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 しかし、やはりもと子の顔が一番多く浮かんでくる。
(結局、たった一人で仙台を飛び出しちゃったんだなァ)
 ずっと親元で暮らしていた僕にとって、感慨はつきなかった。
『別れも愛の一つだと~♪』
 というゴダイゴの歌が、頭の中でリフレインしている。
 途中で運転を代わった母親は、終始楽しそうに話していた。
 恋人は東京の人になるんだね、盆と正月には帰ってこい、将来は作家として成功したらいいね等々、のべつまくなしに喋っていた。もともと母親は、明るくおしゃべりな人物なのだ。
 しかしこれは何年も経ってから聞いたことなのだが。
 中野で僕を降ろしての帰り道、母親は車の中で泣いたのだという。
 息子のために泣いた姿など、一度も見たことはなかったので、その話を聞いたときにはこちらも涙ぐみそうになった。
 何か自分が、ひどい親不孝者のような気がしたのである。

 つづく