絆 ( 38 ) | 君がために奏でる詩

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絆~三十八話~





悲しみに包まれた部屋で、未来さんは一人微笑んで。

幸せそうに、微笑んで・・・。


号泣するさくらさんと、悲痛な顔をしている龍羽くん。

僕はただ、静かに涙を流していた。


・・・信じられなかった。

もう、未来さんがこの世にいないことが。

・・・信じたくなかった。

まだ、心のどこかで・・・生きているって思いたかったから・・・。


それに終止符を打ったのは、未来さんのお母さんだった。


「未来ったら・・・こんなに幸せそうな顔して。

大好きな人たちに、最期に伝えられて・・・満足だったんでしょうね」


未来さんの、段々と冷たくなっていく手を握って

涙を流すお母さん。


「・・・ありがとう、未来。

私たちの娘に生まれてきてくれて・・・。

もう、泣かないから・・・安心して逝きなさい。

双子のことは、しっかり護るから」


それは、誰よりも強い母親の言葉で。

誰よりも未来さんのことを想う、母親の姿で。


未来さんのお父さんは、ベッドのしたから紙袋を取り出した。

ははっと笑って、不思議に見ていた僕たちに言った。


「未来がどこに何を隠すかくらい・・・分かってるよ。

・・・皆への手紙だ」


僕たちが驚いている間にも、お父さんは一人ひとりに手渡していく。

受け取ったさくらさんは涙を拭いて。

一人部屋を出て行った。


龍羽くんも、お父さんとお母さんもそれぞれ部屋を出て行って。

病室には、僕と未来さんだけが残されたー。



さくらside


うちは屋上に向かった。

風に当たって頭冷やさな、自分がどうにかなりそうで、しゃあないねん。

外の風は冷たくて。


うちはそこにあったベンチに座って、震える手で手紙を開いた。


『さくらちゃんへ。


この手紙を読んでるってことは、もうあたしはいないってことだよね?

いつになるか分からない。

でも、伝えたいこと、全部ここに書いておくね。


さくらちゃんはあたしにとって、最高の親友だったよ。

きっと、さくらちゃん以上の友達はいない。


誰よりもあたしと陵のこと応援してくれた。

誰よりも、あたしたちの幸せを望んでくれた。

すっごい嬉しかったし、正直申し訳ない気持ちもあった。


あたしがもうちょっと恋愛に対してウジウジしなかったら、さくらちゃんも

自分の恋を優先できたのにっていつも思ってたの。

さくらちゃん可愛いし、絶対にモテると思うんだもん。


それに、桜咲家の長女として人の役に立とうと頑張ってたの、

いつも尊敬してたんだよ?

でも、治癒の力を引き継いだことで、あんまり遊べなかったのかなとも思ってた。

そこは、あたしの間違いだったってことは、麟夜との戦いのときに気づいたの。


「治癒の力を誇りに思ってる」

合宿の時、そう言ってくれてすごい嬉しかった。

前世であたしが持っていた力のこと、そんな風に思っててくれたんだって。


それなのに、急に病気になって心配ばっかかけてごめんね。

毎日のように来てくれたよね。

だからあたし、一人でも寂しくなかった。

だって、大好きな親友が来てくれるって毎日楽しみだったんだから!


あたしが死んじゃっても、泣かないで。

笑ってて?

さくらちゃんには、笑顔が一番似合うから。

見てるこっちまで、幸せになれるから。


最後にお願い、聞いてもらってもいい?

陵のこと、ちょっとは気にかけてやって?

傷ついてボロボロになった時、さくらちゃんが支えてあげて。

陵もきっと、全力でさくらちゃんたちを守ってくれるから。


あと、絶対に双子が産まれてくると思うけど。

女の子だったら、さくらちゃんが舞を教えてあげてください。

あたしの娘なら、力を引き継いでると思うし、桜咲家の力になってくれると思うから。


でも・・・自分の息子や、ましてや龍に無理矢理襲わせたりしたら絶対に許さないからね!

悲しませたりしないでね?

これが、あたしの最期のお願いです。


またいつか、きっと会えるから。

さよならは言わないね。


ありがとう。

本当にありがとう。

さくらちゃんが一番の友達で、親友だよ。


じゃあ・・・・

またね。

              未来                       』




・・・涙が止まらんやん。

ごめんなぁ、未来。

笑ってって言いよるのに、涙しか出てこん。


せやけど、安心しい。

絶対に陵くんと双子、見捨てたりせぇへんから。

美華、悲しませたりせんから。


やから・・・

今だけは泣かせてな?


明日から、ちゃんと前向いて行くから・・・。