草案の直接起草を命じた際
ホイットニーに対し、
憲法草案の中に盛り込む原則として
打ち出した、
いわゆる「マッカーサー三原則
統治体制の民主化戦争の放棄封建制度の廃止)」
に規定されました。

(引用者中略)

福祉国家構想直接には

三原則には盛り込まれていませんでした
が、
GHQスタッフの中には
強く福祉国家の建設を
志向するメンバーがいました

マッカーサーの指示を受けて、
GHQスタッフ25名が集められ、
GS次長のケーディス・・・ラウエル、
そしてハッシーの三名の幹部からなる
運営委員会の統括の下、
いくつかのグループに分かれて
起草作業に入りました

[1946年]2月4日のことです。
2月13日には
日本政府側とGHQが
日本側草案を完了するよう命じたのです。
突貫作業が始まりました。”
(P.44-45)


日本帝国主義
軍国主義国家日本」を阻むために、
非武装平和国家」にするのは勿論のことですが、
興味深いのは、
福祉国家構想」案までも出てきたが、
その理由は、あくまでも、
他国への侵略に
国民を動員する原因となった「貧困」を

是正するための一環”である

つまり軍国主義再発防止のため
という点です。


さらに興味深いのは、
いくつかのグループに分かれた
GHQの憲法起草メンバーたちが、
軍国主義」を復活させないため
日本を、
自由主義国家になるような「憲法」にすべきか
それとも
福祉国家>になるような「憲法」にすべきか
憲法草案づくりに入ると、
この二つの国家構想をめぐって、
GHQメンバーどうしの間で
激しくぶつかりあった、という点です。


二度と軍国主義化さ
せない
という狙いは同じ
なのに、
正反対二つの構想
なぜ出てきたのでしょうか?


自由主義国家
構想を唱えたグループは、
天皇による統帥権独裁体制
軍部の独走態勢、また、市民の自由を制限する
専制体制が問題であったので、
自由主義国家の諸原則」を
「憲法」に盛り込むことで、
軍国主義化」を抑えることができるのではないか、
と考えたようです。

そのために具体的には、

○「象徴天皇制
○「君主ではなく、
国民を代表する国会の優越主義
○「市民の自由主義的人権」の「完全保障
(戦前は、「治安維持法」や「治安警察法」で、
法律の制定次第で簡単に人権が奪われた

○「刑事手続き上人権の拡充
(おなじく、『明治憲法』下での「戦前」では、検閲拷問が行われた)
立憲主義化するために、
法律が「憲法」に沿っているか審査するための
違憲審査制度の導入
民主主義の基盤を厚くするための
地方自治」の規定
(『明治憲法』では、都道府県の<地方の首長>は、
天皇の中央政府から派遣”されてくる内務省官僚>の
地方長官でしかなかった

※『明治憲法の仕組みならではの「専制体制」を
崩すためには、
違憲審査制度」と「地方自治制度」は、
不可欠だと考えられていたようです。


そうした
GHQの自由主義国家構想グループ案>に対して、
GHQの福祉国家構想グループ>は、
”日本による侵略戦争の成立には、
貧困」が”温床”にあったはずで、
”「封建的地主制」や
企業の経済活動への無規制」が、
国民を、「貧困な状態に追いやり
満州などへの植民地進出ファシズム
そして侵略戦争への
国民的な支持にも繋がった”のであり、
自由主義国家では、
企業の発展や経済成長が起こっても、
その内実では、
企業が低賃金で労働者を使い
また都合が悪くなればクビにし
企業の儲けのみを追求した結果、
失業を大量に生み
環境破壊公害過労健康被害を引き起こし
社会の二極化をもたらしている事から、
各個人が幸福になるどころか、
社会問題生み出し
全体主義国家」や「ファシズム」を
生み出しているではないか”という見解から、
児童や労働者の酷使に「規制」をかけ、
労働者の「団結権を認め」、
企業に課税した分」を、
貧困層への「社会保障」や「福祉」や「教育」に
再分配」することで、
貧困を抑えるための「福祉国家構想
展開するのでした。


さて、1946年に制定される『日本国憲法』は、
どういう形になったのでしょうか?



(つづく)



※1)孫崎享『戦後史の正体』によれば、

ちょうど、この頃1945年10月)は、
幣原喜重郎内閣が成立する時期
(昭和二〇年一〇月九日)で、
その計画は吉田茂 外務大臣が、
いちいちマッカーサー総司令部の意向を確かめ
組閣の人選を行なった事から、
残念なことに、日本の政府は
ついに傀儡政権となってしまった

といった内容を、
重光葵氏が日記に書いているようで、
戦後憲法制定は、この時期に重なるのですが、
しかし、
<衆議院の憲法改正小委員会>での
(旧)社会党の森戸辰男(憲法研究会)の奮闘
戦後の日本国民による「憲法訴訟」の展開から、
押しつけ憲法」である”とは言いきれない
という印象を、ぼくは、今のところ持っています。
ただし1946年制定/改正の『日本国憲法』>は、
冷戦勃発後に、
対日政策の”逆コース”転換が起こった後の
戦後日本(安保や日米地位協定)の構造との
ねじれ”、
さらにまた
グローバル経済対応の日本国家化」路線に転換する1990年以降の日本>との新たな別ねじれという”二重のねじれ”を起こしつつ現在に至り
いま『戦後憲法』が、
ねじ切られようとしているような”(きし)の音”を
あげているように思われます。



(参考文献)
渡辺治 『憲法9条と25条・その力と可能性』

――――――――――――――――
肥田舜太郎さんから民医連の医師たちへ


3.11以後,すべての日本人は
みな被曝者である!
(肥田舜太郎)
http://www.youtube.com/watch?v=zWXLnQvOa2A
――――――――――――――――


Project99%掲示板より、一部引用します。
――――――――――――――――――――――――
3月4日~13日まで第16回TPP交渉会合が開催されている
シンガポールに滞在して、
TPP反対のための情報収集と活動をしている内田聖子さん
(PARC事務局長)からの緊急呼びかけをPARCの会員MLより転載させていただきます。

(引用者中略)

(以下、PARC会員MLより転載拡散歓迎
―――――――――――――――――――――


会員の皆様

シンガポールに来ていることはすでにお伝えしましたが、
昨日、同じく活動をともにするNGOのメンバーの協力も得て、
米国の交渉担当官が
日本の参加問題について公式の場で言及していた

という事実がわかりました。

米国の交渉担当官が、
シンガポール会合のオフィシャルな交渉の場で
日本の参加問題について言及
日本には
一切の議論の蒸し返しは許さない

字句の訂正も許さない

事前にテキストも見せられない

それでも日本は参加するだろう

だから各国は7月まで
(参議院選挙が7月
日本との二国間の事前協議を
済ませておくように

また日本の参加は9月が初めてになる

という内容です。

もちろんこのこと自体は、
これまで多くの人がそうなるだろうと理解してきた内容ですが
しかし改めて、今回の交渉の場で
具体的な日付まで切って
各国の担当官にいった

ということの意味は大きいと思います。許せません。

9月の交渉は米国であるので、議長国も米国。
だから仮に日本がごちゃごちゃいっても、ねじふせられる
と思っているのだろう。
あとは10月のバリでのAPECでサインをみんなでして終わり、
という恐るべきシナリオです。

文面など詳細は下記をご覧ください。
http://www.parc-jp.org/teigen/2011/syomei201303.html