1950年代からインテリアデザイナーとしてキャリアをスタートし、夫と設立したテキスタイル会社も、ジャクリーン・ケネディや歴代大統領からホワイトハウスの装飾を任されるまでの成功を収めます。2005年、84歳の時にファッション・コレクションの展覧会がメトロポリタン美術館で開催され、驚異的な動員数を記録。それ以来、業界内だけでなく、広く一般にその存在を知らるようになり、「KATE SPADE」の広告モデルや化粧品「M・A・C」のミューズも務め、人気アニメ「シンプソンズ」にキャラクターとして登場するなど、大きなメガネとアクセサリーがトレードマークのファッションアイコンとなります。94歳になる彼女の魅力に迫ったドキュメンタリー作品。

私が、アイリスの存在を初めて知ったのは「ビル・カニンガム&ニューヨーク」というドキュメンタリー映画を観た時でした。独特のスタイルが印象に残っています。

アイリス・アプフェルは、1921年8月29日生まれとのこと。とても94歳とは思えないパワーと多忙な日々を乗り切るエネルギーに圧倒されます。様々な素材の組み合わせながら、新たな魅力を生み出していくという創造的な活動を続けていることが刺激となっているのかもしれませんが、なかなかできることではありません。

作中で、骨折して入院したというエピソードも登場しますが、高齢者にとって骨折は、急に衰えるきっかけとなりやすいこと。そんなことがあっても、精力的な活動を続けているというのは、まさに奇跡。そんな姿を収めているというだけでも、本作は存在する価値があると言えるでしょう。

アイリスは値段やブランドなどに頓着しません。有名ブランドの高級品も、雑貨店などで売られている子どものおもちゃのような安いものも、彼女の独特のセンスにより組み合わされ、新たな命が吹き込まれていきます。なかなか思いつかないようなコーディネートでありながら、組み合わされた状態を見せられると、そう合わせられるように作られたのかもしれないとさえ思わされてしまう説得力。アイリスの世界に惹き込まれました。

本作は、アイリスのファッションに対する考え方、人生観、生活のあり方、夫との関係などを丁寧に追い、彼女の人生そのものを浮かび上がらせながら、彼女のファッションセンスの背景にあるものに迫っていきます。その長いキャリアは、とても80分という時間で描きいれるものではないと思いますが、上手くエッセンスを取り出して纏められていると思います。

本作にも登場する夫、カールは、2015年8月1日、101歳の誕生日を前にうっ血性心不全で亡くなったそうです。エネルギッシュなアイリスと較べてしまうと年齢を感じてしまいましたが、それでも、とても100歳とは思えない若々しさでした。作中でもユーモラスな遣り取りが繰り返され、仲の良さが伝わってきたオシドリ夫婦な2人。その後のアイリスは、大丈夫なのかどうか...。

やはり、ニューヨークにいるファッショナブルな高齢女性を取り上げた「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」というドキュメンタリーをDVDで観て、その感想をここにも書きましたが、そこで取り上げられていた7人にアイリス・アプフェルは入っていませんでした。こうした人材がまだまだいるのかもしれません。さすが、ニューヨーク!!年齢を重ねて、こうした生き方を楽しめるのは、自由で豊かな社会だからこそ。その価値の大きさを理解し、大切にしなければならないのだと思います。

こんな風に歳を重ねることができたら...と自分の目標にするには、あまりに、パワフルで、気後れがしてしまうのですが、せめて、老いを理由に人生を諦めてしまうことのないようにしたいものです。

観て良かったです。お勧め。


公式サイト
http://irisapfel-movie.jp/


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