ヘモグロビン系人工酸素運搬体による乳酸測定妨害~~
Lactate measurement interference by hemoglobin-based oxygen carriers (Oxyglobin, Hemopure, and Hemolink).
Anesth Analg. 2005 Feb;100(2):431-6.
ヘモグロビン系の人工酸素運搬体(牛のHb:HBOC200・HBOC201、Hemolink)が乳酸測定を阻害するかどうかを検討。
結論
HBOCは血漿乳酸測定値を増加させる傾向があり不正確になる。
なので、HBOCが血漿中にある時にはその解釈に注意が必要。
ひーさんの感想・考え
これは、結構昔から言われていてこの前にも報告があったと思います。
ヘモグロビン系の人工酸素運搬体・・・・世界的な研究や臨床応用(医学)で考えると今は日本が一歩進んでるような感じがします。早稲田のグループ、テルモのグループ。しかも、保存も結構長期間効くので動物病院でも使用できる可能性もあると思ってます。今後に期待!
19匹のニャンコの原発性免疫介在性溶血性貧血
【Primary immune-mediated hemolytic anemia in 19 cats: diagnosis, therapy, and outcome (1998-2004).】
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):159-66.
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は犬よりも猫の方がその発生頻度は低いです。
クームス試験(CT)結果には疑問がありますが、この試験を詳細に調査した報告はありません。
目的:p(原発性)IMHAの19匹のニャンコを対象にし、直接CT試験を検査
CT試験は92匹のニャンコに実施。
健康(5匹)、病気だけど非貧血(9匹)、異なるタイプの貧血(55匹)の子では陰性。
CT試験は18匹の猫で陽性(うち、2匹がFeLV陽性、1匹は胆肝炎、15匹には基礎疾患なし)。
さらに、5匹の貧血の猫(1匹はリンパ腫、4匹はpIMHA)で生食洗浄後の凝集あり。
pIMHAは他の疾患を除外し、CT(15匹)または凝集(4匹)のあった子。
この19匹の猫は、0.5~9歳(中央値2歳)。雄が多かった。
PCVは6-22%(中央値12%)。11匹が再生不良性貧血。他には13匹で高Bil血症、10匹で高Glb血症、10匹で肝酵素上昇などなど。
初期治療は、10匹で輸血、11匹でクリスタロイド投与、19匹でプレドニゾロン、19匹で抗生物質、11匹でH2ブロッカー。
4匹が9、63、240、2160日で安楽死(死亡率は23.5%)。
他の報告では死亡率は31%。
結論
CTは猫のIMHAでも有用でっす。
ひーさんの感想・考え
IMHAに対する初期治療はこの5つが主。これに加えて、○○や△△を加えるというのも(昔のカレコンに記載)。
なので、本文を読んで他にどのような治療をしていたかを確認しまっす。
やはり、同じ病気でも、施設や先生が違えば、考え方や薬などもの選択やタイミングも違いますね。
ちなみに、猫の方が犬よりも貧血に強いですし、男の子よりも女の子の方が貧血に強いです。
ではでは。
2匹のニャンコの外水頭症の報告(症例報告)
NYの民間二次診療施設からの報告(症例報告)
【External hydrocephalus in two cats.】
J Am Anim Hosp Assoc. 2003 Nov-Dec;39(6):567-72外水頭症の2匹のニャンコ。
MRIやCTで診断しました。泉門の開口はなし。
VPシャント(簡単に書くと、頭にたまってる水をチューブ設置により腹腔へ排出)を施行し、術後急激に改善。
このニャンコたちは、術後42ヶ月、8ヶ月時点でも元気っす。
ひーさんの考え・感想
この雑誌はひーさんの施設からはダウンロードできませんが、非常に好きな雑誌の一つです(カラー写真が多いので)。
また民間からの報告というのも非常に良いと思います。
ニャンコの水頭症(内と外)はワンコと比較すると非常に少ないですが、ワンコ同様VPシャントが有効です。
ということで、やはり内科的なもの以外にも外科的な方法も選択肢の一つとして入れるべきです。
使用するVPシャントのチューブは、小児用(獣医領域では結構小児用のものを使用する領域があります)っす(ひーさんの経験上)。VPシャントに関しては日本の動物病院でも実施している施設が結構あります。手術を施行するタイミングは施設や先生の考え方によるかと思います。
3種免疫抑制剤を使用した15匹の腎移植を実施したワンコの臨床成績
【Results of clinical renal transplantation in 15 dogs using triple drug immunosuppressive therapy.】
Vet Surg. 2006 Feb;35(2):105-12腎移植を実施したワンコに対しサイクロスポリン・アザチオプリン・プレドニゾロンを投与(Prospective)。
腎移植を実施したワンコは全員慢性腎不全の子。
結果
手術後1ヶ月以内に9匹のワンコが死亡(うち5匹は合併症の一つである血栓塞栓症に起因)。
3匹のワンコは6~25ヶ月生存。
他の3匹のワンコはこの報告を書いてる時点では生存(22~48ヶ月)してますが、3匹とも細菌感染により抗生物質による治療を受けている。
15匹とも急性拒絶反応はありませんでした(生化による評価)。
術前のエノキサパリン投与は5匹で血栓塞栓症を予防したかも?
結論
書かないでおきます。
ひーさんの考え
う~~んと。これも全文をダウンロードし読んでみます。年齢は?術前のCre・GFR・BUNなどの値は?透析実施は?
等等。今回の報告では15匹9匹1ヶ月以内に死亡してます(=60%)し、これはなかなか治療の選択肢に入れるのは・・・確かに腎移植は最終手段なのですが・・・・。やはり全文を読まないと何とも・・・・。
では。
DEA適合犬における同種腎移植後のカペシタビン
【Use of capecitabine after renal allograft transplantation in dog erythrocyte antigen-matched dogs】Vet Surg. 2006 Feb;35(2):113-24
ウィスコンシンからの報告。
★カペシタビン(CAP)
経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬。移植後の拒絶反応を抑制する目的でも医学領域では使用。
犬の腎移植後のCAPを基本とした治療プロトコールの検討(Prospective)。
DEA適合したワンコ7匹に対し、腎移植を実施。術後、CAP・サイクロスポリン・ケトコナゾール・プレドニゾロン投与(詳しい濃度は本文参照)
7匹のワンコの移植手術は成功(術中に死亡例なし)。
でも6匹で急性の腎毒性(薬による)が起こり、手術後2日以内に2匹は安楽死。
他の子は休薬したら回復。
この5匹に関してはこの研究が終了するまで生存していました。
5匹中、4匹にはグラフト拒絶反応は認められませんでした。Ca濃度上昇以外にはCBCや生化にも変化なし。
結論
CAPに対する治療は可能と考えられるが、術後免疫抑制の効果に関してはこの研究では評価できない。
しかし、このCAP-サイクロープレのプロトコールはDEA適合犬の急性拒絶反応への予防として有効だと考えられる。
用量や毒性などさらに研究が必要であり、臨床使用までには現在の免疫抑制プロトコールとの比較が必要である。
ひーさんの考え
う~~んと、これは前文をダウンロードして読まないと・・・。
ちなみに、拒絶反応には急性拒絶反応と慢性拒絶反応があります(今回は急性?)。腎移植の手術手技は難しいものではありませんので、移植の前のドナー・レシピエントの関係と、虚血・再灌流障害の予防、術後のレシピエントへのケアが重要になると考えてます(graft-host)。
ちなみに、同じ施設から【DEA不適合犬における同種腎移植後のカペシタビン】が報告されています。
Vet Surg. 2007 Jan;36(1):10-20.
で結果は超簡単に書くと有効であったと。
では立て続けに、デービスからの犬の腎移植の臨床結果の報告を・・・
犬のうっ血性心不全におけるイミダプリルの臨床評価
【Clinical evaluation of imidapril in congestive heart failure in dogs: results of the EFFIC study】
J Small Animal Practice Online First
うっ血性心不全を呈した(NYHA II-IV)ワンコに対するイミダプリル(ACEIの一つ)の影響
142匹の飼いワンコ(フランス、ベルギー、ドイツ内の20箇所)
この142匹のワンコを無造作に群分けし、一方にはイミダプリル、もう1つの群にはベナゼプリルを84日間処方。
両方とも、0.25mg・kg SIDで投与。
PE、腹水、SVT、DCMの子に対しては付随的な治療も行っています。
結果は・・・
性別、年齢、病歴などなど各群間には有意差はなし。
イミダプリルが66%、ベナゼプリルが68%、治療前よりもNYHAを改善。
安全性については、各群で少なくとも35ワンコに副作用がありました。また各群9ワンコには重度の副作用がありました。
生存曲線についても、統計学的な有意差は両群間にありませんでした。
結論・・・
イミダプリルはベナゼプリルと同程度の効力・安全性がある。
.
逆に言ってしまうと・・・・かわらないじゃん!
ひーさんの考え
良い事ばっかり書く先生もいっぱいおられますが、このように既存の薬と効果が同程度であった(=かわらないじゃん)とか、悪化したとか、このような臨床試験の報告は非常に有用だと思っています。
筆者も二重盲目試験試験を行うのが適切だと本文に記載してありましたので、それに関してはコメントはなしっす。
すごいな~~と思ったのが、ECVIMといってACVIMと同程度と認識されているとはいえ、フランス、ベルギー、ドイツ・・・と国をまたがって臨床試験が行われたという事がすごいっす。
猫の合指症
【】
J Small Animal Prac Online First
猫の合指症の報告です。
写真などもあった方が良いと思いましたが、さすがにそれは出来ません(ひーさんは全文持ってます)ので、
書くのを辞めました。
同腹の猫ちゃんの合指症でして・・・当然遺伝的な問題が背景にありますので、かわいそうな子が増えないためにも交配させてはいけません。
139例の未治療鼻癌に罹患した犬の生存期間に関与する因子
【Evaluation of factors associated with survival in dogs with untreated nasal carcinomas: 139 cases (1993-2003).】 J Am Vet Med Assoc. 2006 Aug 1;229(3):401-6.
治療を受けてない、または対症療法のみ受けている鼻癌に罹患したワンコの生存期間に関与する因子を評価(Retrospective)。
対象は139匹の組織学的に診断された鼻癌。診断後7日または7日以上生存し、免疫療法・手術・化学療法・放射線療法を行ってないワンコ。
カルテ、CT、バイオプシー検査記録より評価。
結果は、
生存期間の中央値は95日(CI:73-113日、範囲7-1114日)
鼻出血のあった子は、なかった子よりも2.3倍死亡する確率が高かった。
鼻出血のあった子は107人で、生存期間(中央値)は88日(CI:65-106日)
VS
鼻出血のなかった子は32人で、生存期間(中央値)は224日(CI:54-467日)
結果
未治療鼻癌のワンコの予後は非常に悪い!
ひーさんの感想
こういう情報は頭に入れておかないとね~~。頑張りまっす~。
ワンコの肥満とホルモン異常
【Hormonal disturbances associated with obesity in dogs】
Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition 90 (2006) 355–360
肥満の子が多くなってきているので、今回はこの論文を紹介。。。
フランスからの報告。
肥満がいろんなホルモンの変化と関連していることは分かっています。
今回は、コルチゾール、IGF1(インスリン様成長因子)、プロラクチンの測定を肥満犬でどうなってるか検討しました。
★IGF-1
最近の報告では、この成長因子の遺伝子関係により大型犬とか小型犬とかに分かれてる可能性があると言われてます。
肥満のワンコ31人(他に明らかな症状がない~。飼い犬でっす。)。
ACTH注射前後の、fT4、コルチゾール、TSH、IGF1、プロラクチン、フルクトサミンを測定。
結果としては・・・
年齢や避妊・去勢により肥満度が上がる。
でもって。31人中26人はACTH刺激試験は正常。
プロラクチンの上昇は31ワンコ中7ワンコ。
IGF-1の上昇は31ワンコ中6ワンコ。
20ワンコがフルクトサミン濃度が340lmオーバー。
31ワンコ中18ワンコが高TSHまたは低いfT4基礎値のどちらかを示し、31ワンコ中11ワンコが両方示しました。
31ワンコ中6ワンコのみホルモン障害がなかった。
結果からは特に肥満時の甲状腺機能障害の頻度が高かった。
栄養学的な治療(食事療法など)の失敗を避けるためにも肥満犬の初期評価に内分泌機能を検査する事は重要。
ひーさんの感想
論文を読むと・・・・ワンコとなってるだけで、犬種までは記載してなかったんです。
(甲状腺関係のホルモンに罹患しやすい犬種が入ってるとか・・・)
また、肥満のワンコのみを評価(BCS4とBCS5のみ)していますが、やはり肥満でない子との比較もしないといけません(詳しくはEBMのクラス分け、臨床研究デザインなどを読んでみて下さい)。
な・・・の・・・で・・・・今回の報告は【そうかもしれないけど、証拠不十分】とひーさんは思います。
ということで、得に他に症状のない肥満の子で甲状腺関係の病気に罹患しやすいと言われてる犬種に対しては早期発見で行う~~。でも、それ以外はしない~~(するしないは臨床医の判断:甲状腺疾患のものか否か)。と従来どおりひーさんが行っている考え方のままで変更しない予定です。
204匹の犬PDAに対する外科手術とカテーテル治療の比較
【Retrospective comparison of surgical ligation and transarterial catheter occlusion for treatment of patent ductus arteriosus in two hundred and four dogs (1993-2003).】
Vet Surg. 1990 Jan-Feb;19(1):20-3.
コイルと手術の短期成績、死亡率、合併症、手技時間などを比較。
205匹のワンコPDAで外科手術やコイルを実施(PHやRLシャントはなしよ~~:禁忌っす)
結果
年齢、性別、体重、手技時間(約110分前後)には有意差はなかったです。
外科手術の主用な合併症
術中:肺葉切除を実施したもの、重度の出血(動脈管からの)
術後:心停止、呼吸困難(ベンチレーター実施)など
コイルの主用な合併症
術中:出血(股動脈)、出血(Introducer Styletによる)、心停止(麻酔導入時)
術後:エンボリジェーション
これらに関しては、手術が12%で、コイルが4.3%。
でも、他の小さな合併症は、コイルが26%、手術が12%。
初期成功率は手術が94%で、コイルが84%。死亡率には有意差なし。
結論
死亡率の面から考えると、外科手術もコイルもPDA治療の選択肢ですが、
手術は主用な合併症似たいし高リスクだし、コイルは初期成功率は低いし・・・ってことです。
(要するに、選択肢として両方ありだけど、各々良い面、悪い面がある)
ひーさんの考え
う~~ん、この外科手術を行った人が何人で・・・・とか、このコイルを行った人が何人で・・・・・
でもって、その先生方の行った症例を検討すると、もっと分かると思うのですが・・・・・(医学関係の手術関係のRetroのものは執刀医の人数なども記載しないといけない雑誌も結構あります=成績が変わるので)。
つまりですね~~一概にひとくくりでは比較はできませんよね~~。
また今回の報告だと、最終的には飼い主の方と相談の上で決めますが。手術件数が多い施設の場合は恐らく合併症の確立も減少するので手術を第一提示するでしょうし、逆に外科医の経験が少なく、コイルの方が経験数が多い場合にはコイルを第一提示するでしょうし・・・ってね。
ちなみにこれはデービスからの報告ですし、日本の場合ですと、症例数が全然違いますので当然執刀医の経験レベル(手術にしても、コイルにしても)や麻酔医、助手などによっても変わってきますので、あくまで一般論としては受け入れます~