私は、この名前を知らなかった。
おとといの朝日新聞にそのインタビュー記事が掲載された。


今回のバブルはおそらく世界史上、最悪の借金バブルだった。今後10年は第2次世界大戦以来、最悪の景気後退になると思う(ジム・ロジャーズ)

金融危機 インタビュー 2008年10月17日朝日新聞
米著名投資家
ジム・ロジャーズさん
 米国アラバマ州出身。ジョージ・ソロス氏と共に「クォンタム・ファンド」を創設し、運営後、独立。21世紀はアジアの時代だとして、07年にシンガポールに移住した。

ドル失墜始まっている

 --ソロス氏と創設したファンドが10年で運用利回りが4千%を超えたことは有名です。原油など商品市場の高騰を早くから指摘していた一方で、ドルの暴落をずいぶん前から予想していますね。
 「私は米ドルも、投資銀行も売り続けている。バーナンキ(米連邦準備制度理事会議長)は4年間、住宅市場には問題がないと言い続けてきたが大間違いだった。彼は経済も市場も通貨も何も分かっていないと思う。却っているのはお金を刷り続けることだけだ」
 --ドルの基軸通貨体制は崩れるのでしょうか。
 「米ドルは今、すでにその地位を失いつつあり、今後数年でドルの価値は大きく失われると思う。10年前は世界の外貨準備の7割はドルだったと思うが、いまは63%だ。中東湾岸の米国の友好国でさえ、ドルでなく別の通貨での決済を議論し始めている。こいうことは最初はゆっくり起こる。それが次第に速度を増し、最後にはドルからの逃避が起こる」
 --米国の投資銀行や、政府系住宅金融「ファニーメイ」や「フレディーマック」が大きな問題を抱えている
と、数年前から指摘していましたね。
 「市場は狂乱状態にあり、あまりに過熱していた。仕事を始めたばかりの29歳の若者が、高級車『マセラッティ』を乗り回し、年に1500万㌦(約15億円)も稼ぎ、『僕は頭がいいから当然だ』という顔をしていた。正気の沙汰さたじゃない。狂ったような巨大なバブルが発生していた」
 「無職の人が、頭金なしで、四つも五つも家を買えるなんてことは歴史上なかった。あり得ないことが起こっていた。金融や歴史や市場を少しでも学んだものなら、すぐに分かる」
 --危機対応として大幅に金融緩和を続けると、どんな影響が考えられますか。
 「さらなるインフレ、ドルの価値下落、高い金利だ。ばんそうこうを重ねれば重ねるほど、経済は長期低迷する。欧州もお金を刷り続け、日本は超低金利、これはすでにひどい問題を引き起こしている。ガソリン、教育費、娯楽費だって過去2、3年でみな値段が上がっている」
 「今回のバブルはおそらく世界史上、最悪の借金バブルだった。今後10年は第2次世界大戦以来、最悪の景気後退になると思う」
 --破綻の連鎖を避けるために米政府が実施するという、金融機関の公的救済についても否定的ですね。
 「救済は間違いだ。わずか数千人の金融村の人たちを救うために、3億人のアメリカ人が害を被る。世界全体にとっても良くない。だめな会社は破綻させるべきだ。ゾンビのような会社を人工的に生かし続はれば、本来はもっと強くなれる企業が不公正な競争を続けざるを得なくなる」
 --米国は財政赤字が急拡大しそうです。
 「米国がこれまでの歴史で積み上げた政府債務は半年前はざっと5兆㌦(約500兆円)。それが、ファニーとフレディーを抱え込んだことで、たった1週間で6兆㌦増え、2倍になってしまった。2社の負債だけで6兆ドルあるからだ。一部は戻ると強調する人たちもいるが、私には分からない。さらに、2社には薄外の金融派生商品が数兆ドルあり、負債はさらに膨らむだろう。なのに、かなり少額で済むかのようにしか説明しないバーナンキやポールソン(米財務長官)はうそをついているというよりも、愚かなのではないかと思う」出張先で日課の運動を終えたばかりの同氏にインタビュー。聞き手 ドイツ・ルートビッヒスハーフェン=尾形聡彦)