3者3様のワイン会 | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

東京からフランス語研究者のワインの師匠が、この日学会で来阪した。
関西在住の同期生たちに声をかけたが、年度末で忙しく、やって来たのは毎度の
酒のインポーターの社長だけであった。
しかし、飲み手としてわれわれ3人は少数精鋭である(自画自賛)。

われわれは関西の名門高校(自画自賛)出身で、卒業生の半数以上が京大・阪大・神大に
進学したというのに、卒後30年すると、関西在住者より関東にいる奴の方が
圧倒的に多いのはどうしたことか。
こんなところにも、関東に阪神ファンが多い一因がある。

今回は、師匠が東京からフランス語仲間を連れてくる、とのことだったが、
やって来たのは20代半ばの、知的でかわいい女性であった。
彼女の参加で、オヤジ3人でぶつくさ言いながら飲むのとはずいぶん雰囲気が
違ったのは間違いない。
彼女は、早稲田大学仏文科を首席で卒業した才媛で、ワインにはまだそれほど
詳しくはなさそうだが、好奇心旺盛で、飲んべえオヤジ3人にビシバシと質問を投げかけ、
グラスを傾けて感心しきりであった。


フランソワーズ・ベデル ブリュット NV
購入日    2007年1月
開栓日    2007年3月29日
購入先    かわばた
インポーター 山信商事
購入価格   5480円

まずはシャンパーニュから。自分の最近の好みに従って、このベデルを開栓した。
1月に6本購入したもので、すでに2月に1本開栓している。
印象はその際とまったく同じで、相変わらず泡は柔らかく弱めである。

つい比較してしまうが、同じ造り手のアントル・シエル・エ・テールはもっと華やかで
香り高かったような気がする。
今回のブリュットは、ひょっとするとデゴルジュマンからかなり時間が経っていて、
枯れ始めているのかも知れないな、と思ってしまった。
しかし、この素直でストレートで香り高い酸味は、よくできたRMにしかない。
これ以上の甘さは、少なくとも今のわたしには不要だ。


シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド 1994
開栓日    2007年3月29日
購入日    2001年ごろ
購入先    ピーロート
インポーター ピーロート
購入価格   8500円くらい

ちょうど1年ほど前に、免疫学者の教授のワイン会で1998を飲んだのだが、
手持ちのこのワインは、それよりさらに4年も古い。
3本購入したうちの最後の1本で、これまでの2本はかなり若いと思ったのだが、
今回もやっぱり若かった。

こんなに強いボルドーだから、そんなにボトル差があるとも思えないのだが、
このワイン、自宅に来てから5年以上も経つというのにちっとも熟成する素振りを見せず、
未だに若いままである。
相当長熟なワインなのだろう。
わたしが飲み頃だと思えるのは、まだ10年くらい先かも知れない。

香りだけは最初から非常に魅力的で、深い紫色の液体から、スミレ、黒い果実、鉛筆など、
堅めの香りをふんだんに発する。
開栓してからグラスをブンブン振り回しているにもかかわらず、かなり経ってもほとんど
ほぐれず、どっしりと安定している。

2時間ほどすると、意外にもスパイス香が漂ってきて、ゆるやかな変貌ぶりを見せるが、
もうこれ以上待ってもどう変わるものでもなさそうだ。
予想通り味わいはタンニンが豊富で、ずっと固く閉じ続けている。
これはまるで鎧をまとった美女だ。

言うまでもなくポイヤック2級の錚々たるワインで、現在のネット価格は
1万5千円~2万5千円というたいへん高価なものである。
しかし、こんなに硬くて面白くないワインは、到底1人で飲めるわけはなく、
もし自宅で開栓していたら、半分は捨てていたかも知れない。

非常に優れたワインであることは百も承知だが、もはやわたしはこんなワインを
受け付けなくなってしまったようだ、
たいへん優れたブドウから、手塩にかけて造られたワインであることは理解できる。
しかし、3000円のACブルゴーニュが恋しい。


ドメーヌ・ドルーアン・ラローズ シャペル・シャンベルタン 2001
開栓日    2007年3月29日
購入日    2005年1月
購入先    ヴェリタス
インポーター ヴェリタス
購入価格   5980円

同じワインで、インポーターの八田ーかわばた酒店からの98、00では
ブショネが超多発(5本以上)して閉口して以来、この造り手に対しては
猜疑心を持って接している。
(もちろん誰にも責がない不良ワインである可能性もある)

しかしここにきて、昨年夏に開けたシャンベルタン・クロ・ド・ベズ2001といい、年末の
村名・1級ジュブレの2002といい、きちんとしたワインに当たることの方が多くなっている。
安い価格で手に入る稀少なグラン・クルで、当たれば間違いなく美味しい。

ただ、この造り手のワインは、これだという特徴的な個性には乏しく、ブルゴーニュオタクを
唸らせるカリスマ性に欠けている。
不思議なことに、この造り手はブルゴーニュ愛好家の探求心を刺激しない。
だから、ルーミエのように取り合いになることがない。
万人が喜ぶ、大衆好みの造りであると受け取られているから、価格暴騰を免れている、
という面があると思う。

わたし個人としては、凡庸でいいから品質を安定させた上で、まともな価格で
出してもらう方が有難い。
やはりわたしは、ブルゴーニュ好きではあってもまだまだ理性を失っていない?

ところで今回のワイン、キュッと締まったピノ・ノワールの香りがする。
線が細くて、特級としてはいささか物足りない体躯だが、育ちのよいお嬢様、といった感じ。
それでも2時間ほどで香りがほどけて複雑なマトリックスを感じさせ、ちょっとスパイス香も
漂ってきた。
このワインもやっぱり相当若かったが、とても女性的なジュブレ・シャンベルタンであった。

いつも面白い業界の裏話を聞かせてくれるインポーターの社長は、
「こいつら(わたしと師匠)みたいに変わった連中を相手にしていると、商売が成り立たない」
と毎度ながらつぶやいていた。

そして、才色兼備の若いゲストには、もっとメルロー主体のワインを勧めた方が
受けたかも知れないな、と思った。

追記:メルロー主体のワインとは?
代表的なものはポムロールなど右岸のものだが、最近はやりのモン・ペラ(右岸ではない)
など、万人受けする代表例である。
しかしわたしはモン・ペラなど品がなさすぎて自分では飲む気にならず、
先日プリムールでヴィルジニー・ド・ヴァランドロー2005を数本購入した。