厚揚げの女。 | フーテンひぐらし

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永遠の放課後。文化祭前夜のテンションで生きたい。なかなか大人になれない。



恋愛中の女性にとって、かなり目ウロコになるであろう名著
黒川伊保子「恋愛脳」は、わたしも恋愛中に読んで
「ぬおーー」と唸り、かつて何度か記事にした。


(たとえばこんなの とか。脳のしくみの話とは違う部分だけど)


男脳と女脳はこんなにも違う、だからそもそも意思の疎通が
すれ違って当たり前、というのがよく分かる本なのだが


3年ぶりくらいに読み返してみたら、
恋愛だけでなく、男をからめない「女の生き方」についても
とてもいいことが書いてあったのだなと気づいた。


湯川玲子さんの「四十路越え!」がバシッと背中を叩いてくれるアネゴだとしたら、
黒川伊保子さんの「恋愛脳」はふんわりやんわり諭してくれるお姉さまかな。



今回とくに共感したのは「厚揚げ」な女子についての記述である。
ちと長いのだけど、抜粋するね。


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


地下鉄の中で、まん前に座ったお嬢さんを見て、
私は厚揚げを思い出し、どうしても頭から離れなくなってしまったのである。
あの、お豆腐を揚げた、厚揚げである。


年の頃なら27、8だろうか。
しっかりした、品の良い女性である。
「おっとりした」品の良い女性なら豆腐のイメージだったのかもしれないが、
ものの道理をわきまえたようなかっちりした感じ全体を覆っていて、
これが厚揚げに見えたのかもしれない。


地味なセーターに、しっかりした顔立ち。
少し骨太の、健康そうな体格。
このどっしりした存在感は、女が想像するよりも
(ときには本人が想像するよりも)男受けするはずだ。


(中略)


ショートケーキみたいな、キレイでスイートな女の子がいいなんて、
雑誌とTVの中だけの出来事だ。
実際には、焼き厚揚げの生醤油かけみたいな女の子、けっこう人気がある。


(中略)


それに、こういう骨格のしっかりしたもち肌の女性は、
三十半ばを過ぎれば迫力が出てくる。
子どもを持てば大らかさと艶が加わる。
そうなったら、どんな分野でも筋金入りのプロに見える。
人生の旬が、遅めにあでやかにやってくるタイプなのだ。


しかしながら、羨望のまなざしで見ている私の前で、
地下鉄のミス厚揚げは、ちっとも自分の魅力に気づいていないようだった。
服装は無頓着、髪や爪も長い間かまっていないのが分かる。


自分のことを好きじゃない、ってことなのだろう。
一緒にいた同僚と仕事の話をする彼女の声は、
長いこといらつきながらしゃべっている人に共通の抑揚を持っていた。


旬はこれからなのに、彼女はとうに自分に見切りをつけている。
きっと、同世代の華奢で小ぎれいな女の子たちに見劣りしているような気がして、
職場のヒロインになりきれないんだろうなあ。


(中略)


もしもヒロインを目指しているのなら、
憧れの目標を「誰もが憧れるステレオタイプ」に設定してはダメなのだ。
既に確定したヒロイン・モデルに自分をはめ込んでも、
常にそのモデルからの引き算でしか生きられない。


特に、今みたいに華奢でぎくしゃく動く女の子が(なぜか)
人気の時代には、遅咲きのミス厚揚げは、せっかくの素材を
ないがしろにして生きることになる。


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



なぜこれに共感したかというと、
私もひとり、「ミス厚揚げ」を知っているからである。



年は三十半ば。
太っているわけではないが上背もある体格のいい女性で、
かつ全身のラインが全て柔らかな曲線で構成されている。
ゆえに全体の印象が国宝の仏様や観音様を思わせる。
髪は艶のある黒髪で、短めのさらさらボブ。


仕事は大変優秀で、だけど決して
ギスギス系のひとではなく、低めの声で
穏やか、かつハッキリとコミュニケーションする。


なぜか近くにいればいるほどだんだんと見惚れていくのだが、
その秘密は柔らかそうでハリのあるもち肌。


メイクは控えめだけど、まばたきする時に気づく大げさでないアイライン、
そして繊細な感じで上げたまつ毛が涼しげで、それに
上下ともに豊かなくちびる組み合わさると、どうにも色っぽいのである。



「私、Eさんのこといつも見惚れちゃうんだよね、色っぽいなって」
私が酒の席でつぶやいたら、何人かの男女が
「すごい分かるー!」 「いいよね、俺、ファンなんだ」と盛り上がった。


髪を巻いてるわけでもなく、セクシーor男ウケ狙いの服を着てるわけでもなく、
甘ったるい喋り方をするわけでもなく。なのに多くの人が色っぽいと思うのだ。



そんなに素敵なEさんなのに、一緒に酒を飲むと(すごい酒豪なのもステキ)
「自分は彼氏もいなくて結婚もしてないからヤバイ」
という嘆きを必ずするのである。



全然その焦り必要ねー!!
あなたみたいな女にひれ伏す男は
私の1000倍多くいる!!
ゆっくり鷹揚に構えとけば、
もしくは来る者拒まずで味見しとけば
最後に最高の男が残るはず!



…と何度言ってもあまり信じてくれないの 笑


彼女は優秀でしっかりしてるだけに、ヤワな年下男とかを
はなから受け付けてないので、セグメントかかっちゃってるそうなのだ。


むーん
もったいなさ杉


いつも、私と某男子で


「俺が未婚ならEさんとつきあうのに!」
「あたしが男ならEさんをモノにしようと頑張るのに!」


と愛を告げるのだが、Eさんは
「あたし“たられば”は嫌いよー!」とはねつけるのである。
…まあ、我々の“たられば”があまりに距離が遠すぎのが悪いんだけど。




私が見てきた限りではね、


★すっげー可愛い顔
★すっげー巨乳
★すっげー細くてスタイル良し


な「万人がうらやましいと思う」女子のほうが、
不幸度、迷走度、悩み度が高い。


泣いてる、逃げられてる、もしくは勘違いの挙句の阿呆な行動で大失敗気味。


もちろん全員がそうではないけど、

「アンタなんでそんなエエもん持ってるのに…」と思う人が多い。



逆に、

「ぽっちゃりで、もち肌で、お母さんのような安心感と落ち着きがある」
女子のほうが、あきらかに幸せをわし掴んでいる。


社内で若くして結婚する女子たちは(結婚=幸せと結びつけるならば、だが)
みんな、後者のタイプなのである。


(しかも彼はすごくやきもち焼きときた)




だから本当に黒川さんのおはなしに激しく同意したい。



世の中の「支持母数の多いタイプ」に近づこうとすんな。
それは既製服と一緒で「みんなが着られる=誰にもフィットしない」のだから。


自分だけの魅力というのを探して気づいて磨いたほうがいい。
世の潮流にあわせる必要なんてないのだ。



男に受ける、という点でも
多数の議席を確保したいのではなく、
熱烈な支持者だけを得たいのであれば、
あなたの予想以上に男の好みは千差万別だから
いまの自分の素材を活かしていけば漁場はある。



そして、特に「厚揚げ」タイプのあなたは、
佐々木希だの北川景子だのSHIHOだの吉瀬美智子だの壇れいだの梨花だの
そんなものを吹き飛ばす強い魅力と磁力をもってるんだから
ガンガンそのイソフラボンぶりに磨きをかければいいのだ♪


(ちなみに厚揚げは、豆腐よりも俄然、イソフラボンが多いのだ!!)



わたし、何も持っていない。


わたし、大きく見劣っている。


それはほとんどの人の場合、単なる思い込みで、
その思い込みオーラが、自分の魅力を覆い隠しているのだからね。



オリジナルでいこう。オリジナルをさがそう。

目標にするなら、オリジナル・モデルを見つけよう。


派手なスイーツより、いつ食べても美味しい厚揚げ。

その心意気でいくのだぞ。