Cabin Pressure / Warhorses of Letters | First Chance to See...

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 BBC Radio4のコメディ・ドラマ「Cabin Pressure」が大好き、という話は、今年の1月5日、このブログに書いた通り なのだが——。

 「Cabin Pressure」とは、MJNエアーという飛行機会社のCEO兼キャビン・アテンダントのキャロリンと、機長のマーティン、副操縦士のダグラス、キャロリンの息子でキャビン・アテンダントの仕事を手伝うアーサーの計4人が、MJNエアーが所有するたった1機の小さいチャーター機(通称「ガーティ」)を舞台に繰り広げる、シチュエーション・コメディ。最初は、マーティン役でベネディクト・カンバーバッチが出演、につられただけだったのだが、いざ聴いてみると自分の予想をはるかに越えてどっぷりハマってしまい、1月9日から放送された第4シリーズも毎週PCにかじりつくようにして聴き、第4シリーズ最終回ではあまりに切ないクリフハンガーに思わず悲鳴をあげた。しばらくして第4シリーズがAudible.com で発売されるや否やダウンロード購入し、今日まで毎日、通勤電車の中で繰り返し聴いているのはまあ当然としても、副操縦士のダグラス役を務める俳優ロジャー・アラムまで追いかけ始め、これまでたいして好きじゃなかったイギリスのコメディ『官僚天国!』シリーズも、彼が出ているからというだけの理由で観るようになると——これはもう、かなり重症と言わざるを得ない。
 
 ここまで重症にはならなかったけど、でも、私が心から「好き!」と言えるBBC Radio4のコメディがもう一つあって、それが「Warhorses of Letters」。こちらは、2011年10月から4週に亘って放送されたコメディで、ロバート・ハドソンとマリー・フィリップスの二人が脚本を書いている。
 ナポレオンの愛馬マレンゴと、ウェリントンの愛馬コペンハーゲン。この二頭が、実は恋人同士だった? このたび新たに発見された彼らの愛の往復書簡が、ついに明らかにされる——というのがこの作品の設定なんだけど、マレンゴもコペンハーゲンもオスだから、ゲイのカップルでもある。こんな話、よく思いついたもんだよ!
 設定が設定だけに、最初と最後にナレーターの説明が入る以外は、マレンゴの手紙をスティーヴン・フライが、コペンハーゲンの手紙をダニエル・リグビーが読み上げる、という形で話は進む。「Cabin Pressure」の紹介で書いたように、「英語のドラマを楽しく聴き続けるだけなら、「何を言っているのか」は分からなくてもいい。「誰が言っているのか」さえ分かればいい」んだが、そういう意味では、「Warhorses of Letters」ほど分かりやすいドラマはない。ベテラン軍馬でフランス語訛りのマレンゴと、若くて元気で時にちょっと無分別なコペンハーゲンとでは、声も話し方も全然違うからだ。おまけに、ナポレオンとウェリントンに関する史実をあらかじめ簡単に予習しておけば、話の展開がまったく見えなくなるという心配もない。さらに、このドラマは各話が15分の長さしかなくて、リスニングの集中力が失われる前に終わってくれる。
 どうです、申し分ないでしょ? 「Warhorses of Letters」は、今ならiTunesでもAudible.com でもダウンロード購入可だし、テキストも電子書籍として出版されていて、こちらのサイト から購入することができる。昨年秋にはシリーズの続編が放送されたのだが、残念ながらこちらはオーディオ/テキストともまだ発売されていない。

 そもそも私が「Warhorses of Letters」のことを知ったのは、脚本家の一人、マリー・フィリップスが2007年に出版した小説『お行儀の悪い神々』がすごくおもしろくて(この小説でもロンドン・イズリントンの地下鉄エンジェル駅がとても印象的に使われているんだけど、それはまた別の話)、新作情報欲しさに彼女のブログを読んでいたからだった。次の新刊がなかなか出ないことにやきもきしていて、ようやく来た新作情報が小説ではなくラジオのコメディ、英語のリスニングには自信はないけど、でも出演者の一人は私の大好きなスティーヴン・フライだし、という理由でとりあえずつられて聴いてみたら、これが大当たりだった、という次第。
 
 が、しかし。先日、ふとしたことで気が付いちゃったんだな。「Cabin Pressure」と「Warhorses of Letters」、似ても似つかない二つのラジオ・コメディが、実は裏で繋がっていたことに。
 
 「Warhorses of Letters」は、ラジオドラマ化が決定する前の2010年、ロンドン・キルバーンにある「The Good Ship」というパブ兼ライヴハウス兼コメディクラブでライブ上演されている。この時、マレンゴ役は脚本家の一人、ロバート・ハドソン本人が務めたが、相手役のコペンハーゲンを演じたのが、誰あろう、「Cabin Pressure」のアーサー役にして脚本家のジョン・フィネモアだった!
 
 うわーーーー、世界って広いようで狭いっ。というか、自分では全く別のものを好きになったつもりでも、根底の部分では同じテイストのものを拾い集めているだけなのかしらん。
 
 そして来たる2013年5月26日には、イギリスの文学イベント、ヘイ・フェスティバルにて、ロバート・ハドソン、マリー・フィリップス、ジョン・フィネモアの3人がそろい踏みで、「Warhorses of Letters」を上演するらしい。詳しくはこちら 。くーーーーーー、あまりに行きたさに、その時期に渡英なんて不可能だと分かっていても、あやうくチケットをネット購入しそうになったじゃないの!