ブラック・スワン [DVD]/ナタリー・ポートマン,ヴァンサン・カッセル,ミラ・クニス
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ニューヨーク・シティ・バレエ団では、「白鳥の湖」の公演を行うことを決定。芸術監督、ルロイの意向で、純真な白鳥と邪悪な黒鳥を同じダンサーが演じることになります。その才能を評価されてきたソリストのニナは、白鳥の踊りについてはルロイからも好評化を受けていましたが、黒鳥はできないと彼が求める黒鳥の妖艶さは表現できないと指摘されます。けれど、積極的な売り込みのかいもあり、「白鳥の湖」のプリマを勝ち取ります。稽古が始まり、強いプレッシャーを感じるようになったニナは、次第に追い詰められ...。


まぁ、どこかで聞いたようなストーリーで、観たような作品ではあります。


ニナも、こんなに弱くて、どうやってここまでやってこれたのだろうという気もします。役を欲しいとロイに迫る強さとプレッシャーに押しつぶされ自滅していく弱さ。この辺りのバランスの悪さも、「ローザンヌなどで賞を取って初めて一流のバレエ団に入ってそれまでとは違った世界でプレッシャーを感じる」というような設定ならわかるのですが、仮にも、世界的にも有名なバレエ団でソリストやってきたのですからねぇ...。いくら、初めてのプリマで、自分の中にないようなものを求められているとはいえ、ここまでといのは、違和感ありました。本作が似ていると指摘されている今敏監督の「パーフェクトブルー 」は、アイドルから女優への転身でしたから、納得できたのですが...。


そして、肝心の舞台。黒鳥の踊りは大成功という設定のようですが、あれが"妖艶"なのでしょうか...。どちらかというと、"鬼気迫る"というか"ホラー"な感じを受けましたが...。王子は、黒鳥に魅入られるというより、怖くて逃げられなくなるのではないかと...。愛をもって人を支配するのも、恐怖によって人を支配するのも、そうたいして変わりはしないってことなのでしょうか...。


弱々しさを感じさせていたニナが、その弱さゆえに、コワ~イ女になってしまうという展開。「(男は)強くなければ生きられない」という言葉もありましたが、女だって生きるために強さは必要。こうした弱さは、自分自身を追い詰めて傷つけてしまうということなのでしょう。


本作に登場する女たち。ニナの母もベスも怖かったです。過去を栄光から離れ引退を迫られるベス。ニナに依存しながらも支配したい母。2人の心の中にも不安と恐怖があったのでしょう。そして、ニナの妄想に現れるリリー。このリリーの本心がどこにあるのか、どこまでがリリーの事実で、どこからがニナの妄想なのか...。ここは、もうちょっとコワ~~~くして欲しかった感じがします。妄想の部分にやや違和感があり、現実味が薄れているために、少々、はくりょっくに欠けたような...。リリーがニナの家に泊まるシーンも、外泊の方が現実と妄想の境を曖昧にしたと思うのですが...。


ラストのバレエの舞台も、もっとバレエとしての迫力が欲しかったです。何もあえてバレエを題材にする必要はなかったような...。演劇とか映画とか、女優として役柄が設定されていれば、作品としての迫力が増したのではないかと思います。それでは、"「パーフェクトブルー」実写版"になってしまうってことでしょうか...。



ブラック・スワン@ぴあ映画生活