統合失調症との関わり | ひろせカウンセリング若手ブログ

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吃音自助グループ廣瀬カウンセリング東京教室の、若手メンバーによるブログです。

こんばんは。今日は2月の復習会がありました。参加された皆様、お疲れ様でした。

2月教室の後の懇親会で、私のカウンセラーとしての振る舞いや応答の仕方はどこから来ているのかというようなことを聞かれました。

カウンセリング自体はロジャーズや廣瀬先生から学んだものですが、思い返してみると、その下地にある部分は統合失調症の患者さんとの関わりから身につけたものが多かったように思います。

私は、大学院の修士課程から博士課程を修了するまで、精神病院の受付の夜勤のアルバイトをしていました。

電話番や夜間の窓口の応対をする仕事で、これを6年間のあいだ2~3日に一回くらいの頻度でしていました。

それなりの時間を統合失調症の患者さんと接し続けたことになります。

しかも、私の働いていた病院は、症状の重い統合失調症患者を受け入れていたので、閉鎖病棟だとか入院歴数十年というレベルの患者さんと接していました。

精神病院でのアルバイトの話は、この教室ではあまりしたことが無かったので、今回すこし書いてみたいと思います。

働いている(というか実際には「そこに居る」という感じでしたが)あいだには、緊迫した場面も多くありました。

閉鎖病棟から呼ばれて暴れている患者さんを取り押さえに行ったり、前の晩から「入院させてくれ~」といって病院の前で粘っていた人を翌日いざ入院させてみたらバッグの中に包丁を12本持っていたとか、いろいろありました。

私が試行錯誤していくなかで身に付けていったのは、相手の思考の流れを妨げない、ということです。

統合失調症の患者さんは、そもそも幻覚や幻聴があったり、薬の副作用で思考力が落ちていたりするので、要件を普通に言っても通じないことがあります。

そういう人に、今日は遅いからまた明日来てくださいとか、薬を飲み過ぎないようにしてくださいといったことを伝えようとしても、ストレートに言うだけだとまったく伝わらない場合がある。

繰り返し接していく中で私が学んだのは、相手の思考の流れに徹底的に合わせていくことでした。

これは文章で説明できるか分からないのですが、ひたすら相手の話に合わせてやりとりをしていくうちに、フッと相手の心のドアが開き、こちらの言うことを受け入れてくれる態勢になることがある。

それにタイミングを合わせて、「今日は遅いからまた明日にしましょう」とか「何の病気か分かるためには診察を受けてください」とか言うと、相手の心にスッと届いて、驚くほど素直に聞いてくれることがあります。

私がそこで面白かったのは、そういう言葉だけのやりとりで、興奮していた患者さんが落ち着いてきたり、妄想がだんだん弱まってきて、言っていることがまともになってきてくれたりしたことですね。

たとえ一時的なものであれ、応対の仕方だけでここまで変わるのかと。

ここで大事なことは、「ハイハイわかりました」というようないい加減な聞き方や、「とにかくこうしてください」というような押し付けの混ざったものではなく、どんなに冗長で非合理で普通には理解できないような話であっても、とことん親身になって聞くことです。

これは非常に重要なことですが、心と心のつながりが完全に切れたような状態になっている患者さんを除けば、統合失調症の患者さんは相手の態度を普通の人と同じように敏感に感じ取ります。

ですから、どんなに人間らしさを失っているように見える患者さんであっても、一人の人間としてきちんと接していくことが大事です。

ただ、いつも上手くいくわけではなく、どうにもならない患者さんは何割かはいました。やはり統合失調症ですから、薬を使って妄想や幻覚を抑えるのが前提です。

廣瀬先生は吃音者との出合いからカウンセラーとして成長したというようなことを仰っていましたが、私にとってはそれが統合失調症の患者さんたちであったといえます。

いろいろと大変な思いもしましたが、統合失調症の患者さんたちには今でも親しい気持ちを抱いています。

統合失調症との関わりから学んだことは他にもいくつかあるので、また機会があったら書いてみたいと思います。