First Chance to See...

エコ生活、まずは最初の一歩から。


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 よく知らない俳優が演じる英語字幕の「ハムレット」を観るために東京国立近代美術館フィルムセンターまで足を運ぶなんて、ほんの数年前の私だったら考えられないことだ。でも、英語字幕すら付かないベネディクト・カンバーバッチ主演の「ハムレット」先行上映 で鍛えられたおかげで、「英語字幕があるなら観てみようか」という出来心を抱くようになった。少しずつでも利口になっているというか、ますます世間の常識から遠のいていくというか、はてさて。

マキシン・ピーク「ハムレット」

 にしても、平日昼間の上映だったとは言え、集っている人のほとんどが高齢者だったことには驚いた。英語字幕でシェイクスピアだもの、てっきり大学院生とか研究者ばっかりかと思ったんだけどな。杖があっても足腰が不自由で階段を上がれない、という方もちらほらいらっしゃって、うわ、昔の日本人は英語のレベルが高かったんだ、と、心密かに感心する。

 一般料金520円(ナショナル・シアター・ライヴの値段と比べるとタダ同然!)を払って中に入り、ブリティッシュ・カウンシルが用意したA4の解説チラシを受け取る。解説は日本語と英語で書かれているが、書いてある内容はまったく別物。英語字幕で「ハムレット」を観ようって人なら、「英語の解説文の日本語訳が欲しい」なんて眠たいことは言わないよね、ということかしらん。とほほほほ。
 
BCのチラシ

 主演のマキシン・ピークは、先頃BBCで放送されたラッセル・T・デイヴィス脚色のテレビドラマ版「真夏の夜の夢」 で、タフでかっこいい妖精の女王タイターニアを演じていた人。あのタイターニアを見ていたから、今回、ちょっと頑張って英語字幕の「ハムレット」を観てみようと思った、ってのはある。

 女性が演じるハムレットを観るのは私はこれが初めてだったが、思った以上にいい感じだった。中性的な感じがする分、ハムレット役につきもののマザコン臭が消えて、正義の怒りがよりストレートに伝わってくる。マキシン・ピークのハスキー・ヴォイスもかっこいい。うん、こんなにストレートにかっこいいと思えるハムレットって珍しいかも。

MP's Hamlet

 この舞台、ハムレットだけでなく、冒頭の見張り役の一人マーセラスが女性のマーセラに、オフィーリアの父親ポローニアスが、ポローニアという名前の母親に改変されていたりしていた。シェイクスピアの芝居って圧倒的に男性の役が多くて、女性の役者が出演する機会が限られてしまうのが難点だけど、こういう形で出番が増えるのはいいことだと思う。レアティーズとオフィーリアの親が、ボローニアスという父ではなくボローニアという母になったことで、親子の関係も微妙に変化していて、それはそれでおもしろかったし(ジュリー・テイモアが監督した映画「テンペスト」ではヘレン・ミレンが父プロスペローならぬ母プロスペラとして演じていたけれど、娘ミランダとの関係が父娘の時と特に変わってなくて、そこが不満だったのだ)。

 とは言うものの、3時間越えの舞台に時折睡魔に襲われたのも確か。近くの席からはすこやかな寝息も聞こえてきたが、私はそこまでがっつり寝落ちせずに踏ん張れた——とは思ったものの、ハムレットがボローニアを殺害したところで15分の休憩が入り、トイレに行ってちょっと英気を取り戻したところで、ふと気が付いた。

 ちょっと待て、私、"To be, or not to be"の台詞を聞いた憶えがない!!!

 ががーーん、英語字幕の「ハムレット」を観に来て一番有名な台詞を居眠りしてまんまと聞き逃すとは、何たる不覚。これはもう立ち直れない……と、一気に重くなった心と足を引きずって席に戻り、後半開始からしばらくすると、出ました、戯曲とは全然別のタイミングで待望の"To be, or not to be"!

 もおおおおお。紛らわしいなあ、一時は本気で落ち込んだじゃないの~~~、と苦笑いしながら、かの名台詞を堪能。ということで、次回、7月8日または京都文化博物館での7月2日の上映でご覧になる方は安心してね(詳しいスケジュールはこちら )。

 ちなみに、今回の「ハムレット」の脚本は、2009年にジュード・ロウがロンドンとニューヨークで主演した時のものを使用したらしい。ということは、英語は苦手だけどジュード・ロウ目当てで彼のハムレットを見に行った方の中にも、私同様、「し、しまった、ジュードの"To be, or not to be"を聞き逃した?!」と慌てた方はいらっしゃったのかしら?
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 コリン・「魔術師マーリン」・モーガン主演のドラマ。各話1時間、全6話というフォーマットはBBCの定番スタイルと言ってもいいくらいだけど、なぜかこの作品だけはイギリスでのテレビ放送に先駆けて全話iPlayerで視聴可能 という、太っ腹(?)なことになっていた。

 が、しかし。嬉々としてiPlayerにダウンロードしてみたら、先行公開の故なのか、英語字幕がついてない。それでも、ヴィクトリア朝のゴシックホラーみたいな話っぽいし、ま、何とかなるだろう……と思って第1話を観始めて、あまりの聴き取れなさにボーゼンとする。特に難しい話をしている訳でも訛っている訳でもないのに!

 ううむ、今年に入ってからだけでも、「War and Peace」 から「The Night Manager」 までこんなにいろいろ観てきたのに、リスニング能力は向上するどころか字幕頼りでむしろ退化してないか? 「The Living and the Dead」、きっとテレビで本放送された後なら英語字幕付きがiPlayerにアップされるだろうから、第2話以降はそれまで待ったほうが賢明じゃないか? 

 とも思ったけど、結局、続きが気になって最後まで観てしまった。

 幸い、回を重ねるごとに、第1話ではあんなに分からなかった英語もそれなりに分かるようになってきた。勿論、そんな短期間でリスニング能力が向上するはずもないが、キャラクターの性格とか、ストーリーの骨子とか、そういうものが把握できると、前後の文脈から大方の想像ができるようになる。実際の英語リスニング能力とは全く別の、特殊技能と言ってもいい。好きこそものの上手なれ、とは言え、私の場合、こういう能力だけどうしてやたらと発達するのだろう。

 ま、そんなことはさておき、ドラマ本編の話である。

L&D

 時は19世紀末。コリン・モーガン扮するネイサンとシャーロットの夫婦は、ネイサンの老いた母親と一緒に暮らすため(だと思う)、サマセット州の領地に戻ってくる。ネイサンは大学で心理学の勉強をしている(と思う)し、シャーロットはカメラで写真撮影もできるし、ということで、夫婦揃ってオカルトとは無縁の「科学の人」だ。が、領地で起こる数々の怪現象に、二人は理性と科学で立ち向かおうとするものの、次第に幽霊の存在を認めざるを得なくなってくる。とりわけネイサンは、幼くして死んだ息子の声をたびたび耳にすることで、ますますその世界にのめり込んでいく。冒頭では希望と理性と礼節に溢れていたのに、回を追うごとにそれらすべてを失って精神のバランスを崩していくネイサンを、コリン・モーガンが上手に演じ切っていた。

 最初の4話目くらいまでは、ある怪奇現象とその理由が、各話ごとにきちんと説明されていく。が、最後の2話では、個々の幽霊譚ではなく、作品全体の構成にまつわる現象が解き明かされる。あ、やっぱりね、予想通りの展開だわ——と思わせておいて、そこからさらに二転三転させる辺り、よく出来た脚本だった。

 脚本を担当したのは、テレビドラマ「Life on Mars」とその続編「Ashe to Ash」(「時空刑事1973」と「キケンな女刑事 バック・トゥ・80's」という邦題は、なかったことにしたい)を手掛けたアシュレイ・ファロア。最終回まで観てみれば、なるほど、相通じるテイストだなと思う。
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 日本では来月から公開になる映画『ブルックリン』。私はこの原作小説が大好きで、大好きすぎて著者コルム・トビーンが書いた他の小説の日本語訳2作を漁ったくらいじゃ勢いが止まらず、とうとう日本語に訳されていない作品にまで手を出す羽目に。それが今からちょうど1年前にブログ記事に書いた「The Master」 (2004)という小説だったが、今回の「Nora Webster」は、トビーンが2014年に発表した最新小説である。

 「The Master」 が作家ヘンリー・ジェイムズの伝記小説だったのに対し、「Nora Webster」はトビーン自身の自伝的要素の濃い小説だ。正確には、トビーンの母親が主人公ノラ・ウェブスターのモデルとなっていて、四人の子供を抱えたノラが、夫の病死から立ち直っていくまでの数年を描いている。

Nora Webster

 ……と書くと、いつまで経っても何かにつけて今は亡き夫を思ってめそめそしている辛気くさい女性の話みたいだが、実際に読むとそんな感じはまったくしない。子供たちの世話もあるし、親切でもあればウザくもある親戚との付き合いもある。何より、専業主婦だったノラも生活のために働きに出なくてはならない。日々の暮らしは待ったなしで、ストレスは多いし疲労も溜まる。だが、夫抜きの人間関係が広がるにつれ、ノラの世界も少しずつ広がっていく。

 正直、『ブルックリン』や「The Master」 のほうが私の好みではあったけれど(ノラの勤め先の独身女性たちの描かれ方がねえ……あまりにも意地悪だったり怠惰だったりするんだもの)、これはこれで良くできた小説だと思う。英語でもたもた読むのではなく、日本語訳で一気に読んだらまたノラの印象が変わるんじゃないかとも思うので、この本も邦訳が出るといいな。
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