1656年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(短編)を受賞した作品です。不朽の名作と言われながら、公開される機会も少ない作品でしたが、権利問題が解決し、デジタル・リマスターされ、甦りました。同じアルベール・ラモリス監督の作品で、昨日、感想を書いた「白い馬 」も併せて上映されています。


1950年代のパリ。少年、パスカルは、街灯に結ばれた赤い風船を見つけます。パスカルは、街灯によじ登って風船を手に取ります。どうやら、その風船は、意思を持っている様子。パスカルになついたようで、手を放しても後をついてきます。ある日、パスカルと風船の仲のよさを妬んだ子どもたちがパスカルと風船を追いかけてきて...。


風船の演技(?)が見事。普通、私たちが思い浮かべる風船の形より、ずっと完全な球体に近い感じで、色が艶やかで、いかにも特別な存在であるという感じが出ています。そして、どうやって撮ったのか不思議な風船の動き。生きているとしか思えないような風船の気持ち(?)を上手く表現する動きでした。


全体に色調が抑えられた映像の中を躍動する真っ赤な風船。その鮮やかさが印象に残ります。そして、時に、風船の動きはコミカルで笑いを誘い、時に、少年と通わせる心(?)の動きが微妙な揺れを伴い胸を打ちます。


セリフも少なく、ほとんど映像だけで語られる物語。シンプルなストーリーではありますが、決して、ありふれた展開ではなく、友情、嫉妬、喜び、切なさ...といったものが感じられ、短い作品ながら、深い味わいが感じられます。


ラストシーンも綺麗で印象的。風船が、それまでの赤い風船と違って、ありきたりのものになってしまうのは残念ですが、その数を考えれば致し方ないところかもしれません。誰もが一度は、こんなことをしてみたいと夢みたことがあるかもしれません。そんな幼き日を思い起こさせ、懐かしさが湧き上がってくると同時に、そんな日々を失ってしまった現在の寂しさも思わされます。


「白い馬」以上に、50年以上前の作品とは思えない瑞々しさが感じられる作品でした。少々、苦味も効いていますが、ファンタジックで心温まる作品です。なかなか良かったです。



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赤い風船@映画生活



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