<艶が~る、二次小説>


もしも、土方さんが会社の上司だったら。以前、『Toshi Hijikata#1~3』を書いたことがありましたが、今回は、それの続きっちゅうか、番外編みたいな物語を書いていこうと思いますアオキラ


物語の最中に、沖田さんがなぜバーのオーナーをしているか…主人公が疑問に思ったことがありましたよね?(覚えてはりますか?)その、沖田さんも絡めながら、その後の二人を描いて行こうかとハート


現代版ですし、勝手な私の妄想ではありますがっ良かったら覗いてって下さいませがーん


#1  #2  #3

(↑それぞれクリックしてお読み下さい。#3は艶シーンありの為、大人限定です。#3で、土方さんと主人公が結ばれたと思って下さい汗



【Tochi Hijikata】#4



「ち、遅刻するぅ!!」


すっぴんのままロールパンを口に頬張りながら上着とバッグを持ち、急いで玄関の鍵を閉めてなかなかやってこないエレベーターを見送り、階段を駆け足で下りてゆく。


いつもよりも寝坊してしまった私は、最寄りの駅に辿り着くまでにパンを食べ終え、ラッシュの電車に乗り15分の場所にある会社へと辿り着いた。


「ふぅ~、間に…あったぁ…」


相変わらずの平凡な生活が続く中、たった一つだけ変わったことがある。


それは……。


「…懲りねぇな」

「……えっ…」


手の平で膝を抱え込む様にして大きく息を弾ませている私の背後から、あの人の声がして急いで振り返る。


「せ、先輩…」


――この人の彼女になれたことだった。


「化粧する暇も無かったのか…」


あのいつもの仏頂面のまま、私の横を取り過ぎてゆく。


「え、あ…はい」

「もうそろそろすっぴんもキツイだろ」


そう言ってどんどん離れていく土方さんの背中を見つめながら、私はしばらくその場に佇んだ。


「なっ……」


(失礼な……でも、その通りかな。いつも、先輩の言うことは的を得ていて…正しくて…)


「って、こんなところでそんなこと考えている暇は無かったんだった!」


急いで後を追いかけ、ギリギリ同じエレベーターに乗り込む。


「あ、すみません!」

「…………」


開ボタンに触れたままの土方さんの指を見やり頭を下げると、土方さんは無言のまま閉ボタンを押して手に持ったままだった携帯を見始めた。


親指で横にスクロールしながら、何やら写真を見ているようだ。


(……うーん。二人っきりのエレベーターは緊張するなぁ…)


そんな私の心とは裏腹に、誰も乗ってくることが無いまま重苦しい沈黙が続く。


「この間の件、どうなった」

「へっ?」


そんな突然の問いかけに、間抜けな返答しか出来ずにいると、容赦のないあの視線が私に突き刺さる。


「へ?じゃねぇだろ」

「はっ?」

「は、でもねぇ…」


おどおどとしながら目線を上げると、厳かな瞳と目が合う。


「ふざけてんのか…」

「いえ、そんなことは…無いです…」


(え、この間って…あ、あれか!)


「ちゃんと、構成を練り直してメールしました!」

「そうか。ならいい」


(危なかった……)


土方さんに見つめられると、なぜか緊張してしまう癖があって。あの夜に想いを伝えあったにも関わらず、まだこの壁を越えられずにいた。



――あの夜。


私の24回目の誕生日を覚えてくれていた先輩が、いつものバーでお祝いしてくれて。沖田さんからもお祝いの言葉を貰ったり、美味しいケーキまで用意して貰ったりして楽しいひと時を過ごす中。


調子に乗り過ぎた私は、土方さんの飲んでいた日本酒をマネして飲んで酔っ払ってしまって…。そのまま、土方さんのマンションに招かれて。



艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~



『…俺はこういう性質だから上手く気持ちを伝えることは出来ねぇが…あいつの店でお前を抱きしめた時、気持ちを抑えるのに必死だった。その場で押し倒したいと思うくらい、お前を意識していた…』


『土方さん…』


『……だから、どれだけお前が大切なのかを教えてやる』



初めてだった。あんなにストレートに告白されたのは…。


私は、土方さんの腕の中で身を委ね。求めてくれたことが嬉しくて。時に優しく、激しく。いつまでもその広い胸に甘えていたのだった。



「おい」

「はい?」

「何を考えている」

「え、あの…」


(まさか、あの夜のことを思い出していたなんて言えない…)


一人俯きながら顔を赤くしていると、更に顔から火が出そうなセリフが投げかけられる。


「また抱かれたいならそう言え。いつでも抱いてやる…」


――ポンッ。


エレベーターのドアが開いてすぐ、土方さんは何も無かったかのように歩き出した。


「朝から、なんてことを言うんですかぁ!」

「図星か」

「うっ…」


閉まりかけるドアをまた開けて、慌ててフロアへ出ると乱れかかった呼吸を整えながら速足で立ち去る土方さんを見やる。


「もう、なんでああいうことをさらっと言えるんだろう…」

「ああいうことって?」

「うわっ!び、吃驚したぁ…」


肩越しに温かいものを感じて急いで振り返ると、同僚のにんまりとした顔がそこにあった。


「おはよ~」

「涼子ぉ、びっくりさせないでよ…」

「で、何て言われたの?」


私の肩を抱きながら微笑む彼女は、菊池涼子。大学時代からの友人で、私とは違って頭の回転が速くてよく気の付くタイプで。彼女の爪の垢を煎じて飲みたいと思うほど、尊敬している部分もある。


ようするに、無い物ねだりっていうやつだ。


「あんたたち、付き合ってるんだよね?」

「うん…その筈なんだけど」

「まぁ、あの人相手に同等に隣を歩こうなんて無理なんだからさ。あんたは、そのままでいいと思うよ」


歩みを進める中。彼女は、苦笑しながらそう言うと、私の肩を抱いていた手で背中を軽く叩いた。


「土方さんは、あんたのそういうところがほっとけないって感じだもんね。俺がいないと駄目なんだと思わせていればいいんじゃない?」

「…そうなのかな」


俯く私に彼女は満面の笑顔を浮かべると、「お先」と、言って私に手を振り、自分のデスクに腰を下ろしてPCを開く。


(…私は私だもんね。すぐにこのどんくさい性格を直すなんて無理な話だし。でも…)


少し離れた場所でPCに向かう土方さんの後ろ姿を見ながら考えた。


いつか、周りが吃驚するくらいの仕事をしてやるんだと。


そんなうちの会社は、ALT(Above the line)エージェンシーといい、主に、テレビや新聞、ラジオ、雑誌などを使ったプロモーションを行い、既存の広告媒体とは異なった、費用対効果を重視した広告・プロモーション戦略を実施している。


そして、もう一つ。


BTL(Below the line)エージェンシー(イベント、ダイレクトメール、店頭POPなどを介したプロモーションを行う企業)の経験もある土方さんに憧れていた。


人に何かを伝えるお手伝いが出来て、人と関わることの大切さと、思いやる気持ちを育むことが出来る素敵な仕事だ。


今はまだ、メールや電話で直接連絡し合うことが大変だけれど…いつの日かきっと、土方さんみたいに頼られる存在になってみせる。


私で無ければ出来ない事。


あなたにお願いして良かったと、言って貰えるその日まで。


「よぉぉし!今日も頑張るぞぉぉ!」


両隣の視線を感じながらも、PCに向かってメールを認め始めた。


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それから、あっという間にお昼休みになり、買い物に行く前にパウダールームへと急いだ。


パウダールームには、私と同じような境遇の女子が結構いて、それぞれがしっかりとメイクをする中、ファンデーションと眉を整え色つきリップを塗るくらいで早々にその場を後にすると、その足で近所のコンビニへ向かった。


その途中、偶然にもある人と出会って思わず声を掛ける。


「沖田さん」

「あ、こんにちは…」

「こんなところで何をしているんですか?」


上下黒のスーツ姿で佇んでいた沖田さんに声を掛けると、今から行こうとしていたコンビニから同じように黒のスーツを身に纏った見知らぬ男性が現れた。


「待たせたね。じゃあ、行こうか」

「はい…」


沖田さんは、その男性に返事をして不思議そうな私に微笑むと、「またお店に遊びに来て下さいね」と、言い残して、二人は地下鉄乗り場のある方へと歩き始める。


(…あの人は誰なんだろう?もしかしたら、これからお葬式にでも行くのだろか…)


まるで喪服のような格好が気になり、私はしばらくの間、彼らの後ろ姿を見送っていた。


彼らが見えなくなって間もなく、コンビニで鮭のおにぎりと果物の詰め合わせのようなものを買ってまた社内へと戻ると、そこはいつにも増してガランとしていた。


昼過ぎからは、大概の人が外へと出かけている為なのだが、今日は特に少ないような気がする。


そんな時だった。


おにぎりを一口頬張りながらメールチェックをして間もなく、あの大手企業からの依頼を受けていたことに気付き思わず目を見開いた。


「う、うそぉぉ。すごっ!」


おにぎりが喉につかえて苦しくなりながら何度もその文面を読み返してはニンマリと顔を綻ばせ、私はドキドキする胸を静めながらすぐに全員に転送して、残りのおにぎりを頬張った。


「これは、土方さんの腕の見せどころだなぁ」



でも、この時の私はまだ知らなかった。


私の周りで、数奇なドラマが展開されていたことを。




【#5へ続く】



~あとがき~


この「イフ」シリーズを始めた切っ掛けは、「もしも、慶喜さんが自分の彼氏だったら」という設定で、現代版慶喜さんを書いたことでした。


で、ついでに艶シーンも書いちゃえば?という意見を頂き、無謀ながらも挑戦したり(苦笑)色気もないし、上手く書くことも出来なかった頃。慶喜さん、土方さん、秋斉さんと現代版艶シーンに挑み!今に至るのですが、今でも艶シーンは読むのは好きやけど書くのは苦手どす汗


なんせ、純愛が好きだし、寸止めが好きなもんやから(笑)想像力が最後まで持たないんどす汗最近は、少し艶っ艶に書けるようになってきたけどきらきら


話は逸れましたが(笑)

今回は、本格的にその後の土方さんと主人公ちゃんを書いて行きたいと!


幕末時代の土方さんをイメージしつつ、現代を生きる男を描けたらいいなぁ~。そして、沖田さんの過去と現在もキチンと素敵に描けたらいいなぁ。


今回も、読んで下さってありがとうございましたハート