今後は隠し録音は通用しなくなると思われるが・・・・ | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

刑事裁判を自ら受けたことがある人でなければ分からないことを的確に訴えている人たちがいる。
私が知っている人の中で3人だけ名前を上げるとすれば、村上正邦、鈴木宗男、佐藤優の各氏である。

刑事裁判全体についての意見ということになると若干バランスを欠いた発言になり易いが、自らの取調べ経験に基づいているから、その限りで物の見方が的確で鋭い。
時々ドキッとするような卓見を開陳される。

特に、佐藤優氏が鋭い。
佐藤氏は小沢裁判には直接関わっていなかったようだが、小沢氏の元秘書の石川知裕衆議院議員に対する佐藤氏のアドバイスが小沢裁判に決定的な役割を果たしたようだ。

私は、かつて佐藤氏が石川氏にとっての最高の弁護人だと評したことがあるが、結果的に小沢氏にとっての最高の弁護人が佐藤優氏だった。
佐藤氏は、石川氏の名前を上げるが、そうではない。
佐藤氏のアドバイスが小沢裁判の帰趨を決定づけた。
佐藤氏が石川氏に対して検察官の取り調べを録音しておいたらいいとアドバイスをして石川氏がその通りにしたからこそ、石川氏の検面調書が証拠から排除された。
石川氏の隠し録音があったからこそ、検察官の作成した捜査報告書の不実も明るみに出た。

石川氏が佐藤氏のアドバイスだけで隠し録音をすることを決意したのかどうかについては多少疑念があるところだが、佐藤氏のアドバイスがなければ、石川氏が取調べ検察官に隠れて取り調べ状況を録音することなどしなかったはずだ。

検察官が石川氏に対して録音などしていませんよね、などと念押ししながら尋問をしていたことが明らかになっている。
検察官からそんなことを言われれば、普通はたとえ録音機を用意していても実際には録音などしない。

佐藤氏の存在、佐藤氏のアドバイスが石川氏にとって決定的に重要だったということだ。
そういう意味でも、佐藤氏が石川氏にとって最高の弁護人であった、と言って差し支えない。

もっとも、検察庁は特捜部事件についてはすべて録音することに決めたようだから、今後はこういう手法は通用しなくなるはずだが。

参考:佐藤優氏のブログ

「佐藤優の眼光紙背:第130回

4月26日、東京地方裁判所は、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で強制起訴された元民主党代表の小沢一郎衆議院議員に対して無罪を言い渡した(求刑・禁錮3年)。良識に基づいた妥当な判決と思う。
日本の刑事裁判は、起訴されると99.9パーセントが有罪になる。旧ソ連の裁判よりも有罪率が高い。こういう状況で、無罪判決が言い渡されるのは、奇跡に近い。今回の無罪判決を導く上で、いちばん大きな役割を果たしたのが石川知裕衆議院議員(新党大地・真民主)だ。

捜査報告書の虚偽 大善裁判長「あってはならないこと」
 資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎元代表(69)の26日の判決公判で、東京地裁の大善文男裁判長は、東京地検特捜部の検事が小沢元代表の元秘書、石川知裕衆院議員(38)を再聴取した際に作成した捜査報告書に虚偽の内容があったことについて、「あってはならないことだ」と批判した。
                                 4月26日MSN産経ニュース

もし、石川氏が、検察官との取り調べの様子を隠し録音していなければ、検察の違法、不当な取り調べによる調書が証拠として採用され、小沢氏が有罪にされていた可能性が十分ある。それを考えると空恐ろしくなる。
実は、石川氏に隠し録音を勧めたのは筆者である。当初、石川氏は「そういうやり方は性にあわない」と隠し録音をすることに強く抵抗していた。理由は取り調べを担当した検察官に対する感情移入だ。検察官にもいろいろな人がいる。取り調べ担当した田代政弘検事が人間的に優れた人だっので隠し録音のような信頼を裏切るようなことはしたくないというのが石川氏の率直な気持ちだった。
筆者は、「鈴木宗男事件で僕を取り調べた西村尚芳検事も人間的に優れた人だった。彼には迷惑をかけると思ったが、僕は『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮文庫)を書いた。国策捜査の実態を記録にし、歴史に真実を残さなくてはいけないと思ったからだ。検察官の取り調べを録音し、小沢事件の真実を残すのが国会議員としての責任と思う」と言った。石川氏は、「勇気を出します」と答え、隠し録音の腹を固めた。
小沢氏に無罪判決が言い渡された後、筆者は、石川氏と電話で話をした。石川氏は、「裁判所が良識ある判断を示してよかったです。あのときICレコーダを鞄にしのばせておくことには、ひどく抵抗があったのですが、勇気を出して録音してよかったです」と述べた。その後、石川氏は、「国策捜査はこれで最後にしてほしいです」とつぶやいた。
筆者には、石川氏の気持ちがよくわかる。検察の独り善がりの正義感によって、国策捜査によって政治家を排除するという手法が民主主義社会の基盤を破壊し、日本国家を弱体化させている。こういう不毛なことにエネルギーを割くのは、もうやめにしたい。(2012年4月26日脱稿)」