「机上の空論」ならぬ、「議場の空論」 | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

「机上の空論」ならぬ、「議場の空論」

 先のエントリーの続きです。少年犯罪厳罰化 私はこう考える から山本譲司さんの論考の部分から抜粋します。

----引用

この年の(2000年)の5月衆議院議員だった私は、自民党から共産党まで含め全党が共同で提出したある決議案に民主党所属の議員の一員として賛成していたのだ。決議案の名称は「少年非行対策に関する件」。内容は次の通りである。

 『少年による深刻な凶悪事件が後を絶たず、憂慮すべき状況にあって、時代を担う少年の責任感と自立心が醸成され、その健全育成が図られるとともに国民が安心して暮らせる社会を創り出すことが喫緊の国民的課題である。(以下略)』

レアな「凶悪」な少年犯罪で行政動いてますよね。結果、今「安心」な状況になってます? 「不審者対策」とかで社会は余計不安になってません?
 服役する前(秘書給与流用事件)は自身のことは棚に上げ、「刑務所にはどんな悪党がいるのか」と戦々恐々としていたことを思い出す。入所時は、そんな気持ちを払拭すべき、何とか自分を奮いたたせ、刑務所の門をくぐったのであった。
 ところが入所してみると、塀の中の実態は想像していたものとはまったくちがった。拍子抜け、と言っていいかもしれない。

 どう拍子抜けかというと・・・
 驚くことに、障害のある受刑者が医療刑務所ではなく、一般刑務所にも数多く入所していたのだ。
 失禁者が後を絶たず、受刑者仲間の下の世話に追われるような毎日だった。当初は彼ら障害を抱えた受刑者への接し方がわからず、戸惑いを感じる日々が続いていた。コミュニケーションをとることすら困難で、自分が今どこに居るのかも理解できていない受刑者もたくさんいる。

 そして以下のこんな会話が刑務所のなかの受刑者の日常会話・・・orz

 「おいおまえ、先生(刑務官のこと)のいうことを聞かないと、そのうち刑務所にぶち込まれるぞ」

 そういう受刑者仲間に言われた受刑者が真顔でこう答える。

 「僕、刑務所なんて、絶対にいやだ。ずっとここに置いておいてくれ」

  この会話を横で聞く刑務官が幼稚園の先生のようなやさしい口調で注意する、

 「作業中におしゃべりしたり立ち上がったりしちゃー、いけませんよー。もう少しで作業時間は終わりですから、それまで我慢しましょーねー」
 悲しいかな、これが私が収監されていた刑務所における日常風景なのだ。

 ここは裁かれた罪人が「罪」を償い、「更生」する場所なのである。にもかかわらず、実際には罪を受けていることさえ理解していない受刑者が多数存在していたのだ。
 刑務官たちも、彼ら障害を抱える受刑者たちの処遇には随分と苦慮していたように思う。そばで見ていて、気の毒なくらいであった。

 そして少年院と少年刑務所の処遇の詳細が出てくるんですが・・・そこは本書をぜひお読みください。
 その最後が実は私は一番驚きました。

 教育経費(1日1人あたり)は刑務所の14円に対して少年院は148円というように10倍以上開きがあるのだ。これでは、更生教育の効果にもかなりの差が出てくるのではないか。

 148円でも少ないと思うんだけど、14円ってねえ・・、犬に「お手」も教えられないよー。楽天でペット用のジャーキーの値段調べたら、こんなコピーがあったよお。

 「超小型犬におすすめ!43本入 1本あたり約46円!柔らかく消化吸収が良くなりました! 」

 あのう・・・ジャーキー1本分より少ないんだけど。

せめてさー犬よりはお金かけようよー。そんなお金しか使えないのに日本の刑務所は世界一治安いいんだけど。きっと刑務官の方たちの並々ならぬ努力の成果と士気が高いからなんでないの?再犯があったからってその再犯の状況をまったく調べもせずに「更正がなってない!日本の刑務所って矯正がなってない」とか責められます??私はできんよ。そして山本さんは最後にこのように〆ます。・・・山本さんみたいな人が議員に「再チャレンジ」してくれたほうがいいなーと思います。

正直に言うと、議員時代の私は、こうした矯正施設の実態をまったくわかりもせずに、一部マスコミの厳罰論に押され、十六歳以上の少年の原則逆送を検討すべき、と考えていた時期もあった。まさに「机上の空論」ならぬ、「議場の空論」である。

----引用


◎以前掲載した山本譲司さんと浜井浩一先生の「論座」の対談はこちら

http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10022033872.html

http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10022205582.html