トオリヌケ キンシ

加納朋子 文芸春秋 2014年10月



トオリヌケ キンシ/文藝春秋
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最後にもう一つ、呪いをかけるね。『あなたのことが、大好きです』ひきこもった部屋で俺が聞いた彼女の告白は、「夢」なのだろうか。不平等で不合理に満ちた世界に訪れる、六つの奇跡の物語。

「場面緘黙症」「相貌失認」「醜形恐怖症」「半側空間無視」・・・・・・・・・・・・・
聞きなれない言葉だ。いろんな障害があるものだな。

障害や病気、あるいは、特殊な能力がある人たち。一般の人とは違う。
そんな人たちの苦悩や葛藤が、描かれている。
まわりから、理解してもらえないとたいへんだろうなと思う。

それでも、病気や障害を持っていても、希望させ失わなければ、道は開けるのだということをこれらの話は、物語っていた。

途中、虐待などのつらい部分もあったが、どれも心に響く話だ。
おお、そういうことだったのかと、驚きも用意されていた。


ラストの「この出口の無い、閉ざされた部屋で」には、いままでの登場人物のその後が少し描かれていて、つながりをみせているが、今はこんな風に過ごしているのだとほほえましい気持ちになった。

しかし・・・・・・
<俺>は、自分の意志で引きこもっているのだと思いきや、あんな部屋だったとは!
作者の境遇と重なり、切ない気持ちでいっぱいになった。
それでも、明るい気持ちで読み終えることができた。

いいなあ,加納さんの描く世界!


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