BLUES DELUXE ジョー・ボナマッサ | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-March02JoeBonamassaDeluxe


◎BLUES DELUXE

▼ブルース・デラックス

☆Joe Bonamassa

★ジョー・ボナマッサ

released in 2003

CD-0369 2013/3/1


 ジョー・ボナマッサ3枚目のスタジオアルバム。


 ジョー・ボナマッサは昨秋に出たアルバムを1枚取り上げ、少しずつ買って聴いてゆくことにしたこれがその第1弾。

 昨秋の、と書くと、そろそろ次の次の季節を迎える今となってはもうだいぶ前のことのように感じられるけれど、僕は、熱しやすいけれど燃え上がりるまではいかない代わりに冷めにくい、という性質なので、自分の中ではジョー・ボナマッサ熱は続いています。

 まあ、すぐにすべてのオリジナルアルバムのCDを買い集めようとする場合もあるけれど、最近は年のせいか、ゆっくりでもいいや、と思えるようになりました(笑)。


 ジョー・ボナマッサはライヴ盤を買って記事にしましたが、スタジオアルバムは初めて。  


 これが、まさにデラックス、そしてロック人間のブルーズ入門にはこれ以上ないくらいにふさわしい内容となっています。


 3曲がオリジナル。

 他はすべて、ブルーズを聴かない人でも名前くらいは知っている有名なブルーズメンの曲ばかりを取り上げている、そこがいい。

 まあ、ブルーズ中上級者の方にはそこがくすぐったいのかもしれないですが・・・(笑)・・・


 ジョー・ボナマッサはやはりスピード感、タイトさなどはやはり白人ロックのものといえるでしょう。

 間を味わうというよりはスピードに攻められ続ける感覚が爽快感をもたらす。

 でも、ロックのようにただ突き進むだけで間がないというのではなく、そうですね、微妙な感覚だけど、少なくとも間の大切さを分かった上で自分の持ち味であるスピード感と両立させようという姿勢は伝わってきます。

 微妙なんです、言葉で表すのが難しいけれど、引っ張るだけでも押すだけでもないというか、その辺のミュージシャンの個性が彼の場合はブルーズの人なのだと思いました。


 もちろん、ヴォーカルはやはり越えられない壁があると気づかされるけれど、ブルーズを聴きまくって愛している人の感覚だなとは思います。



 1曲目You Upset Me Baby

 B.B.キングのカヴァー。

 B.B.独特のスウィングする感覚のブルーズ。

 それにしてもヴォーカルが熱い、んだけど、B.B.のような余裕はなくて、100%熱唱している感じが、或いはダメな人はだめかもしれない、ブルーズが好きな人でも、そうじゃなくても。

 ギターも1曲目から攻めているけれど、


 2曲目Burning Hell

 ジョン・リー・フッカーのカヴァー。

 「んタんタんタんタジャージャン」という裏を強調したギターのリズム、激しいドラムスとともに展開するギターなど、これは可能な限りロック的にブルーズをやってみたという感じを受けます。

 だから1960年代風でもありますね、強烈に。


 3曲目Blues Deluxe

 ジェフ・ベック・グループのカヴァー。

 あの曲ですね、僕も大好きで既に記事を上げたTRUTHからの曲。

 この曲があること、この曲をアルバムのタイトルにまでしていることから、やはりジョー・ボナマッサの音楽的思考(思い)や立ち位置が分かりますね。

 大御所のカヴァーを集めたこのアルバムはまさにデラックス。

 よくつけたものだと思う、どちらが先だったのかな、アルバムの制作か、それともこの曲を歌った上で大御所のブルーズを歌うというコンセプトから発したのか。
 それにしてもここでのジョーのヴォーカルは大仰ともいえるくらいに力が入り熱を帯びていて、まるで森進一のモノマネのように目を細めて顔を大きく上下に揺すりながら歌う姿を想像してしまいました(笑)。

 またこれを聴いて、ロッドの歌い方はスマートで良くも悪くもブルーズとは違うものであることがあらためて分かりました。

 しかし、そんなことはどうでもいい。

 とにかくこのギターソロはすごい、すごい、すごい!

 最近まったく新たに聴いた曲のギターソロとしては断然いちばんすごい! 

 スピードで攻めるギターの本領発揮、速くても旋律が感じられるし、それでいて要所で泣き(鳴き)入って胸が締め付けられる思いもあり、とにかくただただ圧倒されます。

 しかも、ソロに入って最初はきらきらした装飾音のようなおとなしいプレイが12小節続いて、気持ちが緩んだところで突然ギターが大泣きを初めて、音圧に押される。

 ううん、ギターを弾く人間の端くれの端っこの人間として、これに刺激を受けないはずがない。

 僕もロックを聴き始めてもう四半世紀以上になるけれど、すごいと思うギターソロはと質問されると、今後はこの曲を真っ先に挙げるようになるに違いない、それくらい衝撃を受けた1曲。

 余談ですが、日本では「デラックス」と名のつくタレントが人気がありますが、彼の(彼女の?)名前は、スペシャルともグレイトとも違う、デラックスという言葉が持つニュアンスが伝わってきて上手いと思います。

 4曲目Man Of Many Words

 バディ・ガイのカヴァー。

 すいません!

 調べると、僕が既に持っているジュニア・ウェルズとの名盤で歌われ、さらにバディの1994年のアルバムに入っている曲でしたが、聴き込み不足で覚えていない、思い出せませんでした。

 つくづく曲の覚えが・・・2回も聴いたというのに・・・

 リズムがボ・ディドリー崩しでモダンな響き。

 ジョーも1990年代のバディ・ガイの復活はうれしかったのでしょうね。


 5曲目Woke Up Dreaming

 ジョー・ボナマッサのオリジナル。

 これがですねえ、という曲。

 アコースティックギターの弾き語りだけど、もはや僕の能力では、ピッキングも左手の運指もどうやっているのかまったく想像すらつかないくらいに超高速ピッキング。

 ギター弾きの端くれの端っこ人間としては、ここまでくるともはやこんな風に弾けたらいいな、とすら思えない、神業と言ってしまいたい。

 そういうギタリストも、僕は久しく出会っていなかった。


 6曲目I Don't Live Anywhere

 続いてオリジナル。

 バラードといっていいこの曲、速いだけがジョーの魅力ではない。

 ギターソロももちろん音色、旋律、鳴き中心。

 歌メロもいいし、ソウル系の歌手がソウルバラードとして歌っても映えそうで、作曲家としての能力も感じられます。。

 ところで、ブルーズのバラードは、特定の呼び名がないのかな、今ふと気づいた。

 

 7曲目Wild About You Baby

 エルモア・ジェイムスのカヴァー。

 これはね、一発でEJの曲と分かりましたよ、冒頭から唸りを上げるあのスライドギターで。

 EJの曲はフリートウッド・マックでも一発で分かったし、どれほど個性的なギターなのだろうと。

 あまりに個性的過ぎて、他の人がやると単なる真似になってしまうのでしょうね。

 ジョーのスライドギターは鋭さを増した感じで、それいしても気持ちがいい曲。

 

 8曲目Long Distance Blues

 T・ボーン・ウォーカーのカヴァー。

 これが一般的なイメージでいえばいちばんブルーズらしいブルーズだと思う。

 ジョーも、スロウテンポのこの曲では少しおとなしく歌っています。

 

 9曲目Pack It Up

 フレディ・キングのカヴァー。

 この中ではロック的な爆発力を最も強く持った曲。

 タイトルを歌う部分はほとんど泣きそうな声。

 でも、フレディ・キングは僕が最も声が好きなブルーズマンだから、声で比べるとかなり負けてしまう・・・なんて言いっこなし。

 ギターはフレディ・キングの饒舌さを意識したのか、少し押さえた旋律中心の響き。


 10曲目Left Overs 

 アルバート・コリンズのカヴァー。

 アルバート・コリンズは最近CDを1枚買いましたが、気持ちが浮ついてホップするような曲が得意なのかなと思っていて、これはその通りの感じ。

 アップテンポのインストゥロメンタル曲で、切れとスピード感そしてタイトな演奏といった彼の魅力がよく分かります。

 というか、それだけで作り上げてしまった一級品。

 

 11曲目Walking Blues

 ロバート・ジョンソンのカヴァー。

 まったくもって、ここまでサービス精神旺盛でいいのか、というくらいに、ほんとうに名の通ったブルーズメンばかりが並んでいます。

 これまた60年代ブルーズロック大爆発の頃を思い出させる、低音リフ中心のロック的なアプローチ。

 ロバート・ジョンソンの場合は古いし、ギターが独特だから、逆に曲で自分なりにいろいろやるという考えにもなりやすいのかもしれない。

 そうそう、これも含めハーモニカ入っていますが、あくまでもギターを引き立てるというくらいの感じです。


 12曲目Mumbling World

 最後はオリジナル。

 アコースティックギターで(多分)ボトルネックを使った、(多分)デルタブルーズっぽい曲。

 ずっとエレクトリックギターで攻めてきて、最後にアコースティックな響きの曲を置くというのは、余韻が大きくなるし、ブルーズへの思いも強く感じます。



 このアルバムは、まだ1枚しか聴いていないけれど、スピード感があるブルーズという彼の音楽を確立したものではないかと思います。


 そしてブックレットにはこんな言葉が(引用者訳)。

 「このアルバムは、友人でもあるトム・ダウドの思い出に捧げる」

 トム・ダウドは2002年に亡くなっていますが、大物プロデューサーとして、何か説明が要るでしょうか。

 「いとしのレイラをミックスした男」というドキュメンタリーのDVDが出ていて、それを観たいと思いつつまだ買っていません。


 

 僕は、いつもいいますが、家では25枚連装CDプレイヤーで聴いていて、このCDは昨年末に買ってからずっとCDプレイヤーに入っています。

 だいたいその日に何枚聴けるか時間を見てCDをセットし、もしくは入っているものをかけますが、このアルバムは、順番が回って来ると、最初は聴くつもりがなかったとしてもかけずにはいられない衝動に駆られ、止めることなくかけています。


 ただ、これ、ディスクの音が大きくて、続けて聴くと音が大きすぎて困ることが(笑)。

 音圧がすごい上にこれかい、と思うけど、それも狙いなのでしょうね。




 ともあれ、かけずにはいられないというのは、ジョー・ボナマッサの音楽が僕の音楽観のほぼ中心にあるということなのでしょう。

 基本ブルージーで(これはジーではなくブルーズだけど)、ギター中心、そのギターがハードな音。


 さて、そろそろ次のアルバムを買うとするか。