昨年4月クールにテレビ東京系で放送されるが、平均視聴率2%という散々な結果。
しかし、その質の高さは評価され、


月間ギャラクシー賞を受賞


「家政婦のミタ」ですっかり有名になった長谷川博己が主人公ということで、今後口コミで評価が上がっていくタイプの作品だと思った。
そう、僕がかねてより歴史的最高傑作と評価する、「それでも、生きてゆく」に優るとも劣らない。

この作品も僭越ながら採点させていただくとするならば、「それ、生き」の100点は揺るがないとしても98点くらいはあげてもいいと思う。
ちなみに、原作はマンガらしい。(タイトルのインパクトの無さは、確かに低視聴率の原因のひとつかもしれないw)

何が素晴らしかったか。
斬新な教師像、少年少女の心の闇について論理的に解決していく過程である。
それは往年の「金八先生」とは全く切り口が異なっており、はっきり言って非現実的な内容ではあるが、現在の教育について強いメッセージを発してると感じ感銘を受けた。


まず、演出も斬新だった。
鈴木先生(長谷川博己)は論理的に物事を考え、その思考の内容をテロップで表示する。
初回あたりはこの演出がコミカルで惹きこまれた。

しかし、ドラマ中盤あたりから、少年少女の深層心理に迫っていく。
ネタバレになっちゃうけど、最も感動したのは第7話。(見る予定がある人はスルーしてねw)


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鈴木先生が現在の教育スタイルに何故なったのか、過去を回想する回なのだが、僕が問題視してほしいとかねてより願っていた部分にスポットを当てており、痛快であった。
交際中の恋人に打ち明ける。

「ある女生徒の出会いが、僕を変えてくれたんだ」

鈴木先生は語る。

「今の教育においては、手のかからない生徒の摩耗(すり減らし)の上に支えられてるのが現状だ。教師は結局、目立った生徒に対して時間を割かざるを得ない。」

その女生徒は、何も問題もない普通の生徒。
掃除当番を班で任されるのだが、他の4人は事情があり掃除をサボっていた。
真面目に掃除をしていたのは彼女だけ。

当時新米教師だった鈴木先生は彼女の苦しみに気づかない。
一人になった彼女は「私、帰ってもいいんだよね」と自分を納得させ帰ろうとする。
そこに先生が現れ、

「悪いな、早く片付けてしまおう」

鈴木先生はそれが重大なミスだったと語る。
その日を境に、彼女は美しくなり、まさに優等生を演じるようになった。
ある種の諦めの境地へと。

彼女はこう言ってほしかったんだ、と。


「帰ってもいいよ。」


こっからは僕の私見。
摩耗という言葉を知らなかったのだが、まさにこのドラマの発している通り。
問題のある生徒は気持ちを何らかの形で発散させているが、摩耗に摩耗を重ねる生徒は気持ちの吐き出し場所を失っていく。
この苦しみがいかに大きなものか、そしてそれに手を差し伸べるのが難しい教育の現状、傍から見て問題のない生徒の心の闇が透けてみえる。

その女生徒はその後どうなったか、それはドラマを見てのお楽しみ(笑)


さらに言えば、最終回も圧巻だった。
詳しい内容の言及は避けるが、

「一つの価値観に縛られ他者を非難し自らを正当化する者がなんと多いことか。」

多様性の時代と言われているが、お互いをわかりあえる道もあるのではないだろうか、と必死で訴えていた。
生徒の議論も素晴らしい。
鈴木先生の論理的な言動を理解し、高みの議論を交わしていく。
(非現実だと感じるのは、出演生徒がみんな頭が良く、中学生にしてはあり得ないほどの高度な議論を交わしている点)
この圧巻の議論については、鈴木先生の教育方法のひとつの成果であったと考える。

しかし、鈴木先生のいう通り、実際の教育現場ではあのような指導方法は不可能といってもいい。
問題のある生徒にばかり時間を割かれ教師は疲弊し精神疾患による休職者が急増、まさに手のかからない生徒に支えられているのが現状というのはその通りだと思う。
でも、全ての生徒に対し「何らかの鬱屈した感情を持っているに違いない」という発想は、私たち大人は持っていた方がいいのではないかと感じた。
(だからこそ、僕は芦田愛菜ちゃんブームに違和感を感じているのだ。)


ちなみに、映画「告白」に出演している少年2人も出演しています。(少年Bが声変わりしてるじゃないのw!!)
第4話はその少年Bこと竹地がぶっ壊れるシーンがあって見てて少し苦しいところはあるが、まぁ辛いのはそこだけ。


エンディングテーマは尾崎豊「僕が僕であるために」の馬場俊英カバー。
何故この曲をチョイスしたのか、最初はわからなかったのだが最終回まで見終えた今、これ以外にあり得なかったのでは、とさえ思うようになった。


心すれちがう悲しい生きざまにため息もらしていた


まさに、最終的にこのドラマが伝えたかったことそのもののような気がした。
とにかく、ギャラクシー賞は本当に信頼でき、期待を裏切らない素晴らしいドラマであったことは重ねて主張し、おすすめしたい。

従来の学園ドラマについて、「こんなにうまくいくはずがない」と懐疑的な見方をしている方にとっては、非常に痛快なドラマだと思います。
だって、誰も答えを教えてくれない、それが学校だ、というキャッチフレーズなのですから。。。


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