先の「記憶力に難あり」に関する記事の続きです。

 

先の記事では様々な能力上の、または体の機能上の困難を抱えることから、記憶することや記憶の出力の難しさ、学校の成績不振、人との会話の不調などという結果に陥ることがあるという「根本的な問題点」について書きました。

 

では、それにどう対処しているのか、という私たちの親族の実例をいくつか参考までに書いて行こうと思います。ただ、先にお伝えしたいことは、私達が取っている方法や工夫は、この世の中の定型社会の、定型的常識というカテゴリー内におさめられない、逸脱した方法であることも多々あります。そのため、「普通の、定型の人と同じやり方、同じ環境、同じ場所、同じタイミング、同じようなやりとりでの方法を知りたい」と思われる場合は大いに期待外れとなると思いますので、ご期待に沿えないだろうことを先に書かせていただきます。

 

ただ一つ言えることは、能力的、機能的に不利な親族の子達が、そのハンディを抱えつつも、それに妨げられがちな力を「妨げられないような」形で ― それを私達は自然な形だと感じるのですが― 出していく、例えば知的に低いと誤解されている障害部分は妨げている「凹みの部分」という壁に対処して、妨げられていた能力を表に出せるようにする、というような工夫や方法は、確かにある、ということです。

 

具体的にその例を出していきます。

 

まず、<記憶する>ということ、<記憶したことを整理する・出力する>ということにかなりの困難を抱える子達には、定型集団のテストや質疑応答は、まずストレス以外の何物でもない状態です。ここは身体的な機能、脳内の機能、例えると「80歳となったらその能力で10代の力は発揮できない」のと同じで、「機能的にできない部分は確かにある」と思われる部分は、そこについて無理をすることはしません。

 

これはうつ病や気力の喪失など、生きていくエネルギーを喪失しないための二次障害の予防でもあります。何をするのでも大事なのは、生きる幸せや喜びを感じ取れる程度にはエネルギーを常に保持した状態で生活していることが大事だと、私達は経験上感じています。

 

そのため、機能的に無理な部分を無理やり使う方法ではなく、持てる能力で無理なく、結果を良好にしていくという方法を取っています。

 

学習上、会話上、「この子には瞬発的な応答が無理である、また時間制限がある中で強制的に答えさせる、会話させることが非常に苦痛のようである」と思われる場合は、

 

・これらを当然のように要求される乳幼児期の集団生活をしないか、最小限にする→先生と生徒だけの幼児教室へ行く、年長のみの1年にする、教育的な目標を強いられない小規模な保育園で過ごすなどの対処をする。

 

・定型の時間制限、スケジュールで動けないと予測される子は、あらかじめ小学校は支援級を希望する。

 

・記憶を妨げる視覚・聴覚的な刺激の少ない環境で学ぶ(支援級、支援級でパーテーションを準備する、自宅で不登校しつつ学校での放課後テストやレポート提出で対処する、パーテーションのあるフリースクールへ通うなど)

 

・普通級で聴覚刺激を受けないようノイズキャンセリングヘッドフォンを装着して過ごす(環境雑音が消え、先生の声だけ綺麗に聞こえる)。(最期にヘッドフォンを参考に載せておきます)

 

・視覚的に読解等が難しい場合は、視覚機能の検査をし視覚支援教材を使う(教科書を読み上げたものを用いる)、ビジョントレーニングを受ける、読む範囲を制限するシートを手作りして用いる。

 

(支援学校で具体的な視覚支援のアイデアをもらったりしています)

 

・テストの受け方を、医師の一筆をいただいて個人対応にしてもらう(読む時間がかかるため、別時間に別室でテスト時間の延長をしてもらい受ける、支援員に問題文を読み上げてもらう等、医師やカウンセラーのアドバイスを学校に提出し診断上の障害特性に応じたテスト受験における配慮をお願いする。)

 

・学校の授業での読み・書き上の困難を明らかにし、家庭や個別対応塾でのフォローをする。

 

例: 同時処理が最大の問題の場合。

 

学校では「書くことにだけ必死」で記憶できない、または聞くことで記憶はばっちりであるがノートを取ることはできない、など「同時処理ができなため一つのことだけしかできない」事象が発生するので、どちらかを家庭でする、塾でするなどの対応をする。(上記の線を引いた部分は、どんなに頑張らせてもできない能力的な障害がある時には、実務的な対処が必要となります。)

 

普通級ではこの「ノートが取れないのでコピーをしたい、デジカメで映したい」等の希望が通らないことがあるので支援級に在籍するか、それを許可してくれる私立を選ぶか、フリースクール等を利用する、などで対処しています。

 

こうした対処をすれば「勉強ができない」と誤解されることなく、勉強の内容までやっと到達しますので、障害特性に妨げられることなく学べる子、結果が出せる子が多く出てきます。

 

その他の例:書いたり読んだりすることが「学ぶことの障害となる」場合。

 

読み書きが学習の入り口で障害となっている子で、記憶はそこそこ残る子の場合は、見たり聞いたりして学ぶ方法、つまり「動画、聴覚で学ぶツール」を用いると、最も効果的な場合もあります。

 

毎日の学習において支援が必要なので、塾であると高額になり、また親が毎日手助けすることも現実的には無理なので、なるべく安価で一人で学習できる手段を考える必要があるため、パソコンやタブレットを用いた学習ソフトやオンライン学習を多用していることが多いです。

 

注意点は、子供の学習レベルに応じたツールを選ぶことが効果を出すためにも子どもが学習を嫌いにならないためにも最も大事です。学習がどこまで履修できているかにもよりますが、学習レベル順に使っている教材を書くと、

 

・まだまだ基礎もできないない子→「がくげい」という会社のパソコンソフトでタブレットやパソコンでゲームをしながら内容を学ぶ。

参考:(がくげいの使い方を書いている過去記事☆

 

・少し基礎があり、問題が解ける子→「学研ゼミ」のオンライン学習で見たり聞いたりして学ぶ(書かない)、学年を問わず学べるようなので、各科目ともできないところからやっているそうです。(最も簡単な月500円でできるワンダードリルをしています)

 

参考:(学研のオンライン学習の使い方を書いている過去記事☆

 

・学校の学習レベルの理解はできるが、テストは「時間内に書かないといけない」ため、出力の能力の凹みで成績が最悪である、または授業で得た記憶をテスト前まで維持できないため、ドリルやワークなどをする「その時に説明を聞いたり見たりする」必要がある子には、授業全般を動画で好きな時に再生して学ぶ・見て理解する・聞ける「スタディサプリ」で補っています。

 

基本、スタディサプリでおやつを食べながら見る、またはねそべってリラックスしながら音声を聞くなども可能ですし、何度も見直せるので「学校で勉強したことが記憶できなくて宿題ができない・ワークができない・夏休みの宿題ができない」等の悩みのある子は、「自分が欲しい時に情報を引き出せる」このオンライン学習の動画を重宝しています。月1000円ほどなので、毎日使う学習教材としては親族間でも年々、使用者が増えています。

 

参考:(スタディサプリの使い方を書いている過去記事☆

 

 

さて、今日最も書きたかった部分なのですが、小学校から高校まで「記憶に情報をとどめることができず、資料も持ち込みが不可で確認できず、その日、その場で記憶力だけで試験を受ける形式では結果が出せない」ケースの子に関しては定型集団のごく普通の公立校で成績を取るという事が不可能に近いため、高卒認定試験を受けて、通信制大学へ進学することで道が開けています。

 

高卒認定試験は医師の診断書を出して申請すると、障害に応じた配慮をいただいた上での受験ができます。また、今は単位制の学校や学生に合った支援や配慮をしてくれる学校も出てきていますので、「試験が受けられないし、受けても点が取れないから高校すら卒業できない」わけではありません。

 

高校卒業の資格をこうして得た人でも、今度は大学の受験がかなりの負担になる人もいます。大学受験でも配慮してくれる所がいくつかありますし、診断書と、明確な「受験以前の読み書きの困難」については、これは交渉次第で受験可能ともなっていくでしょう。

 

さて、最大の問題である「記憶をとどめられない」ことに関しては、この「受験という場で支援をしてもらって基準をクリアする」ということすら難しくなります。情報を脳内にとどめていない場合は情報を持ち込まないとどうにもなりませんが、それはほとんどの大学受験で不可であるからです。その場合に親族が取っている手段は「通信大学」での学習です。

 

通信大学の場合は、無試験で書類審査で合格を得ることができます。そして入学後の試験は、事前に時間をかけて準備をすることができます。インターネット経由で試験を受けられる大学の場合は資料を用意し、試験中は自宅でそれを見ながら回答することもできます。さらに単位の取得のためにはレポートが中心となりますので、記憶することに自信がなくても、「調べればなんとかなる」タイプにはありがたい学習形態です。

 

通信制大学は自分の特性に合わせた大学、― 例えばスクーリング期間が最短な大学やスクーリング期間が長くても試験はレポートを出す方式であるなど ― を選べば、時間をかけて見ながら書く、覚えずとも調べてその都度書けば単位が取れる、卒業ができる、ということになります。この「覚えて瞬時に記憶を掘り出して出力しなければならない」ことからの解放が、学習に集中できる道を開き、やっと隠れていた知性、知的な面が表に出ることができます。

 

言葉を発しないタイプの重度と思われる自閉の子も、こうした学習ツールを用いたり、通信制の大学を選択することで「勉強ができない」という誤解も打破している現実があります。

 

定型の集団社会で当たり前に、必須とされている聞いて答える瞬発力力、見て・聞いてノートに書く同時処理能力、教えたことは長期的に覚えていくだろうという記憶力や蓄積の能力、これらがあてはまらない発達障害の子には、定型の学校の「普通」では学べない環境であることもあります。

 

子供の学習不振がどこの原因から生じているのかを丁寧に見定めていくことで、こうした対処ができるのであり、対処ができれば障害部分の「学習を妨げている」部分が解消されていき、学習ができる、つまり知性を発揮できる、さらに記憶できない特徴があったとしても、調べて情報を取り出しながら学ぶ形式なら大学での学習すら可能である、その経験が自分の特性を多いに活かした仕事へとつながる、という結果に数珠つなぎにぽつぽつと、到達していきます。

 

発達障害の子にとっての困難は、定型の人間が想像するよりも「普通の環境では解決できない」特性であるケースもある、という例とともに、「この子には無理だ」「学習が身につく能力はない」と諦めているケースでも、実は「普通の中では無理、な状況を解消すれば可能でもある、学習も身につく」ということがある、ということも知っていただければと思います。

 

ここまでは記憶と学習についての内容を主に書きだしました。言葉でのコミュニケーションが難しい例については、まとまりましたら追って記事をUPしたいと思います。

 

<文中でご紹介したノイズキャンセリングのヘッドフォンです>

 

親族の子によって良いという種類が違います。試してから購入することをおすすめしますが、授業に集中できる・先生の話が聞き取れるなど、効果が絶大な子もいます。また仕事場で許可を得て会議中や事務作業中に装着し、周囲の雑音を遮断することで仕事場で集中できている大人の親族もいます。

 

イヤホンでは耳が痛む、耳元で髪がかさかさ言う音がするのが嫌だ、という親族は密閉型のヘッドフォンを愛用しています。

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髪の毛に形がつく、耳の圧迫感が嫌な親族はイヤホンタイプを用いています。

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