オリジナル創作⇒世甘⇒小説第3話 | ミにならないブログ~ゲーマー主婦のお絵描きと子宮体癌~

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オリジナル創作


小説
第3話「謎のサッカー少年」
 

朝がきて、更生施設「ファミリー」から出ていく神林と高城の姿があった
二人は二人だけで暮らしていくべく山にあった施設を下り
町へと向かった

20歳そこそこの少年院出の男に頼る人も帰る場所もなく
私設の責任者の尾上が昔父親がやっていた工場の跡地を
彼らに貸し出したのだった



「よし、着いたぞ」

神林が大声で叫んだ
そこは、お世辞にも立派な建物とはいえない
古びた工場だった
1階はまだ処分されていない機械が誇りだらけになっていた
2階は事務所だったらしく会議室みたいな場所もあった
3階は寮だったらしく、いくつかの狭い部屋が並んでいた

とりあえずすぐに使えそうな綺麗な場所は事務所だった2階だったので
2階に拠点を置くことにした
一応ふとんや冷蔵庫はあったのでそれを使わせてもらうことにした

とはいえ、長年使っていなかったみたいなので
どこも埃だらけ

「よし、まずは掃除だな」

と神林はやる気満々だがすぐに腰を折るような言葉が響いた

「二人でできるとは思えない…」

高城がぼそりと呟いた

高城の言うことは正解だ
たった2人でこの広い3階建てのビルを掃除できるわけがない

「とりあえず2階だけでも綺麗にしようぜ
 事務所と会議室の場所な」

そういうと神崎は早速動き出した
高城も神崎の姿を見てしぶしぶ動き出した

「コホン、コホン…」

高城が舞う誇りに咳払いをした

「大丈夫か?」

「苦しい…」

「そうだよな、マスクとか必要だよな
多少のお金は俺ももってるし尾上さんかも
いざというときのためにってお金もらってるから
俺いろいろ調達してくるわ
飯も必要だしな
お前ひとりで留守番できるか?」

高城は無言で首を横に振った

「んーなら一緒にいくか?
でも咳でつらそうだしなぁ
本当は寝てたほうがいいけど
ふとんも干さなきゃいけないしなぁ
こんなとこで寝てたら余計調子悪くなっちまう
困ったなぁ…」

「そうだ!
横に喫茶店あったよな
あそこで休んでろ
飲み物代おいていくから
な?
すぐに帰ってくるから」

それでも高城は首を縦には振らなかった
神林と一緒にいたいのだ
施設ではみんなの中に混ざるのが怖くて
いつも一人でいたはずなのに今は一人が嫌だと感じているのだ
高城にとっては大きな一歩かもしれない

「わかった、一緒に行こう」

神林がしぶしぶ言うと高城は飛び切りの笑顔でこくりと頷いた

(全く…我儘な奴だな…俺の小さい頃にそっくりじゃねぇか…)
神林は心の中でつぶやいた


ホームセンターや100円ショップ、コンビニで必要最低限のものを
買いあさり家に帰る頃には陽もくれていた

高城はこくりこくりと眠たげだ

「おい大丈夫か?荷物あるからおぶってやれないけど
ちゃんと歩けるか?」

心配そうに覗き込むと眠気眼なまま頷いた
が、その足はフラフラとしていた

「んーまいったなぁ
おっ、あそこに公園あるなぁ
よし、公園で一休みするか」


公園にはいってすぐベンチを探し高城を座らせた
座るとすぐぐたりと横になって寝てしまった
そうとう疲れがたまっていたみたいだ

「しょうがねー、少し寝かせてやるか」

そういうと隣に座ってぼーっとこれからのことを考えた
掃除、仕事、ご飯、仕事している間の高城が心配
考え事をしていたらケータイが鳴った
そう、二人はそれぞれの施設の責任者からケータイを
持たされていたのだ
何かあったら必ず連絡するようにと
もちろん携帯代は施設が払ってくれるという
有難い話だった
そのケータイがなった
まだこの番号を知っているのは施設の人間だけだ

「もしもし?」

電話に出ると更生施設の尾上さんだった

「無事着いたか?」

「はい、ありがとうございます、こんな立派な建物を貸して下さって」

「いやいや、あれはおやじのもんだったからな俺が後を継がなかったから
廃墟になっちまったが、まだまだ使えるだろ?汚いだろうから毎日少しずつ
掃除して綺麗にしてやってくれ、休みになったら施設のみんなで
掃除の応援にいくからな、それまで我慢しろよ」

「わかったよ、んじゃな」

「おいおい待て待て、話はまだ終わってない」

「んたく、なんだよ」

「今日電話したのは仕事のことだ
孤児院から高城くんを一人にしちゃいけないって言われてるから
それじゃ働けないだろうと思って、家でもできる仕事を
知り合いにお願いして用意してもらったから当分はそこで働け
明日、工場に営業の人が行くからちゃんと話を聞いて頑張るんだぞ」

「お、おっ」

「じゃあな、頑張れよ」

そういって尾上は電話をきった

仕事のことで困っていたのが解決した

(どんな仕事か知らないけど、選んでられねーもんな)
心の中でつぶやきながら電話を切った

ちょっとぼーっとしている瞬間目の前にサッカーボールが飛んできた

「あぶねっ」

そういうと向かってきたサッカーボールをなんとか手で受けた

「すいませーん」

そういって駆け寄ってきたサッカー少年がいた


「あぶねーだろっ
となりには寝てる奴もいるんだ…ったく」

イライラしてサッカーボールを相手に投げつけた

「すいません」

そういうとボールを受け取って爽やかに謝った

サッカー少年がそのまま戻っていこうとすると神林は突然呼び止めた

「なぁ?」

「はい?」

「見た限りお前以外いないみたいだけど一人でサッカーやってたのか?」

神林はまわりを見渡して言った

「あ、まぁ…」

「普通サッカーってせめて相手がいないと練習しにくくね?」

「俺下手なんで誰も練習つきあってくれなくて…あはは」

その少年は寂しそうに笑った

「ふーん、てか下手くそって、なんでサッカーやってんの?」

「好きだから」

「好きでもさ、自分に才能ないと思ったら普通やめんじゃね?」

「あんたには関係ないだろ、ほっといてくれよ」

そういうとサッカー少年はそのまま立ち去った



「ちょっと言い過ぎ」

ぽつりと声がした
さっきまで寝ていた高城だった

「お、起きたか、もう帰るぞ
すっかり夜になっちまったぜ」

「うん、でもさっきのは言い過ぎだから
今度あの子に会うことあったら謝ったほうがいい
好きだからやりたいことをやる
僕たちも一緒」

「あーわかったよ、なんでお前に説教されなくちゃならないんだよ
ったく今日はついてねーな」

そういうと
二人は公園のベンチから立ち上がり
ぽつぽつと家という工場に向かって歩いていった…



つづく


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