12月13日のダイヤモンド社主催のDMNオープンセミナー
『プロジェクトの目標を遂げるためのメソッド「ストーリー・ウィーヴィング・メソッド(SwM)」』の続きです。
コンセプトのプロトタイピングをする手法を4つ説明していただきました。
90seconds、十四夜、タンジェントスカルプチャ、アイデア・クロマトグラフィ―
は、ストーリー・ウィーヴィング研修で実施する手法であり、その紹介を兼ねています。
各手法に共通する意図がありつつ個別の意図を体現したワークショップで、よく考えられた方法だと思いました。
(その1へ→)http://ameblo.jp/hc-design/entry-11111311237.html
(その2へ→)http://ameblo.jp/hc-design/entry-11113988536.html
■ストーリー・ウィーヴィングのためのワークショップ
上記4つの手法は、「ものがたり」を実務に活かす切っ掛けとなるアクティビティ
であり、タクラム社が実践的に編み出していったノウハウを提供できる形にした
もので、特にプロジェクト初期向けを中心に使うワークショップ(WS)です。
今回は、デザインやエンジニアリング側ではなく、2月から開催するWSでの
ストーリー・ウィーヴィング側に絞った話となります。
・これらのWSの目的と方法
他社のデザイナーやエンジニアと組むことがポイント。
他の会社、職種の人たちと、コンセプトを一つの幹=作品に高めていけるか
という内容。
「ものがたり」は、言葉や文化の違う他者にも伝わることが特徴であり、
企画案とモックアップの制作を通して、ものがたりとものづくりの手法を学ぶ。
以下の4つの手法は、対象の「幹は何なのか」を全員で発見し、構築するためのワークである。
- 何を幹として定めるか。(ブラさない部分)
- 何を枝葉と定めるか(多様な解釈を許容する部分)
これらのワークは、ものづくりでのコンサルティングだけではなく、
コミュニケーション研修でも、使われたりし出しているそうです。
→「ものがたり」=ストーリー≒シナリオであり、バックボーンの異なる人々を結びつける役割として
優れています。
それは、ペルソナ/シナリオ法のシナリオや、ストーリーテリングのストーリーでも言われてきた
ことです。
他に同じように、言葉や文化の違う他者にも伝わるものとして、何か思い出しませんか?
そう、『数字』です。
定量情報の代表が『数字』に対して、定性情報の代表が『ものがたり(ストーリー)』といえ、
そのため、最近、ストーリーが注目されているのではないでしょうか。
(ストーリーとしての競争戦略、ストーリーテラー、ゲームデザインなど)
【90seconds】
⇒ぴったり90秒でお勧めの本を紹介する。
このワークは、ぴったり90秒でしゃべることがポイント。自己紹介的な意味もある。
かつ、周りの人が読みたくなるように話すこと。
知の共有と、「語り方」を考えるきっかけになる
⇒人によってプレゼンの仕方が異なるので面白い。
本を開く人、開けずに説明する人。また、あらすじを述べる人、自分の感想を
いう人。
(参考)投資家に要点を簡潔にアピールする、エレベーターピッチと同じこと。
限られた時間で何を語るか。何をカットするかが大事。
つまり、自分の中での幹と枝葉を明確にし、枝葉は省略する訓練。
目的:語ること、語らないことを明確に区別する。そして幹と枝葉に分けて
枝葉は省略する
効果:縦の壁を越えられるような、強い言葉を発せられるか。
⇒タテを説得し得る「ことば」
また、部署の異なる人々を一つの哲学でもって巻き込めるか。
⇒ヨコを貫き巻き込む「ことば」
【十四夜】
⇒2つの異なる作品を鑑賞し、それらを「見えないルール」でつなぎとめる
(意見交換)
大人向けの2冊の絵本を使用する。読んだ後に各自意見交換を進めていく。
文字が書いていない絵本のため、各自が各ページを補って考える。
文字がないため、同じ絵を見ていても各自がイメージして考えていることは
異なる。つまり、社内の状況と一緒。
面白いのは、同じものを見ているときは問題がなくても、
それについて意見交換をし出すとイメージが異なっていることが露わになること。
全員が共有できる部分と、各自の意見がばらつく箇所はどこか。
これも、幹となる思想と枝葉を見出すエクササイズ。
【タンジェントスカルプチャー】
⇒対象の名前を「言わずして語る」ための訓練
活動の中で、キーワードやキーコンセプトが初めて出てきたときに使うWS。
「言わずして語る」とは、自分たちのキーワードを禁句にすること。
目的:対象についてその名前を「言わずして語る」ことで、対象の本質を理解する
(本質の再定義)。
例えば、これを10通り表現しましょうというワーク。
一見、当然と思われる前提までも意識的に定義、言語化する。
前提から話すことで、意識的に「暗黙知を明文化」する働きがある。
効果:多くの文脈を持って会話できることに気づく。
⇒10-20文字の製品コンセプトで本当に関係者に伝わるのか。
理解したつもりになっても、何も伝わっていない。
人によって、各自の語る視点が異なる。
すべての視点を出すことで、みんながブレなく共有でき、
共有できていなかったリスクが減る。
例えば、「雨」といってもいろいろな表現がある。
雨の音、雨の力、雨への感情、雨による変化、清浄化、舞台装置など。
その本質をえぐっていく。
コンセプトを定めることで、みんな思考停止していないか。
コンセプトに甘えず、きちんとみんなで視点を吐き出しておこう!
→谷川俊太郎氏の散文詩など3つ演習をしましたが、答えがわかると面白くないので伏せておきます。
ある対象を多面的に表現するということは、多くの視点を持つということで、ビジネスやマーケティングのフレームワークを使って、いろいろな面から総合的に分析するのと似ていると思いました。
【アイデア・クロマトグラフィ―】
⇒アイデアの魅力を「因数分解」する
グループ内に対案がいくつかあるときに利用
各自のアイデアをプレゼンテーションした後に、複数のアイデアに絞りこんだ
状態で実施。
自分のアイデアが残った人と、それ以外の数名がグループを組み、
アイデアをブラッシュアップさせていく。
・非作者によるアンケート記入
一連の質問に答えることにより、回答者なりの分析、作品の機能、意味、メッセージ
などが個人差とともに浮き彫りになる。
・アンケートの内容を元に全員でディスカッション
アイデアを構成要素に分解し、その構成要素を交換できるか、できるなら
メッセージがどう変わるかを調べていく。
そうしていく中で、作品の中で変えられない要素、変えられる要素、
アイデアの魅力をなす構成が最小限何か=本質、が見えてくる。
これにより、幹と思われるメッセージ、枝葉と思われるメッセージのヒントを
導き出せる。
ただし、アンケートに答えても人の作品なのでよくわからない部分はある。
それらを持ち寄って、数人でディスカッションをすると、みな異なることが書いてあり、
作者のプレゼンの内容が十分伝わっていないことが明らかになる。
例えば、タイトルからして異なっていたり。アイデアを他人が語ることで、
意外とわかっていない、誤解されていることが判明する。
非作者の誤解を最も増幅させるのがこの段階で、
そのため、作者に質問せずにアンケートに答えさせる。
ただし、聞いていた方が悪いだけではなく、
プレゼン者もうまく伝えられていない=しっかりと幹が言えていないといえる。
しかし、それから議論を通じて作品を因数分解していくので、本質的なものが現れ、
メンバーの理解と共有が深まると共に、自分がなぜこの作品をよいと思ったのかが認識される。
これによって、作者は本質的な部分や他のメンバーがどこを評価したかもわかり、
客観的に見ることができるようになる。
作者が客観的に作品を見ることができることによって、
改善意見に対して拒否反応を示すことが防げる。
作品にのめりむ、同質化してしまいがちな作者を引き離す効果がある。
逆に非作者は、なぜこの作品をよいと思ったのか魅力を確認することで、
他人の作品が自分のものになっていく。
「アタッチメント」(愛着・帰属):非作者を作品と近づけ、非作者を主観的な作者に。
「デタッチメント」(感情超越・分離):作者を作品から引き離し、作者を客観的な
非作者に
・非作者によるストーリー・リテリングの実施
非作者が作品をプレゼンすることで、作者は作品が自分の手から離れ、
作品は全員のモノとなり、主観と客観が両立できる。
*ご紹介
よりよい学びを実現するためのコツを抽出・記述した学習パターンを
ラーニング・パターンとして、慶応大学 井庭 崇 総合政策学部准教授がまとめられています。
そこにも紹介されている「『はなす』ことでわかる」と通じるところがあります。
⇒自分の考えを「話す」ことは、 自分からその考えを「離す」こと。
http://tinyurl.com/LPattern29
→デタッチメントは、他人に自分の考えを話させることで、強制的に自分からその考えを離させる効果があるのではないでしょうか。
また非作者に対しては、強制的に自分ゴト化させるもので、関係者でありながらどこか他人事の態度をとらせない工夫で面白いと思います。
以上の全ての活動に共通することは、ずらしていけない作品の魅力=幹を定め、
許容できる枝葉の部分を定めること。
ポイントは、幹と枝葉を定めることと、つくりながら語ることと、
かたりながら創ることの同時進行
⇒議論の共通するプラットフォームになる。
⇒そして議論が発散せず合意形成ができ、同じ方向に向かっていける
⇒関係者全員を「語り部」にすることができる
→一部の人だけではなく、関係者全員を自分事化し、プロジェクトの語り部として行動させるのは
強力ですね。
また下のその他の手法を見ると、コンサルタントが行う経営者と現場へのインタビュー調査や、
発想の基本である発散と収束をきちんと取り入れていることがわかります。
■その他
製品開発する場合、他に使う手法
・エグゼクティブ・インタビュー(経営視点からの意図をくみ取る)
⇒潜在課題の抽出
・オールハンズ・ワークショップ(現場レベルのノウハウ・問題意識を可視化する)
⇒潜在課題の抽出
・モンタージュ・セッション(極限まで発散させるアイデア展開法)
・フラクタル・セッション(極限まで収束させる抽象化技術)
以上です。