日本の法人税の実効税率は高すぎる?
確か先月放送されていた朝まで生テレビだったと思
うのですが、経済アナリストの森永卓郎さんが、日本の
法人税の実効税率はそれほど高くない、政府の税調も
その事を認めていると主張していました。しかし、その後
他のゲストからそうではないといっせいに反論されて、双
方が相反する主張をする展開となっていました。法人税
の実効税率とは、三つの法人税(法人税と法人事業税
と法人住民税)を勘案して出した理論上の税負担率のこ
とを言います。私の記憶では、森永さんは前にも何度か
この点について主張を展開して周りから違うと批判され
ていたので、実際はどうなのか気になり調べてみました。
そうするとかなり面白い事がわかりました。
財務省のホームページにあるデータによると、09年
の日本の法人税の実効税率は40.69%で、アメリカは
40.75%、フランスは33.33%、ドイツ29.83%、韓
国27.50%、中国25%となっています。アメリカと比べ
れば同じくらいですが、フランスやドイツが30%前後でア
ジアはだいたい20%台なので日本の約40%と言う税率
はかなり高くも見えます。それにEU全体で見ると法人税
の平均税率が26%ぐらいまで下がるので、アメリカと日
本は飛びぬけている事になります。日本はこれまで世界
の流れに従って法人税の税率を下げてきましたが、他の
国とのその差は埋まっておらず、実効税率だけを見てい
ると日本の法人税は高いという事になります。
しかしながら、企業が払っている社会保険料の負担
も合わせて考えると様相が変わります。例えば、ドイツや
フランスの企業は社会保険料の負担が高く、日本並み
かそれ以上の企業負担率になりますし、アメリカは逆に
社会保険料の負担が低いため日本よりも企業負担率が
下がります(法人課税と社会保険料の事業主負担を合
わせてGDP比で比較したデータや各産業における負担
率の比較による)。このように法人税と社会保険料を合
わせた本当の企業負担を比較すると日本の企業の負担
率は国際的に見てそれほど高くないという事がわかりま
す。法人税であろうと社会保険料負担であろうと企業の
負担である事に変わりはありませんから、法人税率だけ
を取って日本の法人税は高すぎて企業の負担となってい
ると言うのは実体を反映していないと思います。
それからもうひとつ、法人税の実効税率について面
白い事がわかりました。それは日本の大企業が実際に
払っている法人税の税率は30%ほどだということです。
例えば、トヨタの実際の実効税率は30.5%ですし、ホ
ンダは32.1%、三菱商事は20.1%、三井物産は11.
4%となっています(平成19年三月期)。どうしてこういっ
た事になるかと言うとそこにはからくりがあり、払わないと
いけない法人税の総額を控除などを活用することで減ら
しているからです。その方法としては、研究開発費の8%
から10%を法人税額から控除できる試験研究費税額控
除や、外国で払った税金を控除できる外国課税額控除、
それに他の法人からの配当金を利益に算入しないで済
む受取配当益金不算入などがあり、企業によっては20
%とか10%台の法人税しか払っていないのです。
また、大企業は租税特別措置などを使って費用にな
らないものを費用と計上して利益を減らし、課税額を減
らしているという指摘もあります。これは各種引き当て金、
準備金などへの措置で減税額はおよそ1.7兆円にもな
るそうです。まあ、控除や租税特別措置には一応目的や
理由があるのですべておかしいとは言い切れませんが、
素人目には大企業は優遇されているように見えます。結
論としては、日本の法人税の実効税率は国際的にはか
なり高いが、保険料負担をあわせた企業負担率はそれ
ほど高いという訳ではなく、大企業に関して言えば、様々
な方法を使って実際よりも低い税率の法人税で済ませて
いる企業が多くあると言えると思います。(法人税に関し
ては経団連が国際競争力を上げるために30%まで下げ
るべきだと主張していますが、実際はそんなに企業負担
が大きい訳ではなく、単に利益をもっと上げたいというだ
けの話ではないかと現在疑っています。)