1953年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品。1956年の同映画祭でパルム・ドール(短編)を受賞した「赤い風船」のアルベール・ラモリス監督作品。名作との評価を得ながら、見る機会が限られていた「赤い風船」でしたが、長年の権利問題が解決し、デジタル・リマスターにより甦り、この度、公開されることになり、それに併せて上映されることになった作品。


南フランス、カマルグ湿地帯には、野生馬の一群が生息していました。その群を率いるリーダーは"白いたてがみ"と呼ばれる美しく荒々しい馬。地元の人間たちは、その馬を何とかして捕らえようとしていました。しかし、少年、フォルコだけは、"白いたてがみ"と心を通わせるようになり、次第に強い絆で結ばれるようになり...。


何といっても、馬の演技が見事。馬という生き物が、こんな風に演技することの出来る生き物だったのかと、そのことに一番驚かされます。特に、新旧のボスが闘うシーンなどは圧巻。馬を扱った映画作品の中でも出色と言っていい名場面だと思います。


馬が少年を引き摺るシーンにしても、少年が鞍も何もつけていない馬にまたがって走るシーンにしても、どうやってそんな場面が取れたのか不思議な程に見事な馬と人の、まさに、一体となった演技は、見応えあります。


ただ、残念なのは、モノクロの映像で、"白いたてがみ"の白さが際立たなかったこと。折角なら、他の馬をもっと色の濃い馬でかためて欲しかったところ。馬の一群を見ながら、「どれが、"白いたてがみ"?」と思ってしまう場面もありました。


半世紀以上も前に製作されたモノクロの古い映画ですが、とても、瑞々しく躍動感に溢れた作品でした。


ラストもありがちな単純なハッピー・エンドではなく、これもまた、印象的な一抹の哀しさ、切なさを含んだ美しいシーンで余韻を残しています。


セリフもほとんどなく、全体的には静かなトーンの作品です。迫力のある場面も挟み込まれますが、短い作品ではあっても、その中に馬の走るシーンの割合は高く、やや、単調な感じもして、馬に興味を持てなければ、少々、退屈かもしれません。馬が走る映像を楽しめるかどうかで、本作の好き嫌いが分かれるのでしょうね。


馬の好きな人にはお勧め。



公式HP

http://ballon.cinemacafe.net/



白い馬@映画生活