189-閣63 民法改正案【債権関係】  | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

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世の中に必要なものは必要になります。
例え、今は笑われてもです。
限界が来るものについては、捨てなければ生きていけないからです。

第189国会●内閣提出法案第63号
民法の一部を改正する法律案
【内閣提出責任者】上川陽子法務大臣⇒岩城光英法務大臣

●消滅時効
医師の診療に関する債権は三年、飲食店の飲食料に係る債権は一年などとされている短期消滅時効の特例をいずれも廃止して消滅時効の期間の統一化を図るなど、時効に関する規定の整備を行う。

●法定利率
現行の年5%から年3%に引き下げた上で、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入する。

●事業用融資の債務の保証契約
保証人になろうとする者が個人である場合には、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役等である場合などを除き、公証人が保証意思を確認しなければ効力を生じないものとするなど、保証債務に関する規定の整備を行う。

●定型約款
不特定多数の者を相手方とする定型的な取引に使用される定型約款に関し、定型約款によって契約の内容が補充されるための要件を整備するとともに、定型約款を準備した者が取引の相手方の同意を得ることなく定型約款の内容を一方的に変更するための要件等を整備する。

●意思表示
意思能力を有しなかった当事者がした法律行為は無効とすることや、賃貸借契約の終了時に賃借人は賃借物の原状回復義務を負うものの、通常の使用収益によって生じた損耗等についてはその義務の範囲から除かれることなど、確立した判例法理等を明文化する。



▼反対
まず、この改正の中で、国民生活に密接にかかわる家計について。
民法第170条から第174条まで全て削られます。これは全ての家庭で、売買代金に関して五年間の領収書の保管しなければいけなくなるということが生じます。

従来であると短期消滅時効は二年であるが、五年にするとのことです。これをどれだけの国会議員が、この法改正案を知り、また国民や選挙区内の有権者に伝えているのかが疑問です。家計管理者としての国民の代表がこれを知らないではすまないでしょう。

次に法定利率について現行は5%となっていますが、改正案では、法務省令で三年ごとに見直すこととしています。マイナス金利の時代に法定利率を定めることは無意味であり、法定利率の廃止を求めます。

以下、加賀山茂明治学院大学教授の意見を参考に、反対すべき部分について列挙します。

●民法第522条の削除について

第五百二十二条 前条第一項の申込み〚承諾期間のある申し込み〛に対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。
2  申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは、承諾の通知は、前条第一項の〚承諾〛期間内に到達したものとみなす。

改正案ではこの条文を削除するとしている。

インターネットによる電子メール等の取引が増加したためと思われます。

しかし、この条文を削除してしまうと、その商取引でタイムラグが生じる場合に対応ができなくなる。

国際的には、ウィーン売買条約の第21条ではこのようになっています。

第21条
(1) 遅延した承諾であっても、それが承諾としての効力を有することを申込者が遅滞なく相手方に対して口頭で知らせ、又はその旨の通知を発した場合には、承諾としての効力を有する。
(2) 遅延した承諾が記載された書簡その他の書面が、通信状態が通常であったとしたならば期限までに申込者に到達したであろう状況の下で発送されたことを示している場合には、当該承諾は、承諾としての効力を有する。ただし、当該申込者が自己の申込みを失効していたものとすることを遅滞なく相手方に対して口頭で知らせ、又はその旨の通知を発した場合は、この限りでない。

電子メール取引であっても、発信と到達には時間差が生じることから、承諾のあとの撤回、撤回の後に問題が解消して取引成立させようとすることもある。したがってこのウィーン売買条約第21条の通りに従うのが望ましい。

また、同じように改正案で民法第527条(申し込みの撤回の通知の延着)を削除することにも反対します。これも同様に、ウィーン売買条約第16条で、「申込みは、契約が締結されるまでの間、相手方が承諾の通知を発する前に撤回の通知が当該相手方に到達する場合には、撤回することができる。」となっているからです。