ミーハーでごめんねごめんねー | シネマド館

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世界の映画を見ていると世界を旅しているように感じる・・・というブログではなく単なる「映画」と「おでかけ・旅行」をメインにしたブログです。とは言いながらも結構他のことも書いてます・・。

生誕100周年とかいうじゃなぁい?!

ちょっとミーハーな気分で読んでみた。



『きりぎりす』太宰治



短編集で14の作品が入っている。

100周年だしなぁ・・・と思い、太宰の作品を図書館で探したらこれだけがあったので手に取ってみたら短編集だったので読書が得意ではない私にとっては好都合!と思い借りた。


太宰中期の安定期とも言える頃の作品らしいのだが、なんせ太宰なんて読むの初めてだし、どう不安定で、安定しているのかよくわかんない。

でも、高校の頃、現国で勉強した覚えがあるなぁ。



以下作品紹介。


『燈篭』・・・好きな男の為に海パン万引きする女の話


『姥捨』・・・心中失敗する話


『畜犬談』・・・犬嫌いの人の話


『おしゃれ童子』・・・おしゃれ野郎の話


『皮膚と心』・・・ちょっとした皮膚炎が女心を狂わす話


『鴎』・・・出兵しなかった作家のジレンマが書かれた話


『善蔵を思う』・・・錦衣帰郷を願う作家としての自分を自虐する話


『きりぎりす』・・・理想の夫が理想でなくなったために離婚した女の話


『佐渡』・・・佐渡に旅行に来たことを後悔しまくる話


『千代女』・・・子供の頃天才だともてはやされた女の子が迎えた思春期の話


『風の便り』・・・2人の作家の手紙のやりとり。どちらかが太宰ともとれるらしいが・・・ということはどちらも太宰?


『水仙』・・・天才と周りにもてはやされたばかりに自分は天才と信じて家出し、落ちるところまで落ちたマダムを見つめた話


『日の出前』・・・不良少年の長男によって振り回される家族の話。不良少年のアダナがかわいい・・




・・・と、簡単に書いたけれど、ちょっと違うところもあるかもしんない。

私の印象、ということで。



他の作品を読んだことないので何ともいえないが、この短編集に限って言えば、太宰って結構ユーモアのある人なんだなぁ・・・と思った。


しかも自虐ネタが得意と見た!!!


そして、女性の告白文体が得意らしいのだが、本当に女性が書いているのか、と思うくらいに女性の心理が細やかに描かれている。



どの作品もいろんなおもしろさがあって、好きなんだけど、私が特に好きだったのは『燈篭』『皮膚と心』『佐渡』


『燈篭』は好きな男のために海パンを盗む女の話なのだが、でも、結構明るく前向きなところがいじらしいんだよねぇ。発作的に万引きに走ってしまうほど男性のことが好きだったんだねぇ・・・。


でも、そのことで男性にはけちょんけちょんに言われてしまうのだが。


それでも最後は小さい幸せをかみしめながら前向きに終わっているところが健気・・・



『皮膚と心』はここに出てくる夫婦がいいのよ。とっても静かな新婚夫婦なんだけど、お互いがお互いをとても大切に思っている・・・というのがしみじみつたわってくる。こういう夫婦いいなーって思える。


これも「燈篭」同様女性の告白調で書かれている。


あと、この「皮膚と・・」に出てくる女性が「ぶつぶつがキライ!」ということでいろんな例えを出すのだが、どれもこれも確かに「うひぃ・・ブツブツやわぁ・・」と背中がモズモズしてくる。

そういう例えをうまく出せるところも太宰さんってええ感覚してはるなぁーと思う。


『佐渡』・・・紀行文。

もう、これは爆笑やわ。ほんまに笑った。佐渡と思ってた島が実は違っていて、通り過ぎ、次にでっかい大陸が見えてくる。


え?うそ?!あれは満州か?!と思う作者。

「いやいやそんなはずはない」と必死で打ち消す作者。



そうして『私の混乱はクライマックスに達した』 (本文より)



・・・うむ。そうなるわな。

どこ連れていかれんねーん!てなるわな。


朝鮮?能登半島??!!などとめちゃくちゃに考えていたところ実はそのでっかい大陸が佐渡だったとわかる。


その後『じゃぁ、さっきの島はなんだったんだ?』という疑問が当然わく。その疑問を解決するべくして現れた一人の少女と父親。この疑問が解決されるところも私はすごく笑った。自分が作者でも同じことするわ、と思ったよ。


終始「なんで佐渡にきたんだ」と後悔&楽しくないことばかり書いている紀行文なんだけど、それでも読んでて楽しかったな。

私も船に乗って佐渡に行きたい!と思ったもの。


同じように笑える作品は『畜犬談』。こちらも笑えたけれど、最後はやっぱり芸術家としてのキレイなまとめで終わってる。


『水仙』『日の出前』はちょっとした小説風なのだが読み応えがあり、おもしろい!!





あと、印象的だったのが、太宰治の作品全てに、かどうか知らないのだが、ツツーっと読んでいると途中『ハッ!』とさせられる一文がはさみこまれていたりするのだ。


映画で言うと途中とっても印象的な画が一瞬映し出される・・・といった感じかなぁ。

最近見た映画だと西川監督の「ディア・ドクター」でそういう映像が何箇所かあったな。



結構観察力が鋭く、自虐的で、マイナス志向で・・・・でもユーモアもあり、文章も美しく読んでいて飽きない・・・


私の今の太宰治に対する印象はこんな感じ。


他の小説も読んでみたくなったわぁ。



そういやぁ、先日○HKで押切○えさんが太宰治の『人間失格』を紹介していたな。

意外と本読んでるだ・・・とそちらにびっくりした。