この問題は、そろそろ決着させた方がいい。
憲法15条の重みを再確認したい。
第1項には、公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である、と規定している。
地方公務員も公務員である。国会議員も地方議会の議員も公務員である。
このことを疎かにしてはならない。
地方議会の議員は公務員に当たらないのではないか、常勤でない国会議員や地方議会の議員は、ここでいう公務員には当たらないではないか、という疑念を抱く人がおられるかも知れないが、国会議員も地方議会の議員も公務員である。
第2項には、すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない、とある。
現実の国会議員や地方議会議員の活動を見ていると、余りにも党派性が強く、憲法15条2項の精神がどこかに置き去りにされているように思うが、私たちはこの原則は堅持しなければならない。
一部の団体や特定の個人の利益だけを追求するような人は、そもそも全体の奉仕者としての適性を欠いており、公務員たる資格がない、と私は思っている。
第3項は、公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する、とある。
第3項の規定からも国会議員や地方議会の議員が憲法15条の公務員に含まれることが理解されるだろう。
第4項は、この選挙権の行使に関する規定である。
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない、とある。
何故、外国人の地方参政権が問題になるかと言えば、第8章の地方自治の規定が曖昧だからである。
第92条に、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第93条1項に、地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する、同2項に、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する、と規定されている。
ここでいう「地方公共団体の住民」が「日本国民で当該地方公共団体に住所を有する住民」であることは字義の解釈から明らかなところだが、最高裁の判決の傍論で、外国人に地方参政権を認めるか否かは立法政策の問題で、憲法は禁止していない、と書かれたためにこの問題が錯綜するようになったことは皆さんご承知のところだ。
憲法制定当時の日本の政治状況を考えればいい。
当時、憲法制定に携わった者の間で外国人の参政権を考える人は、一人もいなかったはずだ。
憲法に地方自治の章が設けられたといっても、憲法のその他の原則をひっくり返すようなことなど誰も考えていない。
あくまで憲法の定める基本理念や原則に従って新しく定められる法律の範囲内で、地方議会の議員の選挙権を想定しているものであり、憲法15条を凌駕したり、逸脱するようなことは考えられていない。
最高裁判決の傍論がやや筆が進み過ぎた、というのが実際で、この傍論だけに依拠して外国人の地方参政権の議論を進めることは大きな間違いである。
憲法改正の議論を先行させるべきで、憲法15条の改正なくして永住外国人に地方参政権を付与する法案をこの通常国会に提出し、その早期成立を図る、などということは、暴挙以外の何物でもない。
私は憲法改正論者ではあるが、憲法の規定が現存する以上これに抵触するようなことはすべきではない、と確信している。
今後の最大の政治イッシューになる可能性があるので、あえて私の意見を述べさせていただく。