ここをクリックすると第1話に飛びます
 文末のつづくをクリックしていくと順番に読めますです


「じゃあ仙台~東京間が30分で行けるようになったらどうだ?」
 といわれると、この理論にもやや補足・修正が必要になってくるような気もする。
「10分ならどうだあ」
 といわれると、もうそれは
「あっという間です。すぐ近所です」
 といわざるを得ない。
 しかしそんな高速移動はとても不可能なので、いくら想像しても意味はないのだ。
 その、結局は遠いと思われる400キロの距離を、僕は父親の運転するレンタカーに乗って、移動していた。
 ついに旅立ちの日がやってきたのである。
 ハイエースの中は雑多な荷物でいっぱいだった。
 例の自転車も、布団と本棚に挟まれて積んである。
 首に巻いた手拭いがヘンポンとひるがえり、なかなか勇壮な光景であった。
 数時間前まで過ごしていたはずの土地が、無性に懐かしかった。
 友人の顔が、浮かんでは消えた。

 つづく