小説の中の戦争と実体験の戦争 | へにょへにょ日記[ゆるゆる田舎暮らしブログ]

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カメラ、写真、本、アート、ペット、犬、家電、料理、ハンドメイド、医療、健康…。なんとなく過ぎてゆく日常のあれこれ。スムースチワワの小太郎と過ごした日々。

小説「永遠の0(ゼロ)」が映画化されてちょっとしたブームになっていますが、今更ながら小説のほうを読んでいるところ。だいぶ前に買ってあったのですけど、その頃はまだ小説に対する批判的なものはあまり出てなくて、泣ける、感動する、っていうレビューが多かったです。なので、ちょっと読んでみようかなぁと買ったまま積ん読になってました。

20140301チワワの小太郎

母が映画を観に行くというので、小説もってるよーと貸してあげ、母のほうが先に小説読んで映画も見たわけですが、純粋にそれなりに感動して、よかったみたいです。私のほうは、積ん読の間に世間で「戦争や特攻を美化してる」とかいうような批判も耳に入ってきて、著者が先日の都知事選でも過激な演説をしたとか、思想的にNHKの理事にはふさわしくないんじゃないかとか、ってニュースを見つつ、なんとなく本を買ったときのワクワク感が薄れてしまってました。

でもねぇ。面白い、感動した、泣けた、っていう人も多くて、戦争を美化なんかしてない、むしろ戦争はいけないと思ったとか、若い人が感想を投書してるとかいう話を聞いて、いろいろ言いたいことが出てきて、読まないで言うのもなんだなと思って、読み始めました。…まだ半分なんですけどもね、面白くて読み進むというよりは、おいおい…って突っ込みながら最後までこの調子なんだろうかと重苦しい気分で読んでます。

わりと、太平洋戦争関連の小説やノンフィクションを読むのは好きなんですけど、この本はあからさまに戦争を賛美はしていないけども、戦争に反対もしていない感じで、読んでいてなんとも言えないもやもや感。つまり、国を守るためには戦うこともいとわず、しかし特攻は無謀な作戦だった、という視点に立ってるような印象です。裏を返せば、戦争するなら勝たなければ意味がない、と言っているような。日本が負けたのは作戦ミスだ、というような。戦争自体が間違いだった、とは言ってないし、作者もそうは思っていないんじゃないか、と。もっとうまくやってたら勝ってたんじゃないの、って言いたげな感じが行間から伝わってきます。いや、あくまで私の印象ですけど。まだ半分しか読んでないし。

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「永遠のゼロ」を読みつつ、思いだしたのが、数年前に見た「TOKKO-特攻-」というドキュメンタリー映画。日系二世のアメリカ人監督と、日本で育ったアメリカ人プロデューサーの二人の女性による作品です。もともと、アメリカで公開されたそうですが、話題になって、日本でも上映され、DVDも発売されています。

知人がこの映画の撮影に関わっていたので、劇場公開されたときに見に行き、そのあとDVDも購入。今日、あらためて本編と、DVDの特典映像を見直して、いい作品だなぁと思いました。賛否両論あるとは思いますが、日本人がつくるドキュメンタリーとは違った視点から特攻とはなんだったのかを問いかけています。

特攻の攻撃によって沈められたアメリカの船の生き残りの兵士たちへのインタビューもあり、アメリカ側から撮影した特攻の攻撃映像もあります。日本では、特攻で散った若者達は悲劇的な印象があるけれど、相手から見たら、死にものぐるいで突撃してくる人間兵器で、その恐怖感は半端ないと思いました。この映像を見るまで、そういうことに思い至らなかったことに自分で衝撃を受けたのを覚えています。

「永遠のゼロ」が2006年刊、この映画が2007年の公開だそうなので、年代的にも同じで、この映画の監督が自分の叔父が特攻の訓練を受けていたことを知ったことがドキュメンタリー制作の動機で、元特攻隊員たちへインタビューしているという形も小説の設定と似ています。「永遠のゼロ」で感動した人も、しなかった人も、実際の特攻隊員たちがどういう風に語っているか、見てもらいたいです。



↑「TOKKO-特攻-」の予告編。「永遠のゼロ」の予告編(公式サイトのTRAILERから見られます)と比べるとおどろおどろしい…。

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「永遠のゼロ」を読み始める前に保阪 正康さんの「あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書」を読んでいたんですが、こちらのほうが開戦に至る経緯から順番に客観的に考察されていて勉強になりました。なので、「永遠のゼロ」で元特攻隊員達が語っている内容がこの本とかぶっていて、ただ単に小説という形で戦争について語りたいだけなのか、この著者は、と思ってしまったのでした。そして、その話に涙する小説の中の登場人物たち。まるで、ここは泣くところ、ここは感動するところ、と指図されているようで、天の邪鬼な私は逆にしらけてしまいました。

「永遠のゼロ」の著者の百田尚樹さんはテレビ業界の出身だそうですが、テレビ番組でスタジオのゲストがVTRを見て涙するとか、観客の笑い声を入れるとか、そういう演出に似てます。でもそのわかりやすさがベストセラーの理由かもしれないとも、思います。

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「永遠のゼロ」にも出てくるラバウルに実際に兵士として行っていた体験を書いた、水木しげるさんの「総員玉砕せよ! 」も紹介しておきます。

「永遠のゼロ」は小説ですし、それぞれの感想があると思います。ただ、別の本も合わせて読んでもらいたいです。どんな作品でも、たとえドキュメンタリーでも、作った人の意図が必ず入ります。だから、ひとつだけじゃなくて、いろいろなものを見て、読んで、自分で考えて欲しいと思います。あ、自分も含めて、やわらか頭で判断できるといいなと思います。

20140301チワワの小太郎