最初にこのタイトルを聞いた時、
よくあるドキュメンタリー風映画だろう、とスルーしていたのですが・・
それは勝手な思い込みでした。
これ、83回アカデミー賞外国語映画賞受賞作だった!
外国語映画賞受賞作は、わたし的にはヒットが多いのです。
スラムドッグミリオネアしかり、古くは、ライフイズビューティフルとかね。
そしてストーリーを知るにつけ、
俄然観たくなってしまい、飯田橋まで足を運んで観てきました。
![最良の日を迎えるために☆目指せ大人sweet婚](https://stat.ameba.jp/user_images/20111215/17/hawaikon/d1/bc/j/o0714050011673202592.jpg?caw=800)
理不尽な暴力受けた時、自分ならどうするだろう?
目には目を、で徹底的に同じステージで抗戦するだろうか?
それとも、同じステージに降り立つことはせず、やり過ごすだろうか?
あるいは、ケースバイケースで変わることもあるかもしれない。
たとえば、それが肉体的なものとは限らず、言葉によるものも含めるとすれば、
自分の身にも、いつ降りかかってもおかしくない訳で。
特に前半は、そんな自問を繰り返しつつ、観ていました。
まあ、この作品での暴力として、端的に暗喩されているのは戦争なのでしょうが・・
ともかく、暴力と、それに対する報復が、本作の鍵となります。
(ちなみに、デンマーク語の原題は、復讐や報復という意味だそう。)
これをベースとして、2つの家族の物語が展開されてゆきます。
冒頭は、アフリカと思われる、紛争地帯の最前線で、治療を行っている医師の姿。
場面はがらっと変わり、誰かの葬儀が行われているよう。
そこで少年が、歌を歌っています。
葬儀の後、父親に歌のことを褒められますが、少年は、どこか父を邪険にしている様子。
亡くなったのは、彼の母親のようです。
この少年、クリスチャンと、紛争地域にいた医師・アントンの息子が、同じクラスとなります。
アントンの息子、エリアスは、学校でいじめのターゲットになっている。
一方父親であるアントンは、妊婦の惨殺を繰り返す、ビッグマンの存在に悩まされています。
そんな中、ある事件が起きるのです。
主なストーリーは、こんなところです。
アントンは、非暴力主義者。
街のならず者に、暴力を受けても、決してやり返さない。
「あいつはおろか者だ、だから相手にはしない」というスタンス。
逆にクリスチャンは、暴力には暴力をもって制すべし、という考えの持ち主。
彼はエリアスのいじめに対して暴力で敢然と立ち向かい、撃退します。
どちらが良く、どちらか悪い、という単純なものでもないし、揺らぐことだってある。
医師と言う職業柄もあるのか、常に理性的であろうとするアントンですが、
そんな彼でも、感情を抑えきれず、自らの主義に反するような行動を取ってしまいます。
むしろ医師であるからこそ、死者の尊厳に対する侮辱を、ゆるすことができなかったのかもしれません。
彼の取った行動は、彼の理想には反する行為であるかもしれませんが、
人間として、取るべくして取った行動とも言え、どうとらえるか、とても難しい。
非暴力という、ある種の理想の追求の難しさについて考えさせられる、とても印象的なシーンでした。
この2つの家族、それぞれが家庭の中で問題をはらんでいるのですが、
その体現方法も良かった。
変に説明くさくならず、自然な感じで、徐々に問題が明らかになっていく演出が巧みでした。
ストーリー全体も、2つの家族の物語と、紛争地域のエピソードを上手く織り交ぜつつ、
静かながらも、緊張感を切らすことなく進行し、最後まで退屈させません。
ずっと重苦しいシーン続きなので、ちょっと疲れますが(苦笑)
観終わった後の充足感は非常に高かったですね。
ラストはちょっとキレイすぎるのでは・・という気もしますが、
あまりに不条理な現実を鑑みると、せめて映画の中くらい希望の光に満ちて終わっても良いのかな、
という気もしてきました。
前述の通り、暴力と報復が、本作の主軸でありますが、
同時に子供をしっかり受け止めることの大切さ、も描かれており
邦題は原題とは異なり、そっちにフォーカスしてつけられたようですね。
(まあ、英題がIn a better worldなんで、そっち寄りにつけたのでしょうが)
なかなかうまい邦題のついた作品が少ない中、
本作の邦題は、本作のラストにも沿っており、良いタイトルだと感じました。
俳優陣は皆さん熱演でしたが、特にクリスチャン役の
ヴィリアム・ユンク・ニールセン(名前長っ)が実に印象的でした。
妙に大人びた、どことなく影のある少年を、好演していました。
また、エンドロールは、自然とか植物などの映像がなんとはなしに流れるんですけど、
本作とそこはかとなくリンクしている気がして、胸に響きました。
とても丁寧に作られた、秀作だと思いますが、
それだけではなく、わたしとの相性が良かったんだろうな。
ストーリーが直球でずどん、と入ってくる感じ。
どんなに評価が良くても、その作品にノレるとは限らないですからねー。
(ブラックスワン とか。)
そんな感じで、わたし的にはかなり心を掴まれ、考えさせられる作品でした。
同監督の過去の作品、
アフター・ウェディング![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fwww18.a8.net%2F0.gif%3Fa8mat%3D1TK34E%2B2A5U9E%2B249K%2BBWGDT)
それと外国映語画賞つながりで、瞳の奥の秘密 も気になるなあ。
未来を生きる君たちへ
原題:HÆVNEN (In a better world)
監督:スサンネ・ビア
出演:ミカエル・パーシュブラント、トリーネ・ディアホルム、ウルリク・トムセン、ヴィリアム・ユンク・ニールセン
マークス・リーゴード
字幕:渡辺 芳子
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