こんにちは。
随分と疲れた顔をしているから、
適当に選んだ人間の心情を、私が披露してあげるわ。
いいえ、
選択に私の意図なんか反映させていないわ。
本当にその辺の普通の人間の心情よ。
ただ、
本人すら忘れていることかもしれないけど…
…………
『あの人の死に対して、僕は無力だった。
大勢の医師が彼女を取り囲んで生かすことに必死になっていたけど、
僕には何もできない。
無力で惨めで情けない。
もう何もいらない。
忙しくして生きる意味すら考えなくていい毎日だけでいい。
だから、いくらでも耐えることが出来る。
すべて夢の中で起こっているようなものだ。
悔しくも哀しくもない。
この敗北は。
この誤解は。
この不理解は…』
…………
ごく普通の人間の、ごく当たり前の心情よ。
珍しくも特別でもない。
あらゆる人間が、
不安や恐怖を抱えている。
嫉妬や妬み、自己顕示や焦燥…
どういう形で表現されようとも、
生きている限りそこから逃れることはできないわ。
だからこそ、
笑い、
騒ぎ、
飲み、
語り、
遊び、
逃れ、
求め、
溺れ、
塞ぎ、
泣き……
人は、ただ生きるの。
そこで、
あなた。
あなたは、
すぐ隣にいて身内でもない、
何にも考えてなさそうに見えるその人が、
そうした心情を抱え、
悩み葛藤しながら懸命に生きている…
そう考えたことはある?
そこに共感を寄せることが、
あなた自身を解放してくれるわ。
にもかかわらず、
表現を恐れ、
自らの内なる声にばかり耳を傾けるのなら、
ねえ、
お願い…
ここから出て行ってくれる?