外国人介護職 法改正はいったい門戸開放なのか | 群青

外国人介護職 法改正はいったい門戸開放なのか

不足する日本の介護職のため、介護分野で外国人介護職の緩和をするよう法律改正する動きが進んでいる。
 

●二つの法改正案が衆議院で可決 10月25日

  △1 外国人技能実習制度の適正化法案

     ・・・・ 技能実習の対象職種に新たに「介護」を加える

  △2 出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正法案
     ・・・・ 日本で介護福祉士の国家資格を得た外国人を対象に、「介護」の在留資格を設ける

さて、この制度改革で、介護職不足にかなりヒットを打てたんだろうか・・・・。
まずは、可決事項について確認させて頂きたい。
このうち△1は、実習なるものの実態(安い賃金で長時間労働を強いられる)をふまえ、受け入れ企業・団体監督強化。新たに「外国人技能実習機構」を設け、受け入れ先が提出した実習計画を審査、認定する制度。
細かくは、実習計画に報酬・労働時間明記、報酬額の日本人との格差をなくす・・・など。

△2は、「留学」の在留資格で来日した人が国内の専門学校などで学び、介護福祉士の国家資格を取って、それにて「介護」の在留資格を得るケースを想定しているとのこと。

 

問題は△2だと思える。
EPA(経済連携協定、2008年開始)の来日外国人で国家資格「介護福祉士」を取得できた介護就労希望者は、2015年度までにたったの402人だった。
もともとEPAによる介護職は、日本の介護職不足を解消しようという目的ではなく、相手国との経済バーター取引の一つでしかない。人数なんかどうでも良いという考え方であった。
今回の法改正案は、目的がこのEPAと大きく異なって、「外国人介護職に門戸」を開いていこうというものである点は、注目できそうだ。

といっても、自分は、その筋に詳しい専門家でもなんでも無い。
果たして、△2によって、外国人介護職は格段に増える実質効果があるのか・・・・という点である。


●専門学校留学生が急増とのこと
この疑問に答えているのが、下の毎日新聞10月29日であった。

■ <介護福祉士>留学生が急増、10倍に 日本で「手に技術」 毎日新聞 10/29(土) 11:58配信

(全文)
◇2年で在留資格、法改正を見据え

専門学校などで介護福祉士を目指す留学生が従来の10倍超に急増している。国家資格を取得した外国人が継続的に就労できるよう在留資格に「介護」を設ける入管法改正案が国会で審議されており、法改正を見越した動きだ。介護人材は2025年に30万人以上不足するとみられており、「外国人介護福祉士」の活躍が本格化しそうだ。

東京福祉保育専門学校(東京都豊島区)は今春の介護福祉士学科の入学生
60人のうち8割の48人が留学生。1年のベトナム人女性、グウン・フィン・エンさん(26)は「介護福祉士になり将来は家族を呼び寄せたい」。仮に改正法が来春に施行されれば、新制度の“第1号”となる2年のネパール人男性、カナル・プラモドさん(32)は「将来はネパールで日本の介護技術を広めたい」と夢を語る。

日本介護福祉士養成施設協会(東京都千代田区、略称 介養協)によると、専門学校など国指定の介護福祉士養成機関(約400校)に入学する留学生は例年、全国で20人ほどだったが、今春は257人に増え、全入学者の3.5%を占める。同協会は「改正法成立でさらに急増する」とみる。

外国人は従来、経済活性化を目的に複数国間で人や物、労働力などの移動を自由化する経済連携協定(EPA)に基づき、介護福祉士として就労。EPA以外のルートでは国家資格を取っても介護福祉士として働けなかった。

入管法改正案は今臨時国会での成立も見込まれており、
改正後国指定の養成機関で2年以上学んで卒業した外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようになる

現在は国指定の介護福祉士養成機関を卒業すると国家資格を得られるが、法改正により、22年度卒業生からは国家試験に合格しなければならなくなり、留学生にも適用される。

東京家政学院大の西口守教授(高齢者福祉)は「EPA制度と違って、働く前に専門的・体系的に介護を学べる。外国人介護福祉士は着実に増えるだろう」と話している。【福岡静哉】


◇外国人介護福祉士
現在は「経済連携協定」(EPA)に基づき、インドネシアなどから介護福祉士候補者を受け入れている。3年の実務経験後に国家試験に合格すれば継続的に日本で就労できるが、2度不合格なら帰国する決まり。一方、入管法が改正されると、「介護」の在留資格を得るには、留学生の資格で入国後、国指定の介護福祉士養成機関で2年以上学んで卒業し、国家資格を取得することが条件になる。現在は卒業だけで国家資格を得られるが、22年度卒業生以降は試験合格が必須となる。

これ、ちょっと、ややこしい。よく読んでも理解できそうにない。
どうやら・・・・

▲現時点: 国指定介護福祉士養成機関にて2年間以上学ぶと、それだけで介護福祉士の国家資格がもらえる(試験を改めて受ける必要が無い)
▲法改正後: 学んだ上で、介護福祉士国家資格の試験に合格して初めて国家資格が得られる(2022年度以降)


ンっ?? 国家試験至上主義。 もしかして、これは介護福祉士をより難関化するんでは・・・・?? そして、もしかして、養成機関の教育がかなり低質で信用ならないんだと、国は言っているようにも聞こえるが。

●PMC 「なぜ外国人介護士なのか」

外国人による介護というと、5、6年程以前では、質が低下する、日本語が伝わらないじゃないか・・・と、大反対が多かったように思います。
確かに、外国人だと聞くと、日本人利用者の気持ちを理解してくれないかも・・・と憶測を持つ方はいらっしゃるだろうな~と推測する。
それでも現実的には、実は、日本に暮らしているフィリピン人等の介護職は全員とは言わないが、評判がいいし、職員として使ってみて、なかなか評判がいいな~と、事業者側も外国人嫌いの呪術が溶けてきたのではないか・・・と存じます。

この会社のHPに、簡単ながら「なぜ外国人介護士なのか」というページがありました。ホスピタリティという言葉にご留意下さい。
 

介護業界の人材不足は深刻なものになっています。必要な介護職員を確保できず、施設の一部を閉鎖する事業所もでてきています。今後10年間で日本の介護社会も新たに約100万人の介護士が必要となってくると言われています。少子高齢化、どんどん進行している介護人材不足の中、外国人介護士の力を借りなければならない日はすぐそこまでやって来ています。
ピーエムシーでも、2007年より今後の更なる人材不足への早期対策準備も含め、新潟県内の介護施設への在日外国人介護士派遣を開始し、教育体制を強化し、様々な介護職支援活動を行っています。

新潟県内の施設でもで外国人介護士に関して理解し、受入れていただいてる施設が少しずつですが増え、施設側・利用者の方々からも高い評価を受けています。 

 

◆フィリピン人等の外国人介護士

介護の仕事は基本的には”心”の仕事です。人と人とのふれあいが大切になってきます。 実際、フィリピン人等外国人のホスピタリティ(もてなしの心)は世界でも認められています。
もともとフィリピン人は
大家族の中で育ち、お年寄りを敬う気持ちを自然と身に付けています。 介護スタッフに求められる人間性を兼ね備えています。相手を思いやる心、心からの優しさ、フィリピン人の明るさと笑顔でお年寄りを元気にさせてくれます。
そして施設内でも、彼女達の存在(
明るさ・一生懸命さ・素直さ・温かさ)が新しい風的役割を果たし、職場の環境が変わっていきます。
忙しさに追われている日本の介護現場で、忘れていた様々な”心”を思い出させてくれます。


南武線沿線の特別養護老人ホームで働き出した知人の永住権保持のフィリピーナのマリアから話を聞いたことがありました。
もう6年前のことではありますが・・・・。
障害者生活をフィリピンで送られていた方からも、コメントを頂きました。
そのことは、話題
「居眠りアテ(2)」2010年9月27日にアップしています。

 

◆在日外国人?

ピーエムシーの在日外国人スタッフは、日本に長期間住んでいる在日外国人の方で、大半が日本人と結婚され、日本の文化や習慣も毎日の生活の中で、自然と身に付いています。
「日本語は話せるの?」とよく聞かれますが、日常の会話は問題ありません。平仮名・片仮名においても、大抵の人達は読み書きできます。
永住・定住等の在留資格を持っていることが必須条件となっています。

◆介護事業所の今後を考える

日本の介護分野において、人材不足が今後更に深刻なものとなり、人材確保が重要な課題となってきます。数年前まで正社員で対応していた職員も、パート職員が増え、介護士派遣を活用する事業所も増加してきています。今後は更に外国人介護士雇用の数が増えていくと考えられますが、来日した外国人の方(片言の日本語と文化や習慣の違う人達)の雇用をうまく対応していけるかどうか疑問です。
そこで、日本に住み、日本語が話せる在日外国人介護士を今から就業させ、本国から介護士が来た時に、先輩外国人介護士として指導・フォローができるような将来を見据えた準備を進めておくことを提案します。
今だからこそ、将来について前向きに考える必要があると考えます。今から在日外国人介護士(当社が運営している養成講座にて介護職員初任者研修資格取得済み)を雇用していただき、準備しておくことが、今後の人材問題解決の近道です。


これ、コマーシャル半分ですけど、ここに書いてあるフィリピン人の大家族の中で育ったホスピタリティの心と、そして明るくお年寄りに接するテクニックは、とてもじゃないが日本人スタッフでは演出出来ないかも・・・と思います。

●そもそも・・・・個人的感想として
まずは、法改正は、ペーパー主義の日本だな~と強く感じます。
確かに、
介護の現場は、基礎知識を身につけること、日本人利用者・チーム内職員等とのコミュニケーションがよく出来ること。この二つは重要だと思います。
しかし、なんで介護福祉士なる難関の国家資格が前提になるのか、甚だ疑問を感じます。

「整合を図る」というので、政府は、国家資格を試験でパスすることに厳しくしてしまった模様ですね。
「基礎知識」がいきなり介護福祉士の資格に還元されているのが、やり過ぎではないか・・・・と、自分は感じます。
チームプレーなんだから、チーム長は利用者さんの日本語を全て理解するしっかりと介護福祉士さんで、チーム員を指導すれば良い。
しかし、圧倒的多数のスタッフは2級ヘルパーで良いはず。圧倒的な介護職不足に対して、国家資格前提にするのは、かなりの勘違いなのではないだろうか・・・。
これは、介護職ド素人の自分の独断と偏見だが、介護の専門家さんはどう思っているんだろうか。

そこで、イメージ的にしか言えないですが、例えば次のような制度設計は考えられないのだろうか・・・と、勝手ながら
思います。
A. 非国家資格の資格2級ヘルパーと国家資格の介護福祉士の間に、もう一つ「準」介護福祉士の資格を用意すること。

B. 上にあげた独断と偏見である①と②について、国家資格ペーパーテスト偏重主義ではなく、「A.」合格の外国人介護職に継続的な研修機会を義務づけること。
C. 受験時に実技試験でホスピタリティを評価点の一部に採用すること。微妙な個人差があるので、評価採点は介護職現場体験者や養成機関の先生が担当すること。


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