ウルトラなウチトラ その1 | 脚本家/小説家・太田愛のブログ


内トラと書いて、ウチトラ。つまり内輪のエキストラのこと。
撮影の際、エキストラ的な脇役としてスタッフに出演してもらうのを、「内トラ」と現場では呼んでいる。

今年のお盆は原田昌樹監督の新盆になる。
いろんなことを思い出す。

亡くなった原田監督は、作品のいろいろなところに内トラを配して撮影されるのが大好きだった。私が担当した回でもあちこちに楽しい内トラの方の出演場面がある。

まず、ウルトラQ dark fantasy の『影の侵略者』、『光る舟』の2本。ここではスクリプターのRちゃんがさりげなく登場している。

『影の侵略者』では、袴田吉彦さんと斉藤麻衣さんが午後の街を歩いている場面で、二人がアクセサリーを買う路上のアクセサリー屋がRちゃん。『光る舟』では、山崎裕太さんが病院で目を覚ました時、医者の傍に現れる看護婦がやはりRちゃんである。まったく別人に見えるのがすごい。

『光る舟』には、もう一人、大物の内トラの方が出演して下さっている。寺島進さん扮する岡田が就職面接に失敗し、ビルから叩き出される場面で、叩き出している警備員こそ、殺陣・アクションの第一人者・二家本辰巳さんである。さすがに貫禄で、寺島さんを投げ飛ばす。

いろいろな方が内トラ出演してくださった中でも、かなりの変り種が岡秀樹監督だ。現在、レスキューフォースシリーズなどで活躍されている岡監督が、かつて助監督だった頃で、ウルトラマンコスモス『時の娘』制作中のことだ。シナリオに登場するキャストの数が多すぎてしまい、困っていたところ、原田監督か謎の微笑を浮かべて近づいていらした。曰く、

「後編に登場する防衛軍戦車部隊の部隊長なんだけどね、『部隊長』ではなく、『部隊長の口元』とシナリオに書いておいて下さい」

え…? 口元…? 口元専門の俳優さん……? 手タレみたいな……?

本編を見てびっくり仰天。本当に口元だけしか映っていなかった。しかも、「撃てーッ! 撃てーッ!」と渾身の力で絶叫されている「部隊長の口元」こそ、岡監督だった。「口元」ひとつで戦車部隊のリアリティを支える迫力に驚嘆し、しみじみと感謝した次第。

原田監督のいたずらっぽい内トラ起用は、他にもたくさんある。そんなところにも、スタッフを大切に思い、愛するスタッフに囲まれて仕事をするのが好きだった原田監督の人柄が偲ばれる。

原田監督の内トラ・エピソード、ウルトラマンガイアの『遠い町・ウクバール』、ダイナの『少年宇宙人』については、またそのうちに。