この危機は深刻である。
先日来、自民党の各部会で来年度の税制改正について精力的に議論を始めているが、一日一日日本の経済が悪化してきている様子が伝わってくる。
これまでの延長線上に日本の将来像を描くことが出来ないことが見えてきた。
先日の雇用生活調査会で、ある議員が放った一言が未だに脳裏から去らない。
「政府は今後の失業率を5パーセントとか6パーセントと読んで緊急経済対策を打とうとしているようだが、それで本当に大丈夫か。
この勢いでは、10パーセントに近づくぞ。」
そうなったときは、とんでもない社会になる。
仮に200万人から300万人が職を失う、という事態になったら、その家族を含め500万人から600万人の方々の生活が破綻することになる。
多くの家庭が倹約生活に入れば、日本全体で消費が抑制され、商店等の経営が一気に破綻する。
授業料の支払いや医療費の支払いが出来ない家庭が増えれば、これに伴って学校や病院等の経営もおかしくなる。
まず12月が第1段階だ。
11月25日の決済を乗り切った企業が12月のボーナス時期を無事乗り切れるか、が問題だ。
1月、2月に様々な支払いを延ばしてきた企業も3月の期末には決済を迫られる。
決算時期の金融機関の取り立ては峻烈だ。
自分のところの生き残りを懸けての回収、ということになる。
これが第2段階である。
就職が内定した多くの若者が内定取り消しで困っている。
関係部署では、内定取り消しは出来ない、ということを企業の採用担当者に指導しているようであるが、企業そのものの存立が危ぶまれるようになれば、雇用を守ることも出来ない。
雇用保険等で勤労者の生活を守れるのは、せいぜい一年であろう。
生活保護等の福祉の財源も、あっという間に底をつく。
雇用だけは、どんなことをしても守らなければならない。
地方財政も逼迫している。
この段階で地方分権や道州制などと言っていても、議論をするだけで何の結果も出せない。
即効性のある対策を次から次へと出していく、機動性と柔軟性が求められている。
これまでの路線を転換すべき時である。
私は、そう確信している。
非常時には非常時に相応しい対処の在り方がある。
麻生総理は、ペルーのリマで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席する。
11月15日にワシントンで開催された金融サミットから僅か1週間後の国際会議で、まさに席の温まる間もない大変なスケジュールをこなしているのだが、こういう非常時にはバタバタと慌てることなく、ぐっと腰を落として冷静に対処していただきたい。
APECから帰国後に第二次補正予算の提出時期や今後の政治日程についての総理の所信が述べられることになっている。
ここが、日本の将来にとって大事な「ポイント」(切り換え点)になる。
君子は豹変する、という。
麻生総理も、どうぞ豹変して下さって結構だ。
麻生総理は僅か20人のグループの長でしかない。
どんなに強がっても、多くの議員がそっぽを向いていたのでは、求心力が日に日に低下する。
今は、様々な力を結集して非常時に臨むべき時。
自民党の最大会派である町村派や第2位の津島派に所属するベテラン議員の力を借りざるを得ない時期である。
総裁選の勢いでいわゆる側近やお友達で内閣を固めてしまい、うるさ型の人たちを敬して遠ざけたような印象がある。
町村派の人たちはいらないよ、みたいな組閣になっていることに気が付くべきだ。
保守は、結束してこそ力を発揮する。
麻生総理が平沼氏や安倍元総理と気質が似ているのであれば、過去の経緯は度外してこれらの人の協力を仰いでみては如何か。
安倍元総理を拉致問題担当・対オバマ戦略的外交構築の柱とし、平沼氏を緊急経済対策担当責任者に登用する。
副総理に森元総理に登場願う。
とにかく今のままではあちこちから異論が吹き出し、押さえが利かなくなる。
日本の迷走が始まってしまう。
日本の迷走を防ぐために麻生総理が豹変することは、構わない。
民主党の小沢氏と新しい連立の枠組み作りの話し合いを進めることにも、あえて異議を述べない。
君子は、豹変せよ。
あえて、繰り返す。
日本は、これから非常事態を迎える。