- D. タメット, 古屋 美登里
- ぼくには数字が風景に見える
サヴァン症候群。
主に記憶など、ある分野について天才的能力を発揮するが、
現実対応力に著しく欠ける病。その疾患を持つ著者の描く真実。
これはなかなか面白かった!
通常、サヴァン症候群のひとは強度の自閉症やアスペルがー症候群を併発し、
他人とのコミニュケーションに相当の困難を持つひとが多いんだけど、
この著者は奇跡的にも、ほぼ普通のコミュニケーションをとることが出来たため、
自伝を書くことが出来た。
サヴァン症候群のひとは、世界をどう感じているのか?
人間の可能性、やさしさ、生き方、なんかも考えさせられる、非常に貴重な本。
歩くスパコンの如き記憶能力、計算能力は、
どうやら、彼が数字をただの記号ではなく、
色や質感なんかを伴った、景色や現象といってもいいものとして認識していることによるらしい。
こういう特殊認識を共感覚と呼び、
どうも、脳の一部の機能が通常のように働かないせいで起きるみたい。
天才的能力はすごいけど、他人とまともにコミュニケーション出来なかったり、
生きていくにはかなりの困難を伴う。
ただ、この作者の場合は、親も、環境も、また本人自身の状態も良かったらしく、
ともだちも作れるし、留学も出来る。
その生き方のくだりは、すごく共感できるし、勇気付けられる。
特にお気に入りのエピソードは、留学するトコかな。
はじめての一人暮らしで、なんでも自分でやらなくちゃいけないんだけど、
頑張って工夫して、友達も作って、楽しんで生きて行ってるところ。
彼の飛び出す勇気や、人生を楽しむこころにすごく勇気付けられる。
困難な病気をかかえ、治療法も特になく、
さらに、ゲイという、マイノリティなのに、自然体で人生を楽しんでいる彼の姿はすごく素敵。
珍しい病気のことを知るのにも、
ひとりのニンゲンの、ナチュラルな強靭さを知るのにもいい1冊。
これは読んでよかった本。