前回<http://ameblo.jp/hirumemuti/entry-11119881539.html >は、
医療現場における自由診療の場合は、
消費税=付加価値税が、消費者(患者)に掛かってくるため、
普通の商品やサービスに掛かってくる「消費税=付加価値税の一般的な仕組み」の紹介をさせていただきました。
今回は、社会保険診療の場合だと、
消費者(患者)に対する消費税=付加価値税が、
掛かってこない(非課税)ために、
流通過程上の各段階で積み重なっていく付加価値税のツケを、
消費者は消費税が非課税だから、
最終地点である医療機関が負担する事になり、
その負担が、医療経営の負担になる、という事を紹介いたします。
(医療経営情報Weekly2006/2/13 №0035号
東日本税理士法人 税理士 田村 信勝
「医療機関における消費税損税問題とは? 第1回)」
さっそく以下に引用したと思います。
「しかし医療機関の場合には、社会保険診療等の消費税が非課税となる収入が多いので、上記の例よりも図2のケースのほうが多い。」
<図1:自由診療の場合>
「図1は、診療が自由診療であり
消費税が課税されるのを前提としている。」
(図1:診療が自由診療で、治療費が患者による全額負担で、それには消費税=付加価値税が、患者/消費者に掛かってくる)
<図2:社会保険診療の場合>
「図2の場合には、患者から預かった消費税がないのに、
医薬品商社には消費税を支払っているため、
支払損が生じてしまう。
解説すると、社会保険診療等による収入は非課税となるため、
患者からは消費税を預かっていない。
しかし、[医療機関は]医薬品商社には
診療材料に対する消費税15,000円を支払っているため、
[患者から]預かった消費税より、
支払った消費税のほうが多くなってしまい、
支払損が生じてしまう。」
うすうすお気づきかもしれませんが、
消費税の「支払い損」は、
自分が仕入れ先(下請け)に支払った消費税の方が、
預かった(受け取った)消費税よりも、
その金額が大きいので、
その分の損失が出てしまう事を言います。
しかし、社会保険診療の場合の医療機関は
患者が「非課税」身分であるために、
患者から消費税を受け取ることがないために、
医療機関は、下の仕入れ先に支払う消費税分を、
まるまる負担することになります。
「支払った消費税15,000円が税務署から還付になれば、
支払損とはならないが、単純にそうはいかない。
<ここが医療機関の損税だ!>
預かった消費税から差し引く仕入れに係る消費税額については、
課税売上割合を考慮する必要がある。
課税売上割合とは簡単に言えば、
総売上のうちに占める消費税が課税となる売上の割合のことである。
つまり、課税となる収入に対応する分しか
仕入れに係る消費税額は控除できないのである。
消費税を計算する上で、診療材料の仕入れが
非課税診療と自由診療に共通するものであれば、
その診療材料の仕入高に対する消費税額に課税売上割合を乗じる。
収入が、社会保険診療等しかなかった場合には、
[患者に対する]課税売上割合が0%になるので、
仕入れに係る消費税額は一切控除出来ない。
その場合には、
還付を受けることができず15,000円の支払損が生じてしまう。
実際には、
図1のように自由診療などの消費税が課される収入もある。
仮に、[患者に対する]課税売上割合が10%であれば、
15,000円の10%である1,500円しか控除出来ない。
支払った消費税は15,000円であるのに、
控除出来る消費税は1,500円なので、
13,500円は最終消費者である患者ではなく
医療機関で負担することになってしまう。
消費税の納税義務がないため、
預った消費税を国に納めなくてよいことを益税と呼ぶのに対し、
医療機関は消費税で損をしているということで、
このことを消費税の損税と呼んでいる。」
税に関して、自分が支払い損をしてしまう税が「損税」で、
同じく消費税で、
自分が上から受け取った/預かった消費税(=付加価値税)を、
免税条件の範囲に入っていた場合に、
その預かった消費税の金を、国に納めなくても良くなるために、
その分、自分のものになるために「益税」ということになります。
消費税が導入されるときに、
中小零細企業や小規模事業者による”消費税への反発”を和らげるための「アメ」として、
年間の売り上げが3000万円以内の事業者ならば、
その事業者には、消費税の納付が免除となっていました。
もっとも、消費税導入が唱えられ始めた時に、
国民選挙で「何が何でも消費税反対!」を唱えていた、
土井たか子の社会党が大勝して与党とったが、
社会党連立政権の村山内閣は、
国民の消費税反対の意向を受けて与党になったにもかかわらず、
官僚に言いくるめられて、消費税を導入したのでありました。
を今回も、拝借したいと思います。
(しかし、今年の朝日ニュースター「ニュースの真相」での亀井靜香氏の発言では、村山富一氏は当時、まず国益を考えて、これまでの自説を殺して、政権運営に当たったのだといいます。)
さて、話を戻すと、そうした意味で、
消費税導入から何年間の、3000万円以内の売り上げ(あくまでも売り上げであって、利益ではありません。したがって、そこには仕入れコストなどが含まれています)以内の事業者にとっては、
消費税は、「益税」ということになります。
ところが、派遣労働法や規制緩和よろしく、
いちど導入された消費税制度は、
その後、徐々に間口が広げられていって、
庶民に苦しくなっていったのであります。
当初の免税点が、売り上げ3000万円であったのが、
1000万円になり、また消費税率が、3%から5%に引き上げられるようになっていったのでした。
(※「益税」に関して<http://dreamer8.net/zei/a032.html >)
引用を続けます。
「将来、消費税率がアップした場合に、
診療報酬の改定が横ばいのままであれば、
医薬品商社に支払う消費税が増え、
更に医療機関の負担が増加することになるのである。
このように、医療に対する消費税は
非課税とされているにも係らず、
国には消費税が納税されるという現象が生じている。
これは、図2のように患者は消費税を負担する必要はないが、
医療機関が診療材料購入時に消費税を支払っているからである。
医療に対する消費税を本当に非課税とするのであれば、
国への納税も生じないような仕組みを作るべきではないだろうか。
厚生労働省は医療法人制度改革を進めているが、
消費税の損税問題こそ
全ての医療機関にとって重大事項であり、
解決策を見出さなければならない問題である。」
(ただし、医療機関も非課税になっても、
消費税制度の不備から、
医療機関より下の流通過程のうちの業者間の力関係で、
力の弱い業者が、消費税の負担を被らされる、
という「悲劇」が高まるのであります。)
しかし、上に見てきた事情から、
下のような記事に見られる出来事が発生するのでありました。
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「消費税損税問題」で国を提訴―兵庫県民間病院協会の4法人
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/29910.html
社会保険診療報酬に対する消費税の非課税措置により、仕入れ時にかかった消費税が患者側に転嫁できず損失を被っているとして、兵庫県民間病院協会の会員4法人は9月28日、国に対し、過去3年間の損失額の一部としてそれぞれ1000万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こした。
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高樹辰昌
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