アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生 [DVD]/ドキュメンタリー映画
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ニューヨークの街角のオシャレな60代以上の女性たちを写真に収めたファッション・ブログ"アドバンスト・スタイル"は、シニア層にターゲット絞ったコンセプトと、その個性的なスタイルが評判を呼び、ファッション業界でも大きな話題となります。その"アドバンスト・スタイル"に登場する7人の女性たちに密着したドキュメンタリー作品。

ジボラ・サラモン、62歳。自転車でマンハッタンを駆け回っています。
ジョイス・カルパティ、80歳。アッパーウエストサイドの有名ブティックのオーナー。
リン・デル、79歳。マンハッタン、アッパー・イースト・サイドで40年以上も続くブティックのオーナー兼デザイナー。
デブラ・ラポポート、67歳。リサイクル素材を多用するファッションで有名。帽子デザイナーでパフォーマー。
イロナ・ロイス・スミスキン、93歳。ウエスト・ビレッジに住むアーティスト。
ゼルダ・カプラン、95歳。ニューヨーク社交界で一目置かれる存在。
ジャッキー・タジャー・ムルドック、81歳。アポロシアター出身のダンサー。2012年秋、ランバンのキャンペーン・モデルに選ばれる。
ゼルダ・カプラン、95歳。ニューヨーク社交界のファッションアイコン。ファッション業界やアート業界のご意見番的存在。


成長期を終えれば、あとは、死に向かっていくだけ。まぁ、生きとし生けるものは、基本的に、生まれ出た時から、いつか死ぬことだけは決定しているわけですが...。徐々に、見えにくくなり、聞き取りにくくなり、覚えられなくなり、理解できなくなり、動けなくなり...。視力、聴力、記憶力、理解力、運動能力...。死に向けて多くのものを失っていきます。

けれど、失うことで得られるものもあるのかもしれません。余計なことに気付かなくなったり、忘れたりする分、細かいことに拘らずに済み、大胆にもなれるかもしれません。ヘンなプライドを失うことで、新しい世界に足を踏み入れることができたり、思い切り自分を表現できたりするのかもしれません。良い意味で(時には、悪い意味で)、自由になれるのかもしれません。そして、多くの経験に支えられるからこそ、本当の意味で自信を持てるのかもしれません。

本作に登場する7人は、いずれも、歳を取っても、というより、年齢を重ねたからこそ、人生に厚みを増し、より強い輝きを身に纏っているように思えました。老いれば容姿も衰えると考えがちですが、その気になれば、皺やシミもチャーミングポイントにできることに気付かされます。まぁ、もちろん、そこにも、何らかの"アンチ・エイジング"的な努力はあるのでしょうけれど、大切なのは、単に年齢を重ねることに抵抗して老いに勝負を挑むのではなく、年齢とか老化というものを気にし過ぎず、否定せず、自身の歴史と共に受け入れるということなのかもしれません。年齢も、年齢を重ねる中で身に着けてきたことも、全てが自分自身の中にあるわけで、そこを否定しながら、本当の意味で人として輝くことはできないのでしょうから。

ちょっとどうかと思うようなセンスの方もいらしたりはしましたが、自信を持って自分のスタイルを貫く姿には、独特の美しさが感じれましたし、見ていて幸せな気持ちになることができました。ファッションというのは、人目を引くためとか、モテるためとかいうことでなく、自分のためのものとなった時にアートになり、哲学になり、人生そのものになるのかもしれません。

年齢を重ねた後にある時間を自分らしくあることができたら、それは、かなり幸せなことだと思います。こんな風に歳を取っていきたいものです。

多くの人たちにとっての道標となるような作品。お勧めです。


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