<艶が~る、妄想小説>


もしも、土方さんが会社の先輩だったら…。の、続きどすクマ

あの後、二人は行きつけの土方さんの後輩の店へ行き、そこでとりあえず祝うことに。

その、後輩とは…大学の剣道部で仲の良かったあの人(笑)


良かったら、読んでやってくださいませハート


# 1



【Toshi Hijikata】#2


息を弾ませながら先輩の隣りに追いつき、ふと見上げたその横顔はいつもよりも優しそうに見えた。


「いつものあの店ぐらいだろうな…こんな時間から行けるのは」
「そ、そうですね…」
「お前がもう少し早く仕事を片付けておきゃ、予約も出来ただろうが…」

「…す、すみません」


(って、予約までして祝ってくれるつもりだったのかな…)


土方さんを横目に薄暗い廊下を通り、一緒にエレベーターの前で立ち止まる。


「あそこでいいか?」
「え?あ、はい!もう、どこでも…」


あそことは、土方先輩の大学の後輩がオーナーを勤めるお店のことで、深夜まで営業している唯一の行きつけの場所だった。エレベーターに乗り一階にたどりつくと、早足で歩き出す土方さんに置いていかれないように歩調を合わせる。


「あ、あの…今夜は、本当にすみません…」
「何で謝っている」
「いや、その…先輩もお忙しいのに…」
「そう思うんなら、もう少し急げ…」
「は、はいっ」


それから無言のままお店にたどりつくと、いつものように、土方さんの後輩である沖田さんが笑顔で出迎えてくれた。にこっと微笑む彼は、白いシャツに黒いタイトなパンツを履き、黒い短めの腰エプロンをつけている。


「あれ、今夜は二人だけですか?珍しいですね…」
「こんばんは。沖田さん、髪型変えたんですか?」


最初は暗くてよく分からなかったが、よく見ると長かった髪がバッサリと切られていて、私の問いかけに彼は、「気分を変えてみたくて」と、言って微笑む。


綺麗な長い髪を切ってしまうなんて…と、思ったが、耳を出した短髪の沖田さんもまたとても素敵に見えた。




それから沖田さんは、私達を奥のかまくらのような形のテーブルへと案内してくれて。いつもは複数で来ていたからかというのもあるが、この少し隠れ家的な造りに感嘆の息を零した。


そして、先輩と私はテーブルを挟み対面して座ると、生ビールを注文し適当にお勧めを持ってきて貰うことにしたのだった。


「で、今夜はどうして二人きりなんです?」

オーダーを取りながら沖田さんは私たちに問いかけてきた。それに土方さんは静かに答える。


「今日は、こいつの誕生日らしい」
「へぇ、それはおめでとうございます!」


笑顔でそう言われ、私は少し恥ずかしげに肩を竦めながらお礼を言うと、沖田さんは、「じゃ、今夜は飲み物をご馳走しますね」と、言い、にこにこしながらその場を後にした。


おしぼりで手を拭き始める私達の間に、またしばらく沈黙が流れる。


(うーん、何から話そうかな…)


そんなことを考えていた時、また沖田さんがビールジョッキを持ってやってくると、私たちの前に置きながら言った。


「で、どうして二人きりなんです?さっきははぐらかされてしまいましたが…」


苦笑しながら言う彼を横目に、土方さんは無言のまま私のジョッキに軽く自分のジョッキを当て、ビールを飲み干した。私はあたふたしながらも、丁度、土方さんと二人だけだったことを説明すると、沖田さんはほんの少し納得してくれたようだった。


「○○さん、こんな仏頂面の先輩とお酒飲んでいても楽しくないでしょう?」


沖田さんは土方さんを横目に軽く言って見せるが、私は余計に動揺しながら言い訳をする。


「いえ、私…あの…誰かに祝って貰えるなんて思ってもいなかったから…逆に恐縮してるんです」
「…ってわけだ」


最後に土方さんが付け足す様に呟くと、おかわり、とばかりにジョッキを沖田さんのほうへ差し出した。


「無理に土方さんをフォローしなくてもいいんですよ。もしも、つまらないようなら僕がお付き合いしますからね」
「お前はホストか…」


眉を顰める土方さんをチラリと見た後、くすっと笑いながら沖田さんはまた奥へと戻って行った。


(…本当にこの二人は…こう言い合いつつも兄弟みたいに仲がいいんだよなぁ…)


「本当にお二人とも仲がいいんですね」
「腐れ縁ってやつだな…」
「またまた、そんなことを言って…」


大学時代、二人が剣道部に所属していたということを聞いたことはあった。沖田さんは土方さんの2年後輩だったにも関わらず、その腕は土方さんに負けるとも劣らない勢いだったらしい。


「あいつはプロを目指していたが、腕の怪我以来、その足は剣道から自然と遠ざかって行った。それと同時に、俺達の縁も切れたと思っていたんだが。偶然とはいえ、こんなところでまた会うことになるとはな」
「そうやってまた偶然でも会えたってことは、縁があって繋がっているんですよ…きっと」

「かもしれんな」


テーブルに肘をつき、何かを思い出しながら語る土方さんの瞳は、今までに見たことも無いほど穏やかだった。


「生、おかわり持って来ましたよ。今、料理も持って来ますからね」


沖田さんは、また微笑みながら土方さんの分をテーブルに置くと、いそいそと戻って行く。


「そう言えば、沖田さんはどうしてここのオーナーに?」
「それは、いつかあいつから直接聞いてみるんだな」


今まで、沖田さんのことを深くは考えたことが無かったのだけれど、私の知らなかった彼の過去を聞き、そんなことがあったのか…と、思うと同時に、土方さんの言葉に頭を捻った。


(…沖田さんに直接聞けって…どうしてだろう?)


「お待たせしました」


次々と、料理が運ばれる中。私はいつかその機会が来たら聞いてみようと思いつつ、土方さんと一緒に料理に手をつけ始めた。


それからしばらくして、沖田さんの機転で料理の他にも、バースデーケーキまで用意して貰うことになり、私は二人から改めてお祝いをされることになった。


「さ、一気に吹き消して下さい」
沖田さんに促され、私は二人に見守られながら蝋燭についた火を吹き消す。


「おめでとう!○○さん」
「ありがとう…」


改めて二人にお礼を言って、ぺこりと小さく頭を下げると、沖田さんは3人分のケーキを切り分け始めた。


「おい、お前も一緒に食べるつもりか…」


少し呆れ顔で言う土方さんを横目に、ケーキを切りながら沖田さんは、「バイトが入ったんで大丈夫なんですよ」と、にこにこしながら答えた。


「僕も、○○さんのお祝いをしたいですからね」
「沖田さん…」
「……………」


沖田さんは、黙り込む土方さんを見ながら、くすくすと笑うとケーキをお皿に乗せてそれぞれに配っていく。私も、そんな二人の会話を楽しみながら目の前の美味しそうなフルーツケーキを見やった。


「ケーキまで…ありがとう、沖田さん」
「喜んで貰えて良かった。駄目もとで行きつけのケーキ屋に電話したら、急遽、作ってもらえることになったんですよ。せっかくの誕生日ですし、土方さんではここまで気が回らないでしょうからね」
「……………」


あの土方さんを黙らせる沖田さんを凄いと思いつつ、不機嫌そうな土方さんを見ながら私は、「いただきますね!」と、苦笑いを返した。


そんな私を見ながら、沖田さんも同じように一声上げると、ケーキを美味しそうに食べ始めた。その横で、土方さんも少しずつケーキに手をつけ始める。


「美味しいっ」
「そうでしょう?」


思わず感想を口にすると、沖田さんも満面の笑みを浮かべた。その笑顔を可愛いと思いつつ、対照的に仏頂面のままケーキを食べる土方さんもまた、可愛いと思うのだった。




その後、しばらく3人で他愛も無い話に花が咲き、時が経つのも忘れ飲み明かした。お酒が苦手な私だったけれど、自分の誕生日くらい羽目を外してもという甘い考えを持ってしまったのがいけなかった。いい気になって土方さんと同じ日本酒を飲み続け、いつの間にか自分でも知らないうちに酔っ払ってしまっていたのだ。


「……ううっ…」


半ばテーブルに塞ぎ込む私を見つめ、沖田さんが心配そうに私の顔を除きこむ。


「○○さん、大丈夫ですか?なんか、顔色が悪いですよ…」
「普段飲まねぇ日本酒なんか飲むからだ…」
「……らって、美味しかったんれすもん…」


私は呂律が回らなくなりながらも、またお酒を口に含むと沖田さんの心配げな顔と、土方さんの呆れたような顔を交互に見やった。


酔っているという自覚はあった。
でも、日頃の想いを抑えることが出来ずにいた。


「あたし…自分がキライなんれす…よね。こうしたいって思ってても、なかなか出来ないんれす…そんな…あたしのこと……土方さんは…どう思ってるん…れすか?」


グラスを通して、困り果てた土方さんの顔が歪んで見える。


「どう、とは?」
「らからぁ…やることなすこと、すべてがドン臭いあたしのことなんて…ただの馬鹿としか思って無いってことれすよね…」
「…………」


沖田さんの「お水を持ってきますね」と言う声がして、右の視界からその姿が無くなり。重たい目蓋を開けていられずにいたその時、すぐ傍で土方さんの温もりを感じた。


「俺は見込みの無い奴には何も言わん主義でな。お前には才能があると思っているからこそ、キツイことも言ってきたつもりだ」
「……えっ…」


背中に大きな手の平の温もりを感じながら、その思いがけない言葉にトクンッと心臓が跳ねた。

咄嗟に土方さんの方を向こうとした瞬間、眩暈とともに重心が崩れ、あっと思った時にはすでに土方さんの腕の中にいた。抱え込まれ、広い胸に顔を埋めるような形で蹲ったままの私に、土方さんはまた優しく呟き始める。


「それに、さっきも言ったが。放っておけないからだ」
「…土方さ…ん」
「これ以上、まだ何か俺に聞きたいことでも?」
「…はい」


酔っ払った勢いからなのか、これ以上言ってはいけないと思いながらも、歯止めが利かず…


「土方さんは…私のこと後輩としか見てないって…ことれすよね…」


そう呟いた途端、視界がさらに狭まると同時に私の背中に添えられていた腕と、もう片方の腕と共に強く抱きしめられた。


痛いくらいの抱擁に肩を震わせながらも、ゆっくりと土方さんの腰元に手を回す。


「土方さん…」
「これでも、まだ不服か?」


強く抱きしめられたまま優しくそう呟かれ、微かな吐息を耳にしてしまった時。言いようも無いほどの幸福感で一杯になっていった。


土方さんも、私のことを想ってくれている?

すぐ傍にあるこの温もりを確認したくて、ギュッと広い背中を抱きしめる。


「水、持って来ました…よ…」


沖田さんの姿は見えなかったけれど、いろんな意味で身動きの取れない私は、土方さんに抱きしめられたままお礼を言った。


「…あ…ありがとう…ございま…す…」
「いえいえ、お邪魔なようなので…僕はこれで」


いつもの微笑むような息を聞いてすぐに沖田さんの気配は消えた。沖田さんがどんな顔をしていたのかを考えると恥ずかしさでいっぱいになったが、それでも土方さんが私を抱きしめ続けてくれたことが嬉しくて。


「土方さん…私、ずっと感謝してたんれす…いつも、怒られてばかりだったけど、何かを…成し遂げた時の喜びや、苦難を乗り越えた時の…達成感を……教えてくれたから…」


お酒の飲み過ぎで息苦しくなりながらも、精一杯の想いを口にすると土方さんは、それを黙って聞いてくれていた。


「らぁから、土方さんについて行けば…間違いないって思って…」


そう言うと、ほんの少しだけ身体が解放されると同時に、しなやかな指先が私の顎元を捉えると親指の腹が下唇をなぞられる。


「……土方さ…ん…」

端整な顔がゆっくりと近づき、次の瞬間とろけるようなキスを受け止めていた。


(…んっ…)


その感触にも酔わされる中、思わず抱きしめる手に力が籠る。そして、離れ行く唇を惜しんでいると、土方さんは私を抱きしめたまま耳元で囁いた。


「今夜はずっと俺の傍にいろ…」
少し掠れたような声に心揺らしながらも、温かい腕の中でこくりと小さく頷いた。





【#3へ続く】

※艶シーンありの為、アメンバー限定になります。#3で二人が愛しあったと思って下さい汗


【#4へ続く】


※↑ぞれぞれクリックしてくださいませ!




~あとがき~


現代版、土方さんも難しいっ(笑)

んでもって、どうしても沖田さんを絡めたくて(笑)


私が、24歳くらいに仕事をしていた頃の事を思い出して書きました♪

あの頃は、まだこんなに景気が悪くなくて、毎晩のように飲み会してたっけなぁ…なんて。

こんな甘い体験もありましたよ( *´艸`)


ああ、若い時は朝まで飲み明かしたっけなぁ(⊃∀`* )


この続きは、まだ書けていませんが…。

アメンバー記事にて後ほど!


今回も読んで下さってありがとうございましたキラキラ