モノクローム


新潮社 乾ルカ 2014年6月


モノクローム/乾 ルカ
¥1,728
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母さんが僕を捨てた理由。僕の、これからの生きる道。答えは全部、碁盤の上にある。暗闇の中に切なさがこみあげる青春囲碁長編。




慶吾は施設を出て、夜間の大学に通いながら、信金に勤めている。
店長のはからいで、時間がくれば残業せずに仕事を終えて大学に行かせてもらう。理解ある仕事場に思えた。
しかし、事情が変わり・・・・・・・・・


はからずも
有川浩「明日の子供たち」 に続き、施設で育った少年が主人公。施設を出てからが描かれている。、続きを読んでいるような気分で、苦悩など、重なる部分が多くあった。


同僚の北村真奈との交際、彼女の考え方が慶吾を深く傷つけている。北村真奈のことが腹立たしかった。


慶吾の母は、なぜ、慶吾を捨てたのか。
それは、ミステリーとまではいかなくとも、置き去りにされた時の様子は明かされる。
母に子供を思う気持ちがなかったわけではないようだが、他に方法があっただろうにと思う。

それでも、母に捨てられたことを苦しんできた慶吾にとって、母のことを知ろうと行動したことには意味があったと思う。

囲碁の世界では<一度置いた石はもう二度と動かせない。・・・・・略・・・・・盤上に置くときはちゃんと考えて、必ずそこにいる意味を石に与えてあげなくてはいけない。>
<全宇宙にも例えられるその中に置かれた、たったひとつの小さな石にすら、ちゃんとそこに存在する意味がある。>

それに例えて、慶吾の存在にも意味があることを示唆している。

香田という友達の存在がよかったなあ。慶吾にとって香田との出会いがあったからこそ、救われた部分は大きいと思う。

お気に入り度★★★★