小沢氏が石川被告に渡したと言われる4億円は、本当に4億円? | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

新しい読者の方から実に抑制の利いた、論旨も明快な、大事なコメントを頂戴した。

小沢裁判を考える上での基本問題に繋がる可能性があるので、そもそもの私の疑問を書いておきたい。
これに対する明快な解答があれば、小沢裁判に対してもう少し的確な見通しを語ることが出来るのだが。

さて、私が引っ掛かりを感じているのは、そもそも問題の土地は小沢氏個人の買い物だったのではないだろうか、ということだ。

今日の小沢公判の証人尋問では、どうやら小さな建物を建てるための4、50坪の土地を大久保被告が物色しており、仲介業者がいくつかの土地の資料を提供したところ小沢氏がその資料を見て、分譲予定の土地を一括して買え、ということになり、大久保被告が仲介業者と交渉し、その後の手続きを石川被告に委ねた、ということのようである。

一政治団体が分譲地全体を買い占める、ということは通常は考えられない。
本当は小沢氏個人の不動産取得だったのをあたかも政治団体の不動産取得のように仮装するための工作だったのではないか、というのが私の疑問である。

もしそういうことだったら、4億円の現金を石川氏に預けたのは自分のためであり、陸山会の口座に入金したのが間違いだった、ということになる。
こういう理屈を小沢氏や石川被告が初めから言っていれば、少なくとも10月12日ごろの4億円(もっとも、本当に4億円だったかについては、後述する通り疑問があるが。)を陸山会の収支報告書に記載しなくても何ら違法ではないことになる。

この事件が表に出はじめたときに、私は、この土地は小沢氏個人の土地の取得で、陸山会ではありません、と言ってしまえば事件は潰れるのではないか、と書いておいたが、小沢氏や小沢氏の関係者の方々は私のブログを読まなかったようだ。

結局この事件は、小沢氏や小沢氏の関係者が作り出したもので、いわば自縄自縛のところがある、というのが私の見立てである。

いずれにしても小沢氏や小沢元秘書は、小沢氏から石川被告が4億円の現金を受け取って、陸山会が問題の土地を購入した、ということを異口同音に認めているようだ。
もう少し違った法律構成があっただろうに、というのが私の率直な感想である。

さて、もう一つ、どうしても腑に落ちないことがある。

本当に4億円がいっぺんに小沢氏から石川被告に渡されたのだろうか、ということだ。

この4億円の現金がどこに眠っていたのかもそうだが、むしろ私が不思議なのは4億円の現金を石川被告はどこに蔵ったのか、ということだ。
4億円の授受があった日は10月12日、最終的な代金決済日は10月29日だったということになっているが、その10月12日に4億円全額を石川被告に渡した、というのが私には不思議でならない。

私だったら、手付金として支払う分だけをとりあえず渡す。
必要がある都度お金を渡す。
いくら信用している部下であっても、お金は別である。
部下の手元には、一時的にでも一切お金が残らないようにするというのが親切というもの。

4億円ものお金を預かったら、一歩もお金の傍から離れられなくなってしまうのが普通である。
それを分散して、別の日に別の銀行支店に持参して陸山会のそれぞれの口座に入金した、と石川被告は認めているようだから、私には不思議でならないのだ。

どうしてそんなことをしたのか、と何度も聞かれていると思う。

「合理的な説明はつきません。」

受け取り手によって微妙にニュアンスは違うだろうが、裁判所の目で見たら石川被告はおよそ合理的な説明がつけられないで困っているような印象を残す答えを法廷でしたようだ。

陸山会の口座に分散して合計4億円の入金があった事実は、銀行の取引記録から明らかなようだ。
この金はどこからきたのか、と問い質されて、「小沢氏からです。小沢氏の個人事務所の金庫から出してもらって入金しました。」と答えているはずだ。
小沢氏本人は知らぬ存ぜぬで、「そんなことは検察が調べて全部分かっているはずだ。説明する必要はない。」の一点張りだろうが、4億円の現金が一度に小沢氏の手から石川被告の手に渡った、というのがそもそも無理筋、納得し難い話なのである。

石川被告も小沢氏も一度に4億円の現金の授受があったと主張しているので、指定弁護士も目下のところそのストーリに乗って公判を進めているだけだ、と考えておいた方がいい。

闇献金の事実の有無に深入りしないで、指定弁護士が、単に出所について合理的説明な出来ない多額の現金の入金や出金が陸山会の収支報告書に記載されていない、ということだけを捉えて起訴状を書いたのには、どうやらこういった事情も関係ありそうだ。

この2点についてスッキリした回答をしてくださる方の登場を待っている。