ガデラーザの攻撃によって破壊されたエウロパの破片が地球上に落ちた…。その情報を掴んでいたのは、当然のことながらガデラーザの所属する地球連邦軍だ。そして、大気圏内に突入した破片を追跡観測して落下地点を誰よりも知っているのも、連邦軍と連邦政府に決まっている。

破片の落下は民間人にも目撃されていたし、一部マスコミもそれを察知していたが、最も早く力を入れて調査に乗り出していたのはやっぱり連邦軍の関係者だ。しかし、落ちた破片のうち回収に成功したのは約2割。残りの8割ほどは落下地点に存在せず、行方不明になっていた。このことから推測出来ることは、破片が誰かに持ち出されたか、もしくは破片自体が自らどこかに移動などして消え失せたか。常識的に考えれば、ただの宇宙船の破片が自力で移動するはずは無い。しかし、調査を軍から任されたミーナ・カーマインとビリー・カタギリは、その優れた直感で非常識な方の可能性を検証していた。常識とか固定観念に囚われて想定を限定してしまわないことが、優れた科学者の資質なのかも知れない。

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この時点ではまだ破片の正体は何もわかっていなかったが、ミーナとビリーは破片落下後、世界各地で起きている不可解な事件や事故(軍用車や地下鉄等の原因不明の暴走等)が、破片の紛失(行方不明)と何らかの関係があるのではないかと読んでいたわけだ。特にミーナの仮説は鋭いところを突いていた。自分自身の調査能力や連邦のデータベースのアクセス権限では確認し切れないものの、近年知る人ぞ知る最新トピックスとなっていた“イノベイター”=“強い脳量子波を持つ者”が何らかの関係をしているのではないかと推定していた。

そこに丁度良いことにビリーが現れた。ビリーは連邦軍技術陣の中でも、技術的に高い評価を受けており、マネキン准将等の有力者との人脈もある。ミーナでは無理でも、ビリーなら手を回して入手出来る情報もある。ミーナが望んだ情報は、連邦政府の極秘資料。脳量子波の高いイノベイターとなり得る因子を持つ市民の所在地データベース。

エウロパの破片の落下地点と、最近頻発している謎の事件の発生箇所と、イノベイターの因子を持つ市民の所在…この3つを重ね合わせて関連性を調べたいということだ。その読みは概ね当っており、ELSはどうやら脳量子波に引き付けられるように落下地点から移動し、その経路にて不可解な事件を起こしているらしかった。脳量子波を発する者がELSに狙われている…この仮説から、イノベイター因子を持つ人々を、脳量子波遮断施設に避難させることになった。

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ガデラーザがエウロパを破壊したにも関わらず、その後CBのトレミーの前にエウロパが再び姿を現した。勿論、エウロパの同型艦が複数あるはずがない。今度のはエウロパの残骸にELSが接触融合したものではなく、ELS自身がエウロパを真似て再現したものだ。要はこのことからは、ELSは一度同化したモノの情報を十分に学習すれば、オリジナルがなくてもELSだけで擬態出来るということがわかる。つまり、相手を乗っ取るだけじゃなく、情報さえあれば自分達だけでも似せて作り出せるわけだ。

ELSはその気になればエウロパを何度でも再現することが可能なのだろう。この能力が後々ELSによるGN-X Ⅳの量産(?)に繋がるわけだが。

ELSが何故人類の建造物や製造品に擬態するのかは完全にはわからないが、少なくとも接触することで相手の情報を学習し、その姿形や機能を何度でも模倣することが出来るのは恐るべき能力だ。人類側の持つ優位点は、ELSに学習されて(コピーされて)しまえばELS側の優位点にもなるのだから。劇中の映像からは、ELSにはサイズや形状の異なるものが数種類確認されていたが、このサイズや形状ももしかしたらELSという生命体の生まれつきの姿じゃないのかも知れない。これまでの長旅で同化して学習して擬態した結果という可能性もある。

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ただし、ELSは接触したものなら何でも学習出来るかというと、どうやらそうでもなさそうだ。ELSは、アレルヤとマリーが訪れたモンゴル自治区にある太陽光発電の受信アンテナ施設でも、そこの大勢の職員たちを同化しようとしていた。しかし、施設職員はELSとの完全同化には成功してなかったし、職員達の脳から人類について正確に学ぶこともなかった。だから、その後もELSは人類に対して間違ったアプローチをし続けたのだと思う。もしも、普通の人間との融合・同化が簡単に行えて思考や記憶を学習出来るなら、ELSは既にこの時点で人類を理解し、人類に合わせたコミュニケーションを行っただろうから。

ELSはやはり機械との同化は出来ていても、人類型の生物との同化は上手く行かなかったのだ。ELSは人間と接触しても人類の思考を読み取ることは出来なかったし、人間はELSによる同化侵蝕に耐えられず生命活動を維持出来なかった。ただし例外はあった。イノベイターとなる因子を持っていたアーミア・リーは、同じようにELSからの接触を受けて半身が同化されかかっていたが、意識不明ではあったものの死んではいなかった。

その後、アーミアは覚醒してELSとの共存を果たしたことから、何らかの条件さえ揃えば、脳量子波を通じてELSと同化した人間は意識共有し、生命活動も絶えない事がわかる。ただし、同じようなイノベイターでもデカルトはELSとの同化・共存を果たせなかったので、脳量子波を持つイノベイターなら何でも良いというわけでもなさそうだ。