2007-10-08 19:23:28

「ちょっとでも悪いものは入っていて欲しくない」

テーマ:ブログ

 食に関わる仕事をしていると、「ちょっとでも悪いものは食べもの入っていて欲しくない」と言う人がわりといます。でも、前のエントリー でも書いたように、大騒ぎされた中国産のキクラゲは21666家族(4人)分の量をひとりでイッキ食いしないと、何も起きません。それも毎日。

 「ちょっとでも悪い」という考え方で凝り固まっていると、ホメオパシーとやらにコロッとひっかかるんじゃないかと思います。すべては量の問題なので 基準値の10倍や100倍や1000倍程度なら、心配しなくていいかと。「量が一定量なければ、どんなものでも毒にも薬にもならない」が基本。農薬の毒性で一番被害を蒙るのは農家の人だということをお忘れなく。キクラゲの違反って「2倍」なんですが、「よくもそんな少なくて済むような作り方してますね、すごい!」なんじゃないの? 0.02ppmって「一億分の2g」です。

 では、テレビチャンピオンでも食べられない、到底無理な「基準値」の実態がわかれば、考えられる問いはなんなんでしょう? 「じゃあ気にせず食べよっ」と安心するだけでもいいと思います。ジャーナリストや研究者はどうなのかしら? 「そんな厳しい基準値でも運用できてるのはなぜか?」とか、「もしかして、かなり厳しい基準に農家の人が圧迫されているんじゃないか?」とか、「小さな農家のなかには情報についていけてない人もいるんじゃないのか?」とか、「そもそもどうして、そんな厳しい基準を適用してるの?無駄なんじゃないか」などなどといった「問い」を考えるのが自然なんではないでしょうか。

 こうして、いろいろ「疑問点」や「違和感」を出してみると、最初に思っていた「ちょっとでも悪いものは入って欲しくない」という考え方がどういう「思考停止」なのかわかるんじゃないかと思います。そして「思考停止」じゃなくなることって、それほど難しいことではないんじゃないでしょうか。私は「思考停止」って言葉自体が抽象的なのであんまり使いたくないんですが、どうして?言われたら、上のような「問いが阻害されるから」です。

※個々の食品に設定される農薬等の残留農薬基準は無毒性量(その物質を一生涯にわたって毎日摂取しても影響が出ない量)に100分の一をかけて設定される1日摂取許容量のさらに数百分の一や数千分の一に過ぎません。あと、料理などでも流されます。


 「東京くらしねっと10月号」(スーパーに置いてある「東京都消費生活総合センター」の無料のちらし)に松永和紀さんの「科学的な目を持とう」という記事が大きく掲載されていました。無料なのに毎号とっても充実してるちらしです。お買い物ついでにぜひ!

-----------引用

 まず、重要な事実は、“日本の輸入監視は極めて厳しく、米国などでの問題事例の多くがすでに規制されている”ということです。

 日本には年間186万件、重さにして3410万tもの食品が輸入されています。これらをいちいち検査していては、国の予算はいくらあっても足りないでしょう。そのため厚生労働省は輸入食品のリスク(健康への影響が起きる可能性とその程度)に応じて対応する仕組みを作っています。健康被害の大きい食品は厳しく監視し、心配の少ない食品は時々チェックするというメリハリの利いたシステムを構築しているのです。

 具体的には、各港にある厚生労働省検疫所は、事業者から提出された書類をチェックするとともに、その中から一定数をサンプリングして調べる「モニタリング調査」を行い、輸入食品の大まかな状況を把握します。

 この検査で法律違反が分かった場合、リスクの高いものについてはすぐに「検査命令」が出されます。例えば、カビが作る極めて強い発がん物質「アフラトキシン」や感染すると、重い食中毒を起こす「腸管出血性大腸菌O-157」などです。検査命令がでると、その後輸入する際には全ロットを検査しなければならず、問題がないことを確認してない限り国内に流通させることはできません。

 一方、リスクがそれほど高くないと科学的に判断される残留農薬や動物用医薬品などについては、モニタリング調査で1回目の違反が出た後は、輸入件数の半分を検査する「50%モニタリング検査」に移行します。そのうえで、2回目の違反が出た場合には「違反の蓋然性が高い」としてリスクの高いものと同様の検査命令に移行します、検査命令は簡単には解除されません。

 昨年度の輸入届出件数に対する検査率は11%、検査総数に対する違反の割合は0.7%にとどまっています。米国では最近、問題になった食品の多くは、日本はすでに違反が見つかり、検査命令の対象になっていました。そのうえで日本では、企業や自治体、生協などもそれぞれに食品が国の定める基準に違反していないか、検査し、自治体や生協は結果を公表しています、これらの検査でも、違反の見つかる確率は非常に低いのが実情です。

(略)日本では昨年5月末、ポジティブリスト制という世界的にみても極めて厳しい残留農薬制度が施行されました。そのために海外の日本向け輸出業者の多くは、食品を厳選し、日本の制度をクリアするものだけを輸出する仕組みを整えています。

 世界中を見渡しても、これほど食の安全が確保されている国はありません。

-----------引用

「危なくない」って言うのって、「危ない」って言うより大変なことなんですよね。基本的にリスクゼロの話ってありませんから。

 松永さんも本のほうでは書かれていましたが、私自身もこのポシティブリスト制の問題点がいろいろあると思います・・。

 いまはどこもかしこも「米」万歳!「国産食材」万歳!で、欧米型食事を見直す「地産池消」で「食育」がすすめられているような状況です。なんかなあ、農業に保護政策をしているのはほかの国もやってるんだけど、どうも日本は農家と国民の「努力」と「教育」だけで乗り切ろうっていうかんじがあるんですよね。だから「徴農」って話も出てくるんだと思うんですが、別に「徴農」が今の段階で徴兵だのポルポトだのとは思いませんし、農業従事者を育てることは大事なことだと思うので、ちゃんと育てていく情報と金をまわすべきことだと思います。「ボランティアで何でもできると思うなよ」って態度は必要だと思いますよ。

 うちは実家米屋なんで、ご飯は大好きだし、米自体も品種改良を重ねた結果、だいたいどこの米買ってもほんとにおいしいと思いますが、「食育」もむかつくのが、「キレる少年」は「食い物のせいだ」って話がすぐ出てくることです。それで「昔ながらの食事を見直そう」って話にいっちゃうんですけど、昔のほうがよほど犯罪多いってば。

 そもそも、みなさん「食育」ってどこがモトネタか知ってます?

 明治時代後期のベストセラーで食文化を啓蒙する家庭小説『食道楽 (村井弦斎)のなかの言葉から一般化して、平成に復活した言葉です。『食道楽』は明治期の『美味しんぼ』だと思ってください。村井は海原雄山ってところでしょうか。

 そこにこのように書いてあって、現代の「食育」の旗振り役の人の本にも引用されています。

「小児には、徳育よりも智育よりも、体育よりも、食育が先。体育、徳育の根源にも食育にある」と。なんかどこかで聞いたことがありませんか?

 ちなみに弦斎は“ロハスの元祖”みたいな人で、ベストセラーの印税で平塚に広大な大邸宅をかまえて、東京から料理人を呼び、選び抜いた食材を使ったグルメ三昧の日々を過ごしたそう。それで、あきちゃったんですかね、新聞記者の仕事をやめて、玄米食の研究に没頭し、断食、自然食を実践。山の中で暮らしたそう。

「竪穴住居に住み、生きた虫など、加工しない自然のままのものだけを食べて暮らし、奇人、変人扱いされた」そうです。(Wikipedia)

 うっ、生きた虫ですってー!!(T_T) あのう、変わった人はいてもいいんですけど、奇人、変人を義務教育のお手本にするのやめようよ・・・。「若者の右傾化」を心配するより「知識人の原始人化」を心配したほうがいいんじゃないですかね。

-----

 ご参考に 

毎日新聞 - 2007年7月13日

 最近、よく耳にする「食育」という言葉。広辞苑(第5版)の見出し語にはないが、言葉としての歴史は意外に古い。1898(明治31)年、福井県出身の医師、薬剤師で陸軍少将、薬剤監という地位にあった石塚左玄(さげん)の著書「通俗食物養生法」。この中の「体育智育才育は即ち食育なり」というくだりが「食育」の初出という。1903(明治36)年には作家、村井弦斎も著書「食道楽」の中で「食育」と書いた。

 しかし、その後約1世紀、世間からこの言葉は消える。“復活”はBSE(牛海綿状脳症)の発生や食品の産地偽装で食への信頼が揺らいだ01、02年ごろ。03年には小泉純一郎首相(当時)が施政方針演説に「食育の推進」を盛り込み、05年6月に「食育基本法」が成立。法の前文は食育を「知育、徳育、体育の基礎」と位置づけた。

-----
AD
いいね!(0)  |  コメント(9)  |  リブログ(0)

コメント

[コメントをする]

9 ■無題

キクラゲ
本来は使っていないはずが、飛散でかぶったモノが残留して検出された。

キクラゲの基準量は、ほかの作物に比べて厳しい。なぜならば、使わない事が前提だから。

ではなかったかと…

8 ■貝柱さま

こんばんわ。
>「ここまできたら信仰だなー」と思って
そうですよねー。「おー人体の神秘だー、母性の神秘だー」とかなってるのは、うぬーってかんじです。「神秘」っていうか「そうなってるんですけど」みたいな話なんですけどね。

新生児の小腸にも特徴があります。成人の小腸はなんでも取り込まないようになっています。いってみれば食物は動植物の「死んだもの」を取り入れるようになっていて、遺伝情報が分解された状態(消化ともいう)を取り込みます。つまり成人の小腸は「吸収閉鎖」という機能があります。ところが新生児は母乳からの免疫物質を壊さず取り込まないといけないのでその「吸収閉鎖」機能が解除されています(4~6ケ月くらいまで)。ただ、人間は、ウシやウマとかと違って、ある程度免疫分子を取り込んで生まれてくるので、絶対に母乳を飲まなくてはいけないということではないけれども、やはり、母乳以外のものを与えると、感染症の下痢やメトヘモグロビン血症(チアノーゼ症状)の「リスク」(あくまで「リスク」です)は高くなるという報告が出てるんですね。

>粉ミルク育ち(と育てた親)はずっと肩身の狭い思いをしてきたので、過敏になってたみたいです。
そうなんですよね。ただ、今は逆に「母乳」について書こうとすると、「人工乳」の人からクレームがある・・・と止められてしまったりする現状もあるんですわ・・・。科学的事実は「感情」的なものは配慮はしてくれないんですからね。でも、メトヘモグロビン血症や下痢は新生児にとっては「命」に関わることですから、やはり、きっちり説明をすることと、社会的な整備(環境であり、人工乳のそれこそ改善等)をすすめたり検証することは必要だと思います。決して人工乳のお母さんを責めることではないと思います。「母乳で育てる」ということは仕事や身体の事情だってあるわけで、いまどきそのへんでおっぱいだして乳なんてあげられないわけですからね。

7 ■誤解を招く表現でした。

怒るなんてとんでもない。すばやい補足ありがとうございます。
WHOの勧告もそういえばどこかで読んだはずなのですが、すっかり頭から飛んでました。
ただ、そういう根拠を示さず闇雲に「母乳すばらしい!」って言う人もいるので「ここまできたら信仰だなー」と思って「母乳信仰」って書いたんですけどね。
粉ミルク育ち(と育てた親)はずっと肩身の狭い思いをしてきたので、過敏になってたみたいです。
それから、ダイオキシンの話は、
「ちょっとでも悪いものは入っていてほしくない」というなら、母乳のダイオキシンも気にしないと、という意味で書きました。私自身は母乳が危険だとは考えていません。
母乳が出るなら赤ちゃんに最適なのは間違いないので、どんどんあげてほしい。でも足りないとか出ないとか健康やその他の原因で、自前で調達できない人は、無理しないで罪悪感なんて感じないで粉ミルクあげられるといいのにと思っています。

6 ■一愛読者さま

こんにちわ。
>結局エンドユーザーに責任を押し付ける安上がりな善導運動だったということかな。

そうですね~。「健康管理」を自己責任にもっていこう流れを近いかんじのものはかんじます。栄養摂取量の調査っていうのは、階層とかなり関わってくる話だと思うんですが、その関連データがないんですよね・・。あったらぜひ教えてください。

5 ■貝柱さま

すいません。怒らないでくださいね。
>昔から連綿と続く「母乳信仰」も最近強まってる気がします。
「母乳」は教育再生会議で出てて、もちろん「母乳」で教育再生ができたら世話ないんで、義家とかが言うのはやめてくれーってかんじでしたが、母乳自体をWHOが勧告しているのは理由も根拠もあるんです。リスクの高低は「ある」のは確かな話のようです。つまり赤ちゃんの胃のPH度の差なんです。つまり母乳で育てられる人は育ててあげたほうがいいと思うし、そういう環境を整えてあげるのはやってあげたほうがいいかなと思います。人工乳の方を批判している話ではないんですがね・・。

>今の日本人の母乳には大抵微量のダイオキシンが含まれてますから、粉ミルクのほうが「安全」だと思うんですけどね。
実は「この母乳のダイオキシン」のほうが困ったものだなと思っています。日本のダイオキシンは「昔の農薬」が原因で、もう心配しなくていいレベルの話のようです。これは「ダイオキシン 神話の終焉」(渡辺正)さんをお読みいただければ幸いです。

そのあたりの話は今記事を用意しているので、またお知らせしますね。

>モラルの問題として広まっているのがどうにもやりきれません。
これはそのとおりだと思います。

4 ■科学とモラルが対立している?

こんにちは。
拡大解釈かもしれませんけど、昔から連綿と続く「母乳信仰」も最近強まってる気がします。
私自身はほぼ100パーセント粉ミルク育ちですけど、特に不具合はないので、嫌な流れだなぁと思います。
食の安全とか言うなら、今の日本人の母乳には大抵微量のダイオキシンが含まれてますから、粉ミルクのほうが「安全」だと思うんですけどね。
母乳の成分とか栄養の問題ではなくて、母子のコミュニケーションがどうとか説教されたりもしますが、別にそれは授乳じゃなくてもいいはずだし。
食育も母乳信仰みたいにモラルの問題として広まっているのがどうにもやりきれません。

3 ■無題

考えてみると、食育が声高に叫ばれながら家庭科教員や栄養教諭の新規採用は遅々として進んでませんね。
結局エンドユーザーに責任を押し付ける安上がりな善導運動だったということかな。(食育を推進する与党の政治家が給食調理員の賃金が高いとわめいてるしなぁ。)

2 ■e-takeuchiさま

こんにちわ。そうですね。「食育」すすめてる人には「給食」アンチの人もいるようですね。それでここでも小泉さんなんですよね。私が「食育」が気になるのは、給食費未納とかの話とくっつきやすいのと、自己責任の「健康維持」みたいな話とすぐくっつくのと、「食育」の教え方そのものが、「漢字の成り立ち」からキャッチーに教えるみたいな「言葉」先行のところがあって、結果的にエセっぽいんですよね。・・・で「そんな目くじら立てることなの?」系の話なので、余計違和感や違う意見が出しずらいという気はします(そういうもののほうが危険だと思う)。そもそも「食育」って言い出した人の考え方やその考え方の方向性みることで、その人みたいにぶっとび過ぎないようにしたほうがいいかと思います。あとあんまりいいたくないですが、戦前も米ブームとかあって、内に閉じこもっていく流れとかでございました。

1 ■知らなかった

食育基本法なんて初めて知りました。そうか、それで、弁当つくれとか、わけのわからないことをあちこちで言い出したのかぁ。法律斜め読みしましたけど、こんなこと書いてて笑い出さなかったのかな?

コメント投稿

AD

Amebaおすすめキーワード

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

ランキング

  • 総合
  • 新登場
  • 急上昇
  • トレンド

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。