GNT-0000 ダブルオークアンタ
ダブルオーライザーの後継機…であることに間違いはないのだが、“イノベイター専用機”としての新たなコンセプトも盛り込まれた機体である。開発に携わったリンダ・ヴァスティが「戦いをやめさせる為の機体…」と言い、イアン・ヴァスティが「それが刹那の望んだガンダム…」と言っていた。

これまでのガンダム…最初に刹那が乗ったエクシアは、刹那がCBに参加する前から開発がされていて、予め用意されていた機体に刹那が乗っただけだった。次のダブルオーは、予め刹那をマイスターとして乗せることを想定はしていたと思われるが、本人不在中(行方不明)に開発された機体だった。なので、刹那の希望等を開発コンセプトとして盛り込んだりはあまりされていないはず。しかし、今回のクアンタは刹那の望む方向性をコンセプトにしているという。

GNドライヴに密かに仕込まれていた『トランザムバースト』のシステム。それはダブルオーライザーでは、刹那が意図することなく自動的に(勝手に)発動したものだった。イオリア計画の真の目的のひとつとして、ブラックボックスに極秘で組み込まれていたシステム。それは搭乗者が純粋種のイノベイターとして覚醒した事を感知すると、自動的に作動するものに過ぎなかった。しかし、これによって高濃度GN粒子の持つ特殊な作用=意識共有効果が判明し、この作用を利用して人々の意識を繋げる事で、誤解や偏見を解き争いを沈静化させることも可能と考えたのだろう。

ダブルオークアンタでは、このトランザムバースト機能を予め標準機能として想定し、勝手に発動ではなく意図的に自由に発動出来るような機体として設計したのだと思う(ここまでは既に粒子貯蔵タンク型のダブルオーライザーでも実現したが)。そしてさらに、トランザムバーストのバージョンアップ版として、『クアンタムシステム』も搭載した。ダブルオークアンタは、全体的な性能や戦闘能力も大幅に向上しているが、何よりもクアンタムバースト機能の使用を大前提とした、高濃度GN粒子の大量散布による意識共有を最大の目的(大前提)とした機体なわけだ。

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ダブルオークアンタの「クアンタ」は、量子を意味する「Quantum」の複数形「Quanta」に由来していると思われる。ガンダムの表記は「QAN[Τ]」だけど。ダブルオークアンタの形式番号はGNT-0000だが、実は前機種ダブルオーガンダムのGN-0000と1文字しか変わってない。その違いの「T」はTwinドライヴを意味するらしい。ダブルオーガンダムだってツインドライヴだったのに…とは思うのだが、ダブルオーは単体ではツインドライヴが安定せず、完全フル稼働にはオーライザーを必要としたので、「今度こそ真のツインドライヴ機だ!」という意味を込めて、わざわざ「T」を強調しているのかな?なんて想像する。

ダブルオーガンダムの起動時には、組合わせるGNドライヴの相性問題に苦労した。結局、0ガンダムとエクシアのGNドライヴの組み合わせで起動に成功はしたものの、ツインドライヴ本来のポテンシャルを発揮出来ず、さらにトランザム使用時にオーバーロードを起こしてしまうというトラブルにも見舞われた。これは設計者のイアンとしても、技術者としてのプライドが傷つく不満の残る結果だった事だろう。結果的には支援機オーライザーにツインドライヴの制御機能を持たせて完全稼動に成功するが、これは急場凌ぎの対応だった事は否めない。

幸か不幸か、先のリボンズ・アルマークとの対決でダブルオーに使われていたGNドライヴは二基とも失われてしまった。新たにツインドライヴ機を建造するのなら、GNドライヴも新たに用意しなければ足りない事態となった。そこで、今回こそはガンダム単独でのツインドライヴ完全稼動を目指すべく、GNドライヴ自体をツインドライヴ前提で製造しなおした。製造工程の時点から、ツインドライヴ専用に調整した二基の新型ドライヴは、相性問題を気にすることなく最初から完全な同調を果たした。

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クアンタのコンセプトは、先にも書いたように「戦いをやめさせる機体」であり、従来のような圧倒的戦闘能力による武力介入を想定したものではない。その為、武装もゼロではないが、かなり簡素化されている印象がある。まず、エクシアにもダブルオーにも標準装備されていた、GNビームサーベルが廃止されている。かつてセブンソードの異名を持っていたエクシアのように、全身に刺々しく剣を装備することも基本的にはない。

メイン武装はGNソードの5代目、GNソードVのみを1本だけ手に持つ形だ。また、左肩のみにGNドライヴを内蔵するGNシールドが1つあり、そのシールドにGNソードビット6基(A、B、Cの3種をそれぞれ2基ずつ)装備している。シールドの上部にもGNビームガンを一門内蔵していて、劇中でもELSの迎撃などに使用していたが、基本的な武装は以上であり、見た目にもかなりシンプルな構成になっている。

では、武装が簡素化して戦闘能力は低下したのか?…というと、そうでもないようだが。

GNソードVの刀身は従来よりも細身になって見た目の迫力はなくなったが、刀身全体がソードⅢと同じグリーンのクリスタル素材となって、切れ味自体は遜色ないようだ。またライフルモードも実装されていて、銃として射撃を行うことも出来る。また、今回初採用のGNソードビットは攻防共に有機的に機能する。各ビットが個々にファングのように飛び交って敵に斬撃を加えることも出来るし、ソードビットを連結させて手持ちの剣にすることも可能。さらに、GNソードVの刀身部にソードビットが合体することで、GNソードVを大型のバスターソードにすることも出来るし、その先端から極太ビームを撃つバスターライフルとして威力を発揮する事も出来る。

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また、ソードビットを環状に配置する事で、ビット間にGNフィールドを展開も出来る。ビットの間隔を任意に変更することで、GNフィールドのサイズも自由に設定できる為、非常に強力な防御の盾ともなる。ツインドライヴによる膨大な粒子生産量に加え、この縦横無尽に高速に飛び回るGNソードビットにより、クアンタは攻撃力も防御力も従来よりも増していると言っても過言じゃないだろう。

またクアンタはトランザムバースト(クアンタムシステム)以外にも、もうひとつ“ある機能”を標準装備化している。それはダブルオーライザーでも意図せずに起きていた量子化と呼ばれる機能(現象)だ。機体を瞬間的に量子レベルに分解し、別の場所で再構成(復元)することでテレポーテーションを実現する機能。ダブルオーライザーでは、搭乗者である刹那でさえもそれを意図的に発動出来ていたわけではなく、刹那の脳量子波に勝手に反応して機体のシステムが自動発動していたものだ。

それを恐らくイアン達CB技術陣が解析・解明したのだろう。ダブルオークアンタでは、この量子化を応用した量子テレポーテーション機能を、意図的に使用出来るシステムとして実装していた。クアンタは、GNドライヴのブラックボックスに極秘で仕込まれていた各種隠密システムを、全て「ちゃんと使える機能」として搭載した機体だと言えるだろう。最終的にはヴェーダの小型ターミナルユニットも搭載したクアンタは、まさにイオリア計画の全てを盛り込んだような機体だと言える気がする。