俺は酒を飲むのは嫌いじゃないが、そんなに強くない。
入門したばかりの頃は「こういう世界で鍛えられたら、酒も強くなりそうだ」と思っていた。
俺のオカンは酒が一滴も飲めず、神前婚で御神酒(おみき)を口にしただけで倒れそうになったらしい。
オカンいわく
「アルコールに近い成分が含まれたオロナミンCでも酔う」と言うが、これは嘘臭い。
まぁ、それだけ弱いということだろう。
そういえば風邪ひいた時にユンケル飲ませたら余計に寝込んだっけな…(笑)
俺のオトンは生前、かなりの酒豪だった。
俺がデビューして実家に度々帰ると、何故かオトンは俺の部屋を占領していた。
しかも俺のベッドは片付けられており、床に布団を敷いて寝るスタイルとなっていた。
仕方なく隣に布団を敷き、並んで寝るのだが…
真夜中、
「トクトクトク…」
と何かをコップに注ぐ音がする。
目が覚めた俺が電気をつけると、オトンがコップにたっぷり注がれた焼酎を飲み干していた。
俺:「何でいきなり酒飲んでんだよ!?」
オトン:「喉が渇いたから」
俺:「下に降りてお茶飲みゃいいだろ!?」
オトン:「お父さんは、これでええ」
…といった具合だ。
話がそれたが、そんな二人の間に生まれたから俺は中途半端に酒が飲めるのか?
しかし酒を飲む雰囲気が俺は好きだった。
なんかこう…
お互いの心が裸になるような気がしたからだ。
とか言いながら酒の思い出はあまり良くない。
俺が入門してデビューして暫く経った頃だろうか?
合宿所にとある方から日本酒が贈られてきた。
当時の合宿所は志賀さんを寮長として金丸さん、森嶋さん、俺、丸藤、力さん(力皇猛)だった。
段ボール箱いっぱいに小分けにされた日本酒を飲む者はいなかった。
というより、飲む機会がないのだ。
ある日…
合同練習を終えて先輩達も帰り始めた時、合宿所のメンバーでチャンコ鍋を食べながら志賀さんが言った。
「日本酒、減らないなぁ…料理にもそんなに使わないし」
そこで金丸さんが
「橋、お前飲めよ」
と言った。
俺:「まぁ…少しぐらいなら」
金丸さん:「とりあえず1つ飲めよ」
俺:「いやいや、そんな食事中に偉そうに酒なんか飲めないですし雑用もあるかもしれないですし…」
金丸さん:「今日はもう何もねーよ!飲め」
金丸さんがワンカップの日本酒の蓋を開けた。
つづく