パーフェクトブルー 【初回限定版】 [DVD]/梁田清之,辻親八,古川恵実子
¥6,300
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アイドルグループを脱退し、女優に転身した未麻は、過激なグラビア撮影や、ドラマの仕事に戸惑いを隠せませんでしたが、それでも、必死に、女優への道を歩もうとしていました。ところが、そんな彼女の姿が許せないアイドル時代の熱狂的なファンもいた様子。彼女の周辺で、ストーカー紛いのファンによると思われる過激な事件が起こるようになり...。


芸能界の内幕とか、アイドルの扱われ方とか、アイドルのその後とか、熱狂的なファンの狂気とか、いかにもな要素が盛り込まれ、ちょっとした業界の裏側曝露物的な興味も惹かれる作品です。


けれど、何より、かなり、本格的なサイコホラー作品で、スリルに満ち、ドキドキハラハラで、最後まで作品の世界に引き込まれました。


現実か、妄想か、夢か...。現実と非現実の境目が曖昧になり、自分が見ているはずの世界が足元から揺らぐような不安感と怖さが迫ってきます。


アイドルから女優への脱皮。その過程で、アイドルだった未麻と女優になろうとする未麻の間に裂け目が生じていく。不安定になる未麻の精神状態。アイドルの座を失い、けれど、まだ女優としての成功は手に入れられない不安。全く違う道への方向転換は、彼女の中に大きな葛藤を生みます。


そして、やがて、現実を知った時、自分を取り戻す未麻。


未麻が現実を取り戻した時、彼女を悩ませていた幻覚の中の未麻の本当の姿を知ることになります。幻覚の中の未麻の真の姿が明らかになる場面。現実と鏡像との入れ替わりが、未麻が自分を失い、取り戻していく過程を表現しているのでしょう。


トラックに惹かれそうになる場面が2回。最初の場面の後、未麻の幻覚が本格化し、2回目の場面で、現実を取り戻す。この辺りの構成も見事だと思います。


未麻がルミに追われるクライマックスシーンなど、アニメならではの表現になっていて、迫力がありました。


かなりエロだったり、グロだったりする場面も多く、ドロドロした感じが続く作品ですが、ラストでは、大きな壁を乗り越えた未麻が、成長し、成功した姿を見ることができ、清々しい気持ちで観終えることができました。


本作の制作が1998年。作中に登場するインターネット関連の部分とか、ストーカー関係の部分は、時代を感じさせられますが、それでも、今でも十分に見応えのある作品となっています。一度は観ておきたい作品だと思います。



パーフェクトブルー@ぴあ映画生活